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斎藤工、仕事を選ばない理由は…「金より銅メダルのほうに価値がある」
背伸びすることは、害でしかない
斎藤工 辻山は“崖っぷち探偵”という設定ですが、崖っぷちの開き直った強さは閉鎖的というものではなく、解放感に近いものだと思っています。こういう偏屈なエネルギーを僕自身もたくさん持っているので、辻山もそういう要素のある人間なのかなって。それと周りの共演者の方やスタッフの方との間で生まれる化学反応による力も大きいです。僕は、主人公を演じさせていただく現場では、自ら周りをリードしていくタイプではなくて、キャッチャーみたいな関わり方をしています。おかげで「あ、こういう反応をする自分がいるんだ」ということを、周りの方の手によってたくさん引き出してもらいました。
斎藤工 無事にドラマを放送できるということがまず嬉しいです。撮影期間中はプレッシャーとかあまり感じていなかったと思います。というのも、作品がどう届くかというところにまで意識を向けてしまうと、何も手につかなくなってしまうので。僕らの仕事の場合、よっぽど精神的に強い人でない限りあれもこれも拾ってしまうと全部負荷になると感じるので、まずは「主演」というプレッシャーから外していくようにしていました。そうしないと僕は精神的に持たないタイプだし、そもそも自分は主演の器だとは全く思っていないので。僕は周りの方達のおかげで主演にしていただいているだけです。「主演」を務めさせて頂く時はいつもそう思っていますし、今回なんてその最たるものだと感じています。
――現場では「座長としてこうあろう」という意識はあまり持たれずに?
斎藤工 恥ずかしいほどになかったですね。僕は探偵という職業は俳優業に通じる部分があるなと感じていて。一般的な解釈としては俳優も探偵もおそらく“知っているようで知らない、未知な部分が多い職業”ですよね。そして両者も良い意味で地に足が着いているとは呼べない仕事。だから今回の役柄も含めて、この仕事で背伸びすることは害でしかないと考えていています。現場にいる時もこの“へなちょこ”の精神状態のまま現場にいました(笑)。
斎藤工 二階堂ふみさんの衣装が本当に素敵で。現場でも、二階堂さんだけランウェイ感がすごいんです(笑)。
斎藤工が“おじさん”役に…!? 「世代感を意識して、等身大のおじさんを演じた」
斎藤工 心境も何も、僕はもう数年前から紛れもなく「おじさん」ゾーンに入っているので(笑)。だから「おじさん」っていう呼ばれ方は嫌いじゃないです。そもそも僕に才能があったら、何か偉大な作品を世に残して20代で死んでいる予定だったんですが…(笑い)。でも現実にはまだ残せずに、おじさんになってしまいました。
斎藤工 人って、“世代”のニオイがありますよね。バブルの時代に青春を過ごした方は、やはりバブル独特の雰囲気がありますし、僕らの世代はどちらかというと堅実な人間が多いと思います。自分の思いとは裏腹にはじけきれず、最終的なベクトルを内側に向けてしまうみたいな。鬱憤のある世代だなと個人的に思います。そしてそんな同世代の友人たちとコミュニケーションを取るなかで感じたのが、今回のドラマのように既存の作品を映像化する場合、今の時代とタイムリーなものを反映させていかないとただ“名作を上からなぞっただけ”の作品になってしまうということ。それが現実化してしまうのは本当に怖いので、今作ではちゃんと現代風の、僕の世代・年齢の等身大の“おじさん”を演じさせてもらいました。
お笑いの仕事は…「正直つらいです(笑)」
斎藤工 つらいですね、正直(笑)。もともと低体温気質な人間なので、できるだけカロリーを使わずに生きていたいんですが…。なんでかお笑い路線も好評をいただいているようで。
――本心ではお笑い的な表現は苦手ということでしょうか?
