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杉咲花インタビュー『もうこれからは絶対にしたくない――』

2015年が始まって半年、話題作への出演が続く女優・杉咲花。今年の新春インタビュー時に「忘れられない作品」と語っていた、映画『トイレのピエタ』がいよいよ公開される。年頭の抱負に掲げた、引き出しから恥じらいを引っ張り出して、特別な映画との出会いを情熱的に語ってくれた。

泣かされたのになぜか楽しくて

――いよいよ公開される『トイレのピエタ』。杉咲さんのなかで、この作品のどんなところが特別だったのでしょう?
杉咲初めてのことと、いろいろな奇跡が集まってできた映画です。松永大司監督が10年間ずっと思い描いてきた映画(松永監督にとって長編劇映画監督デビュー作)ということも、アーティストの(野田)洋次郎(RADWIMPS)さんが映画をやること(野田にとって初出演映画)も、全てが奇跡みたいで。今回、ヘアメイクを担当してくださった須田理恵さんも、3年前くらいからずっとお世話になっている方だったり、人とのおもしろい出会いがたくさんあって。いつもとはちょっと違う感じが、ずっとしていました。

――1年にもおよぶ長丁場のオーディションも、初めての体験でしたか?
杉咲初めてです。脚本を読んだとき、ドキッとしたというか、すごいものを読んでいる感じがして。ここまで“絶対やりたい!”って思うことは、それまでありませんでした。でも、オーディションのときは、監督がすごく怖かったんです。「そんな芝居は俺でもできる」「やる気がないなら帰れ!」とか言われて、泣かされて。そういうオーディションも初めてでした(笑)。でもすごく泣かされたのに、なぜか楽しくて! こんなに対等に向き合ってくださった監督は初めてで、それがうれしかったんだと思うんですけど、楽しかったんですよね。でも(オーディションの後は)毎回“あー落ちただろうな”って思っていたし、「次も来てください」って言われると“あぁ、どうしよう……”って思っていました。
――今回演じられた真衣という少女は、感情をむき出しにして、絶望の淵から希望の果てまで全力疾走するような、タフさを求められる役どころですね。
杉咲撮影前に少しリハーサルをやったんですけど、1年くらいオーディションをやって、途中で脚本を読ませてもらっていたので、自分のなかではもう、真衣が完成されていたという。自信をもって、真衣としてリハーサルに行ったんですけど、監督に「全然真衣じゃない」って言われたんです。目の前には宏でいる洋次郎さんがいて、ずっと私だけ「全然違う、つまらない」と言われ続けて。リハーサルでもやっぱり監督が怖くて、泣いたんです(苦笑)。怖くてというより、悔しくて。ただ、監督の指示はわかりやすくて、言ってくださることはよくわかったし、それは自分がどこか恥ずかしさがあったりして、できていないところだったりして。「花はできるから」って、最後まで監督が信じてくれていたことが救いで“やってやる!”って自分でもずっと思っていました。最初から最後まで通して、何回も何回も、宏と読み合わせていくなかで、監督に「花は真衣をつかんだね」と言われたとき“この監督だったら、どこまでもついていける”って思いました。

ふたりの距離が縮んでいった

――真衣をどんな女の子だと捉えましたか?
杉咲何の汚れもない、すごく純粋な子です。極端な言い方をすると、死にたいけど死に方がわからない部分もあるんですけど、どんどん必死に生きていくようになるんですよね。そこがすごく好きでした。とにかくまっすぐ前を見て、毎日を歩いていて……。リハーサル前に思い描いていた真衣は、もっとクールでドライな人間だったから、もしあのままやっていたら、こういう作品にはなっていなかったと思います。リハーサルをやったことで、自信もついたし、本当によかったです。

――作中、家族のことで人知れず苦しみを抱えていた彼女の疲弊した横顔が描かれる一方で、一生懸命に走ったり、自転車を漕いだり、真衣の若い生命力のみなぎる姿がまぶしかったです。なかでも、真衣がひときわ輝いていた、プールのシーンについて。真衣にとって、プールはどんな場所だと考えていましたか?
杉咲真衣は水が好きなので、(撮影で)プールを見たとき、すぐに飛び込みたくなりました。それと、これは私が思ったことなんですけど、プールに入ると、身体を全部、預けられるというのか、自分を支えてくれる場所という感じがして。いちばん落ち着ける場所でした。プールに入るシーンは(作中)2回あるんですけど、撮影が始まってけっこう早い段階で撮ったんです。そのことで、自分のなかで「宏が大好き」という気持ちや(宏に対して)「死ぬな!」っていう思いが決定づけられたと思います。現場に入ってからも、洋次郎さんとはそんなに話すこともなかったんですけど、プールのシーンを撮り終えてからは、会話がなくても、ずっと宏と真衣の関係でいられるなって。いちばん信頼した瞬間でしたね。あそこからどんどんふたりの距離が縮んでいったと思います。大好きなシーンです。

――なんとも言葉では表現しがたい、でも忘れられない、真衣のラストカットについても、聞かせてください。あのとき、監督はどんな演出をされたのですか?
杉咲何も言われなかったですね、あそこは。今思い返しても、不思議なくらい。ラストカットも何回か撮ったんですけど、カメラのアングルが変わっただけで、私は何も言われなかったです。映画のなかに、真衣が歩くシーンがいくつかあって、まとめて1日で撮りました。ラストシーンは秋葉原で撮ったんですけど、現場に着いてから、監督とふたりで20分くらいずっと歩きました。「ラストシーンは本当にずっと歩いているから、疲れて、歩き方が変わるよね? 歩かないとわからないから」って。そういうのを大事にする監督で、私はそこがすごくいいなって思ったんですけど、「歩いて、歩いて、疲れて、それを自分で感じて」って。前日に(ラストシーン直前の)ピエタを見るシーンを撮ったので、本当に真衣の感情のままに、ただ歩いていました。

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