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『半分、青い。』ノスタルジー喚起で出だし好調 SNSを駆使したNHKの事前戦略

 4月2日に放送がスタートしたNHK連続テレビ小説『半分、青い。』。70年代の世界観に「なつかしい」といった声が続出し、第1話の平均視聴率は21.8%で前3作超え、第1週(全6話)の平均も20.1%に。主演の永野芽郁や佐藤健の登場シーンはごくわずかだったにもかかわらず、大台を超える好調な出だしとなった。その背景には、「第2次ベビーブーム」世代に親近感を与える企画力と、NHKならではの手厚い事前の“種まき”が相乗効果を生んだと言える。また、先日、SNS上で“なつかしの小ネタ”の時代考査が繰り広げられていると報道もされていたが、そうしたSNSでの盛り上がりもNHKの事前戦略だろう。

事前番宣システムの効果がてき面 “時代背景”がメイン視聴層を刺激

 人気脚本家・北川悦吏子氏のオリジナル作品。主演に女優・永野芽郁、その幼馴染に俳優・佐藤健、そして俳優業でも歌手としてもドラマやアニメでヒット作を連発する星野源が主題歌「アイデア」を担当するなど、最強の布陣でスタートした『半分、青い』。初回は、主人公・鈴愛が胎児の姿で登場するという斬新な“アイデア”も話題になった。

 さらに、時代背景への関心は高く「糸電話」やヒロインのケガに塗っている「赤チン」、「裏が白いチラシに喜ぶ子どもたち」など、日常生活に密着したアイテムや光景から始まり、大阪万博やベルボトム、「レナウン」のCMなどなど…視聴者からは“71年生まれ”で“田舎”暮らしのヒロインの生活に「なつかしい」というストレートな感想が多く出ている。映画『ALWAYS三丁目の夕日』など、なつかしく優しい気持ちになれる作品は、ノスタルジーに浸れることから人気も出やすい。だが、今作の場合は初回放送から「なつかしさ」を求めて見始めた層が多かったはずだ。

 その背景には、NHKならではの番宣システムが最大限に生かされている。制作発表の早さもしかり、テレビやラジオ、出版物で事前にしっかりと作中の時代背景やその舞台裏を伝える土壌が整っているからだ。3月21日放送の事前PR番組『もうすぐ「半分、青い。」』では、ドラマ内でヒロインたちが歌う松田聖子やプリンセス プリンセス、松任谷由実などの歌謡曲が登場。本放送前からなつかしさを覚えた人も多かったはずだ。

 民放ドラマの場合、主演などのメインキャストが放送直前に様々な情報系やバラエティ番組を”縦断“して番組宣伝を行うのが一般的であるのに対し、NHKは「作品」の時代性や世界観もストレートに届けられる。これが功を奏し、NHKのメイン視聴者層であり、視聴習慣の強い鈴愛と同世代の40代以上にしっかりと届いたと言えるだろう。

TBS&フジドラマのオイシイとこどり!? “北川世代”の厚いファン層の囲い込みに成功

 そして、脚本家・北川悦吏子氏と言えば90年代以降のラブストーリー全盛期を支えた人気脚本家。ファンの多くは第2次ベビーブームの1970年代生まれであり、その厚い層を抱える脚本家と言える。

 しかも、『半分、青い。』は、幼い頃に病気により片耳を失聴したヒロインを設定。TBSドラマ『愛していると言ってくれ』や『Beautiful Life〜ふたりでいた日々〜』『オレンジデイズ』など、ハンディキャップを抱えるキャラクターの恋模様は北川氏の得意分野だ。加えて、『ロングバケーション』など、フジテレビ「月9」の明るくポップな作品テイストも取り込み、「これまでの集大成」になっていると、北川氏自身がインタビューで語っている。TBSドラマの重厚さと、フジ「月9」のポップさ、明るさの「オイシイとこどり」をしてしまうNHKの貪欲さで、従来の北川作品ファンたちの心がくすぐられる仕掛けになっているのだ。

 また、『愛していると言ってくれ』『Love Story』など、北川作品でお馴染みの豊川悦司の出演が発表され、豊川演じる漫画家のモデルとして80年代に活躍した人気漫画家・くらもちふさこ氏を起用。リアルタイムツイートランキングで「くらもちふさこ」が3位になるなど大反響を呼んだ。さらに、北川氏は制作決定発表後に自身のTwitterで鈴愛と同じ「1971年前後生まれの人」に向けて、当時の流行についてアンケート。参加型でファンのハートをがっちり掴んでいる。まさに、“北川世代”の視聴者たちの囲い込みに隙がなく、放送前から“ノスタルジーに浸れる作品”として期待を持たせることに成功したと言えるだろう。

戦略的な“違和感”!? SNSの活発な“時代考査”議論も後押し

 しかし、その「なつかしさ」は、初週から意外な展開も見せる。SNS上では、自分の記憶との“違和感”について投稿するユーザーが散見された。例えば、鈴愛が律を呼ぶ際に3回笛を吹くという、テレビ番組『マグマ大使』を真似るシーンについては「1971年産まれだけどマグマ大使は知らない」「1971年生まれでマグマ大使は無理がある」など、矛盾を指摘する声が多数挙がった。というのも、『マグマ大使』が放送されたのは、1966〜67年。鈴愛が生まれる前である。その一方で、「地方なら再放送していたのでは?」といった「擁護」派も現れ、SNS上で活発な議論が繰り広げられた。

 こうしたドラマのディティールが賛否両論を生むこと自体、熱心に見ている視聴者が多いことの証拠であり、SNS上で“小ネタ”が盛り上がることは昨今のトレンドとも言える。以前も、『あまちゃん』の回想シーンで80年代の“なつかしの小ネタ”や、決め台詞の“じぇじぇじぇ!”(今作では“ふぎょぎょ!”)がSNSとの親和性の高さを見せていた。民放ドラマでいえば、『逃げるは恥だが役に立つ』がSNSを効果的に活用して社会現象を生んだ好例だ。

 ちなみに、『マグマ大使』の一件には続編があった。第6話で、鈴愛が『マグマ大使』『あしたのジョー』の絵を描いているところに、同級生のブッチャーがこんなツッコミを入れる。「なんでお前、そんな古いのばっか知ってんの? ホントはババアなの?」。それに対して鈴愛は「おとうちゃんが古い漫画好きなんや」と説明する。まさか「時代のズレ」すらも計算だったとは…。「してやったり」とはまさにこのことで、北川氏に、NHKに、一杯食わされたわけだ。このように、SNSでの様々な反応もひとつの盛り上がりとしてNHKが意欲的に仕掛けてきているのは明らか。

 NHKのドラマとしては今後、10月期に連続テレビ小説『まんぷく』、2019年大河ドラマに『いだてん』が控えている。いずれも戦前〜高度経済成長期を描いていることから、当時の生活を知る視聴者のノスタルジーを大いに喚起させる作品となるだろう。そのスタートダッシュを見事に決めた『半分、青い。』がこれからどのようにバトンを繋いで行くのか、これからの“アイデア”が楽しみだ。

(文/田幸和歌子)

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