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吉田羊インタビュー『女優という仕事を選ぶきっかけになった高校時代の原体験』

みずみずしい世界観で、アニメファンの枠を超え、多くの観客を惹きつけた『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』から2年。長井龍雪監督率いる『あの花』チームから、再び秩父を舞台につづられた、青春群像劇『心が叫びたがってるんだ。』が誕生した。言葉に傷つき、心を閉ざしてしまった主人公・順の母親役で、アニメ声優に初挑戦したのは、ドラマ、映画からバラエティまで引く手あまたの女優・吉田羊。女優の原体験となった、高校時代の思い出も飛び出して……!?

役の気持ちになる逆説的な気づきがあった

――ナレーションなど、声のお仕事も印象的な吉田さんにとって、本作がアニメ声優デビュー作なのですね!
吉田正直、とても難しかったです。いただいたアフレコ用の台本の読み方からまずわからないという。“これはちょっと困ったところに来てしまったな”と(苦笑)。収録現場で長井監督が細々とディレクションをしてくださって、監督と一緒に何とか作っていった感じです。
――声だけで役の感情を表現する、声優ならではの難しさは感じましたか?
吉田最初はよりわかりやすく、役の気持ちを声に乗せるようにしていたんですけれども、監督に言われたのが「あまり感情を乗せ過ぎず、もっとニュートラルでいいです」と。自分の思う通りにしゃべれないというストレスはありつつも、(感情を)抑制することで、いましゃべっているのは、吉田羊ではなく、順のお母さんなんだと意識することができ、役の気持ちになれるという逆説的な気づきがありました。

――普段のお芝居とは違うアプローチだったのですか?
吉田そうですね。感情をプラスしていくというよりは、引き算の作業だったように思います。その方が、観る人がそのキャラクターに感情移入しやすくなるという、とても不思議な体験でしたね。それは今後、女優業にも持ち帰って、活かしていきたいと思っています。例えば、思いの強いセリフであるほど、あえて言葉数を少なくすることで、相手が勝手に感じ取ってくれる部分もあるんじゃないかなって。

言葉は…人を救えるけれど武器にもなる

――これまでにもいろいろなお母さんを演じていますが、今回の主人公・順の母、成瀬泉については、どのような印象を抱かれましたか?
吉田ひと言でいえば、とても未熟な人だなと思いました。娘の感情より、自分の感情を優先してしまう。でも実は彼女自身、そのことに気づいていて、自分のふがいなさを、娘を否定することですり替えているというのか。娘に対してきつい言葉をかければかけるほど、実は自分を追い詰めているんじゃないかとも感じました。

――邪気のない娘の言葉に傷つき、一方では娘を言葉で傷つけてしまう、しんどい役どころです。
吉田ただ根本には、順を愛しているということ、彼女を大事だと思う気持ちはぶれないようにしたいなと思っていました。その気持ちがあれば、吐く言葉がどんなにキツくても、きちんと伝わるんじゃないかって。

――思いをきちんと言葉で伝えるという、本作のテーマについては、どう捉えましたか?
吉田自分の想いを人にわかってほしいという思いは、きっと誰もが持っていて、そういう意味では普遍的なテーマですよね。人とわかり合うときに、言葉の持つ力の善悪、その両方から繊細に描いた作品だと思いました。ご覧になった方はきっと、順の勇気を出していく姿に背中を押されるでしょうし、やはり言葉は伝えなければいけないと、観た方の心を開く映画になればうれしく思います。
――バラエティやブログなどで使われている、言葉のセンスから、吉田さんご自身も、言葉に対して特別な想いをお持ちのように感じます。言葉の力については、どのように考えていますか?
吉田私の実体験として、言葉って人を救えるけれども、一方で武器にもなる。そう実感する経験がいくつかありました。だからこそ、自分が使う言葉は美しくありたいし、同じ言葉なら、人の心を救う言葉を使いたいなと思っているんです。例えば友だちに何かを相談されたときに心がけていることは、まず受け容れること。否定するのではなく「あなたの気持ちはわかります」といったん受け容れた上で、自分の意見を言うようにしています。そうすることで、相手が“自分の言葉が私に届いているんだな”と安心でき、さらに思いのままに話せるようになるんじゃないかなと。自分も相談したとき、そう感じたことがあったので、意識するようにしています。

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