(更新:)
ORICON NEWS
鉄板の「美女×食べる」系CM、“ギリギリセーフ”を狙う表現方法
「美女×食べる」CMは女優・アイドルの登竜門、“ギャップ萌え”や“艶美”なインパクトも
男性が豪快に大口を開けて食べるのは当たり前だが、女性となると話は違う。まして美女ともなれば“ギャップ萌え”で元気が出るイメージもあるし、場合によっては艶美にさえ感じるだろう。だからこそ、まだ売り出し中の知名度の低いタレントでも、「あのCMの美女は誰?」の決まり文句で注目もされるし、商品自体の訴求力も高まるのだ。
女性が大口で食事する“豪快さ”と“下品”は表裏一体
とは言え、「一番搾り」のCMで満島ひかりがご飯に肉を巻いて食べるシーンなどは、一見下品ともとれる男っぽい食べ方なのだが、あまり不快感もなく、SNSでも批判の声はほぼない。むしろ、CM総研の銘柄別CM好感度ランキング(2017年9月)では、6位にランクインするという高評価を受けている。
つまり、CMのストーリーや食べ方、そしゃく音やBGMなど、微妙な演出の差異によっては、“心地よい豪快さ”と“不快な下品さ”がはっきりと分かれるということなのかもしれない。
クレームや規制をクリアしながらクリエイターたちはギリギリの演出を模索
また、近年のビールCMについては、2016年7月より広告規制を強化。「テレビ広告での喉元を通る『ゴクゴク』等の効果音は使用しない」、「お酒を飲むシーンについて喉元アップの描写はしない」などの規制を設けられ、やりすぎとの批判も受けている。だが一方で、近年はおいしそうに“酒の肴”を食するシーンも挿入されるなど、各社がシチュエーションの工夫を競うようにもなっており、それだけCMの表現力が豊かになって影響力を増している結果とも言えなくもない。
テレビ業界では制作に神経を使う「美女×食べる」系CMだが、ネットではそれに逆行するような過激な作品が登場している。2016年にWEB限定で配信された『辛萌(からもえ)動画』は、「美女×食べる×汗」のフェチ全開動画が話題を呼んだ。出演者も女優・武田玲奈、コスプレイヤー・御伽ねこむ、グラドル・今野杏南らと豪華な顔ぶれで、マニア心をくすぐったのだ。
美女の“そしゃく音”動画にハマる視聴者が急増、“もぐもぐ配信”などジャンルも多角化
その“終着点”とも言うべきものが「そしゃく音動画」だ。YouTubeを中心に流行っているのだが、食べるときに発生するそしゃく音がひたすら流れるだけというもの。“もぐもぐ”と言えば聞こえはいいが、“ぐちゃぐちゃ”と食べたり、“ごっくん”と飲み込むだけのことなので、人によっては不快感しかなく、賛否が分かれるのもうなずける。ただ氷を噛み砕いているだけの動画が中国発で日本でも話題になったが、こうしたそしゃく音動画は女性が食べるだけに限ったことではなく、「ASMR」(Autonomous Sensory Meridian Response)という動画の新ジャンルで、焚き火のはぜる音など聴覚や視覚への刺激から起こるゾワゾワする感覚を扱うものらしい。
こうしてみると、「美女×食べる」系の世界には想像以上の広がりと深さがあるようだ。「かわいい」、「おいしそう」、「見ていて食欲がわく」など商品への訴求効果も期待できるが、場合によっては「汚い」、「不快」というマイナスイメージも生んでしまう。それでも「食べる」ことは人間の三大欲求のひとつであり、経済活動の根底にあるものだ。厳しいTV表現の規制の中、「美女×食べる」系CMの制作者たちは日々、新たな表現方法を模索し続けているのだ。