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劇場版『世界ネコ歩き』公開! 動物写真家・岩合光昭が教える猫の撮り方の極意とは!?

 動物写真家・岩合光昭が、世界中の猫を撮影するドキュメンタリー番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK BSプレミアム)。10月21には、『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち』が公開する。いまや空前の猫ブームだが、岩合氏はどのように猫と向き合ってきたのか? 津軽での感動の撮影エピソード、そして猫を撮影するときの心構えも語ってくれた。

目標の一つは、猫を主人公にした劇映画を作ること

  • 岩合光昭氏

    岩合光昭氏

――NHK BSプレミアムで放送中の『岩合光昭の世界ネコ歩き』の劇場版が公開されます。映画になると決まった時は、どんなお気持ちでしたか?
岩合光昭 僕自身、いつか映画をやりたいとずっと思っていたので、単純に嬉しかったですね。“映画監督”って、男の子の夢ですから(笑)。僕の目標の一つは、ドキュメンタリーではなく、猫を主人公にした劇映画を作ることなんです。

――脚本、美術、音楽すべてを総合的に手がけてみたいと。
岩合光昭 そう、それこそ衣裳もね(笑)。

――今回の映画も、長期に渡って取材している分、とてもドラマティックで季節感も感じられて、見応えがありました。
岩合光昭 映画は時間が長く、既存の映像をただくっつけただけではつまらないので、番組で人気の高かった“津軽の四季”というシリーズのコトラとその家族を軸にして、この夏に追撮もしました。それだけでなく、これまでに登場した素晴らしいキャラクターの海外猫たちにも再登場してもらい、どなたにも楽しんで頂ける作品になったと思っています。

猫に怒られたり嫌われたりすることほど、辛いことはない

――映画のための追撮で訪れた津軽で、コトラが赤ちゃんを産みます。カメラはその成長をつぶさに追っていますが、現場で苦労された点はどんなところですか?
岩合光昭 コトラの赤ちゃんが産まれた、その前日に僕らは津軽入りしました。すぐにコトラが暮らすリンゴ農園のご主人と会いました。その時は「いやぁ、まだだよ。お腹が大きいままだよ」とおっしゃった。でも翌日、コトラがいる作業小屋に先に入ったご主人がニコニコしながら出てきて、「生まれたような、気がします」って(笑)。

――“気がします”って、どういうことなんでしょう?
岩合光昭 ご主人曰く、赤ちゃんの泣き声が聞こえたような気がする、と。その目で赤ちゃんの姿を確認してはいなかった。でも僕はよし!生まれた!と勇みカメラを持って、ディレクターが三脚、セカンドカメラマンがライトを持って、3人で一斉に小屋の中に入っていきました。でも、コトラのいる段ボールの中を覗き込んだら、その途端、シャーって威嚇するんです。それで、「わぁ、困ったぞ」と思って。僕、猫に怒られたり嫌われたりすることほど、辛いことはないですから(苦笑)。

――それはさぞかしお辛かったでしょうね…。
岩合光昭 なので、みんなにはすぐに小屋から出てもらって、コトラに向かって話しかけました。「コトラ、よくやったね」「今どんな気分なの?」「コトラなら、絶対いいお母さんになるよ」とか、いろんな言葉で褒めてあげた。すると緊張がほぐれたのか、子どもを隠していたコトラの背中がすっと柔らかくなって、その向こうに赤ちゃんが見えた。僕が、「何匹いるのかな?」って数えようとすると、今度はコトラが授乳を始めたんです。生まれたばかりだから、みんなおっぱいが上手く飲めなくて、口の端からポタポタ零れていく。それが可愛くて(笑)。いてもたってもいられなくなって、「コトラ、そろそろ撮らせて」と言ったら、コトラが「ミャー」って鳴いた。よし、撮影許可がもらえたとカメラを構えました(笑)。

――なるほど。岩合さんがコトラに許可をもらって、そこからカメラが回っているんですね。
岩合光昭 猫の成長はものすごく早いんです。2日目には仔猫の赤茶の毛は乾いて、尖っていた頭もちゃんと丸くなっていた。ミルクも、たった1日で一滴もこぼさなくなっていて。5日目にライトにちょっと目が反応し始めたから、ずっと小屋の外で待機していたスタッフに、「目が開いたよ!」って報告に行ったんです。でも、みんなはそれまでコトラや赤ちゃんと直接コミュニケーションを取っていないものだから、「そうですかぁ」みたいに結構反応が悪くて(苦笑)。片や僕だけが、すっかりお父さん気分で盛り上がっていました(笑)。

嬉しさと別れの寂しさで感極まって、泣いてしまいました

――コトラの出産から、何日間津軽にいたんですか?
岩合光昭 8日ですね。そこから一旦海外ロケに出て、また津軽に戻りました。シロツメクサの畑で2匹並んでいる映画のポスターの写真があるでしょう? 右がコトラの子どものハナで、左がリッキー。2匹とも生後1ヶ月です。仔猫を撮影するときは、必ず母猫の許可を取ることにしているんだけど、このときもまずはコトラを探しました。コトラは、小屋の影からまるで家政婦のミタさんのように(笑)、こっそりこちらを見てた。「コトラ、おいで」と言ったら、それを合図にミャーミャー鳴きながらやってきて、足元をくるくる回って、僕を見上げ、何かを訴えているかのようにまた鳴くんです。目を見たら「お父さん、探したのよ! 子供たちを置いてどこに行ってたの?」と言われたように思えて、年甲斐もなく動揺しました(笑)。

――岩合さん、とうとう父猫になられたんですね(笑)。
岩合光昭 本当、焦りました(笑)。でも、お母さんのコトラが、僕といると安心していることが、仔猫たちにも伝わったらしく、撮影は順調に進みました。1年が過ぎ、最後の撮影の日、いつも通り腹這いになってカメラを構えていたら、ハナが静かに近づいてきて、隣に座って頬をペロペロ舐めたんです。それまでそんなこと一度もしなかったのに。嬉しさと別れの寂しさで感極まって、泣いてしまいました。撮影では、僕のことを撮るカメラマンもいるから、「これはヤバい、撮られているかも」と思ってカメラマンの方を見ると、ちょうど彼は反対側を向いていたので、みっともないところを撮られずに済んでよかったです(笑)。

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