斎藤工 父が映像コマーシャル業界にいた影響もあって、CMでは視聴者の方の心に引っかかるフックを創らなくてはいけないのは理解しているつもりです。人間の記憶は断片的なので好きなシーンも“線”じゃなくて“点”だったりするんですよね。その“点”が何なのかというのは人によって違うけど、そういうのをたくさん創っていくのが僕らの仕事としての在り方だと感じています。下手をすればただの映像として消費されてしまうものを、何かしらの記憶として残る“カタチ”に変えてそれを回避させていくのが、自分に与えられている役割なのかなと。そういう意味では、お笑いの仕事は、目的地に向かってたくさん“点”を創れた気はしますね。
仕事を選ばない(??)斎藤工のこだわり、「金メダルよりも銅メダルに価値がある」
斎藤工 最初は何で周りからそういうふうに思われているんだろうと不思議でしたし、僕は作為があるわけでもないので、ひょっとしたらそう言っている方がご自身の状況に満足していないのでは、と思っていたりしたのですが、今はそんなふうに考えることすらもなくなりまして(笑)。俳優としての素材としては自分の場合、『昼顔』が代表作になっているのかなと思うのですが、そこで演じた役のイメージをずっとキープしていくことに僕はあまりポジティブな考えは持っていないんです。求められる側面が毎回違うのって、俳優として1番贅沢なことだなと思っていますし、皆さんが抱いている「斎藤工にこういう役をやってほしい!」というクリエイターのイメージに対して、ちゃんとお返ししていきたいだけなんです。
――変化していくことをポジティブに捉えているんですね
斎藤工 そうですね。それに自分の視点から見えている自分自身って全然あてにならないということをけっこう前に悟ったんですよ。「え、この役を自分に?」と思うことはありますが、いざやってみると案外それが腑に落ちたりして。やはり自分自身のことなんて自分からは1番見えていないし、むしろ死角なんです。だから人の意見に耳を傾けることは、それだけ自分が拡大していく可能性を秘めているということに気づけたし、そうした経験を積み重ねてきたおかげで現在に至っています。
もしやってみて結果が伴わなかった場合でも、そういう時こそ大事だし、むしろ苦い思い出になりそうな出来事の先に次の成功へのヒントが詰まっていると思っています。例えば銅メダルを獲る人って準決勝で負けているわけじゃないですか。その準決勝の負けた経験を踏まえた上で今度はどう失敗しないか、という立て直しをした人が獲得するのが銅メダルだと思うんです。それに銅メダルで得た経験値のほうが飛距離も出る気がするので、個人的には金メダルよりも価値があると考えています。こんなふうに常に“失敗を恐れない”という姿勢でいないと、あっという間に自分が縮まっていくのがイメージとしてあります。
1番やりたいことは…田舎暮らしのユーチューバ―!?
斎藤工 何だろう…自然の傍で過ごしたくて。だから自然の近くで飯を食っていける職業って何だろうって考えると、俳優業は東京を拠点にしないと厳しいだろうから難しいですよね。だから…ユーチューバーじゃないですか?
――ユーチューバー! すごく意外です(笑)
斎藤工 職業の在り方って年々すごく変化しているじゃないですか。いつの間にか知らない職業が誕生していたり、なくなっていたり。10年後、今の僕らが想像もしていない職業が乱立している可能性もあるし、個人的に働く場所を固定するのが不向きだと気づいたため今の仕事に就いているので、旅をしながら生活するっていうのも憧れますね。そういう放浪的な生き方を軸として考えると吉田類(タレント・酒場ライター)さんみたいな活動の仕方が理想かもしれません。
(文/kanako kondo 写真/Tsubasa Tsutsui)
<スタイリスト:川田力也(es-QUISSE)、ヘアメイク:KAZUOMI(メーキャップルーム)>
日曜プライム ドラマスペシャル『探偵物語』(テレビ朝日系)
出演:斎藤工 二階堂ふみ
夏木マリ 吹越満 正名僕蔵 長谷川京子 國村隼
4月8日(日)よる9時〜テレビ朝日系にて放送