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中井貴一&吉田羊、見出した恩人と快進撃中のスターの初対談「ふたりで絆を深め合ってしまった撮影現場」
ラストシーンを撮って“羊ちゃんにやってもらってよかった”(中井貴一)
――夫婦役が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
吉田羊中井さんとは常々、がっつりお仕事をしたいと思っていましたので、奥さん役ということでひとつ夢が叶ったなと。ただ、台本を読ませていただいたら、早朝、仕事に行く前と、夕方家に帰ってきてからしか、旦那様にはお会いできないという……(苦笑)。
中井貴一ふたり一緒の撮影が1日で終わってしまったので、ちょっともったいなかったなって気もしているんです。
吉田羊物足りなさがありますよね。
中井貴一でも、(中井扮する澄田が)朝、家を出てから1日中本当にいろいろなことがあって家に戻ったとき、部屋の奥に羊ちゃんがいて、というラストシーンを撮っていて“羊ちゃんにやってもらってよかった”としみじみ思いました。
吉田羊うれしいです。ありがとうございます。
吉田羊夫婦像については、まったく相談しなかったんです。事件現場には行かなくなりましたけど、やっぱり現場が好きな旦那様だってことを、彼女はわかっていたと思います。(劇中、立てこもり事件の現場に行くことになり、リポートどころか犯人と直接交渉するハメになる澄田の様子を、テレビ越しに見守りながら)カッコ悪くはありますけれども、この人がやっと活き活きしているというふうに思い直して、惚れ直す(笑)。そんな瞬間がたくさんあった気がします。
“中井さんなら大丈夫”という思いが私にはある(吉田羊)
――夫が世間から避難を浴びたリポートの真相について、妻は知っていたと捉えていましたか?
吉田羊知らなかったと思います。
中井貴一うん、うん(うなづく)。
――では、数々の災難に見舞われながらも、なんとか乗り越えて帰宅した夫の「ごめんなさい」という言葉を、どう受けとめたのですか?
中井貴一いろいろな意味がありますよね。長澤くん(一方的に澄田に好意を寄せる小悪魔系サブキャスターの小川圭子役)のことも含め……。
吉田羊命の危険にさらされたことも含め。
中井貴一ただ、帰宅してから、ふたりが見つめ合うシーンがあるんです。そのとき、羊ちゃんがすごく心配していたという顔になっていたんですよ。
吉田羊心配ゆえに怒っているという。
中井貴一そう! 気持ちが明確に通じてくる。そういう表現って、テクニックではないんですよね。そこで僕は、すごく胸が熱くなりました。役者同士にしかわからない顔というかね、それは役者をやっていて、いちばん得をした気分になる瞬間なんです。もちろんカメラはあるけれども、役として、カメラとは違う感じを受け取るわけです。共演する時間が長ければということより、その瞬間“本当に(妻役が)羊ちゃんでよかった!”って強く感じました。
吉田羊やっぱり信頼感ですかね。“中井さんなら大丈夫”という思いが私にはある。実はラストシーンは、アドリブだったんです。台本では、ふたりが椅子を下ろし始めたところで終わっていて。リハーサルからもずいぶん変わっていますし、(本番では)お互いに思いついたことをやっていった感じでした。
――エンドロールに及ぶ、長い余韻の残るシーンでしたが、君塚良一監督がカットをかけなかったのですか?
ふたり(同時に)そうです。
中井貴一映像の場合は、相手がセリフを間違えたら「はいカット、もう1回」となるけど、舞台は続けなくてはいけない。そういう意味では、君塚さんの現場は舞台みたいでしたね。芝居は生きていますから、100パーセント稽古と同じものは表現できないんです。同じタイミングでセリフは言えないし、相手の動きが変わることだってある。常に変わっていく芝居に対して、リアクションしなくてはいけないわけです。そんなフレキシブルに動きを変えていく舞台の感覚で、君塚さんとやっていくと、楽しくてしょうがない(笑)。芝居が生きものだということを強く認識させてくれる。だからおもしろかったですね。自分の感性がどこにあるのか? ってワクワクする感じがありました。
吉田羊テレビ(で夫の奮闘ぶり)を見ながら、少しずつ明美の表情が変わっていく過程を撮っているとき、小川さんと澄田のツーショット写真がテレビ画面に映ったシーンのリアクションを何パターンか撮ったんです。「いまのとはちょっと違うのをください」ってけっこう何回も言われて、「もうないよ」ってところまでやらせていただいたんですけど(笑)。全部撮り終わったあとで「吉田さん、すみませんでしたね。もっと引き出しを見たくなってしまって」とわざわざ監督が言いに来てくださって。“自分の芝居が悪かったんじゃないか?”って、私が気に病まないようにということまで察してくださって。優しい人だなって思いました。
中井貴一すごく男らしいところもあってね。判断の仕方もパッパッと決めていく。でも演出の仕方はとても繊細で。とくにテレビ局のシーンでは、メインキャストだけでなく、周りの人たちに対する気遣いみたいなものまで、細かく演出をなさるんです。実際にテレビ局で報道の仕事をしている知り合いが、完成作を観て「うちのスタジオで撮ってたんですか?」って聞いてきたほどの臨場感が出せる監督ですから。全体を広角で見られるっていうんですかね。それは君塚さんならではという感じがしました。