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前作を超える傑作?『トイ・ストーリー4』が提示したシリーズへの「ひとつの答え」

 前作『トイ・ストーリー3』から9年。全世界待望の『トイ・ストーリー4』がいよいよ7月12日より日本公開される。9年といえば、よちよち歩きの赤ん坊が、いっぱしの小学生として走り回るようになるほどの月日。だが、長大な空白期間は今回が初めてのことではない。『トイ・ストーリー2』から『トイ・ストーリー3』までは11年かかっている。記念すべき第1作『トイ・ストーリー』が誕生したのは1995年。気がつけば、四半世紀も経っている。幼児のときにシリーズの幕開けに立ち会ったファンも、もう立派な親世代である。

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■エバーグリーンな名作テイスト、野心に欠けた『トイ・ストーリー3』

 多くの人々に心から愛されているシリーズだから、観る人によって、それぞれの作品の評価はさまざまであろう。これはあくまでも私見だが、シリーズ最高のヒットとなり、アカデミー賞長編アニメーション賞にも輝いた『トイ・ストーリー3』は、作品そのものは『トイ・ストーリー』『トイ・ストーリー2』に較べると、かなり見劣りする出来だったように思う。

『トイ・ストーリー3』は21世紀になってから初めての作品であり、アニメーションをめぐる技術も環境も、1990年代とは一変している時代にフィットさせることが必要だったのではないか(たとえば『新世紀エヴァンゲリオン』が庵野秀明自らの手により『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』としてリ・スタートしたときのことも想起させる。奇しくも『エヴァ』は『トイ・ストーリー』と同じく1995年が生年である)。

 だから、生まれて初めて『トイ・ストーリー3』でこのシリーズに接して、その前の2作をさかのぼっていく世代にとっては良かったと考える。だが、『トイ・ストーリー3』には、『トイ・ストーリー』にあったようなエバーグリーンな名作テイストも、『トイ・ストーリー2』から感じられる果敢に攻めてくる野心も、感じられなかった。

『トイ・ストーリー』最大の魅力は、おもちゃという設定だから可能な活劇性と、おもちゃという存在がはらむアイデンティをめぐる哲学の融合にこそある。『トイ・ストーリー3』も活劇と哲学それぞれへの留意はあったものの、ふたつのファクターが組み合わさったときに生まれる爆発と化学反応が欠けていた。つまり、うまく「噛み合って」いなかったのである。

■四半世紀もの歴史を「さらに先に」進める『トイ・ストーリー4』

 このシリーズにリアルタイムで立ち会ってきた人ならご存知だと思うが、生みの親であり『トイ・ストーリー』と『トイ・ストーリー2』を監督したジョン・ラセターは『トイ・ストーリー4』に一切関わっていない(『トイ・ストーリー3』では製作総指揮とストーリー原案を手がけている)。例えるなら、ジョージ・ルーカスが参画していない新『スター・ウォーズ』シリーズのようなものだ。

 だが、驚くべきことに、ラセターが関与した『トイ・ストーリー3』よりも、はるかに『トイ・ストーリー』『トイ・ストーリー2』の精神性を正しく継承するものになっている。もっと言い切ってしまえば、『トイ・ストーリー』と『トイ・ストーリー2』それぞれの美徳を見事に抽出して、現代的な昇華を施し、四半世紀もの歴史を「さらに先に」進めるような成果をもたらしている。

『トイ・ストーリー』も『トイ・ストーリー2』も偉大だが、『トイ・ストーリー4』も偉大である。これは、映画史上における快挙と断言してもいいほどだ。

『トイ・ストーリー4』では、ウッディやバズたち、おなじみのおもちゃキャラクターたちは、女の子・ボニーの許に譲り受けられている。ボニーはおもちゃが大好きだが、女の子だからなのか、ウッディたちの「出番」は少なくなっている。そのことに寂しさを感じながらも、ウッディはボニーの成長を見守っている。

■シリーズの成熟が見いだせる「年を取っている」キャラクター

 おもちゃは、傷んだり、汚れたりということはあるにせよ、見た目が「老ける」ということはない。だが、内面は確実に「年を取っている」。この真実をさり気なく綴った設定の視点に、まずシリーズの成熟が見いだせる。『トイ・ストーリー』で、新入りバズ・ライトイヤーを目の敵にして、われこそが持ち主アンディ少年の「センター」おもちゃなのだ! と意地を張っていたウッディの姿が去来する。

 そんなふうに「老成している」ウッディは、幼稚園に体験入園することに不安をおぼえるボニーを心配して、こっそり同行する。いざというとき、自分にも何かできるのではないという密かな使命感を胸に抱きながら。

 そうして、ボニーが幼稚園で「制作」した、新しいおもちゃフォーキーに出逢う。プラスチック製の先割れスプーンに装飾を施されて「誕生」したフォーキーはけれども、自分のことをゴミだと思い込み、好きあらばダストボックスに「身投げ」しようとするコンプレックスのかたまり。ウッディはフォーキーの凝り固まった心を解きほぐすことが「自分にできること」なのではないかと気づく。

 老成しているからこその発見。
 しかし、おもちゃたちも同行したボニー一家のキャンピングカーでの旅行の真っ最中、悩みつづけるフォーキーは逃げ出してしまう……。ウッディはフォーキー捜索を決意、そこから、かつてなかったような冒険がはじまる。

■新キャラ投入に成功したフォーキー

 永きにわたるシリーズものが陥りがちな失敗に、新キャラ投入がある。活性化や物語を効率良く進めることを念頭に置いたキャラクター開発はときに行き過ぎてしまい、シリーズが大切に育んできた世界観を破壊することにもなりかねないが、『トイ・ストーリー4』ではそれがとても上手くいっている。

 俯瞰から眺めればトラブルメイカーであるはずのフォーキーは憎めないヤツ。ウッディならずとも、どこかほっておけない愛らしさがある。さらに後半に登場する重要な新キャラも、一見、一筋縄ではいかないが、知れば知るほど心がほだされていく「意外な」精神を蓄えている。ギャグをとめどなく連発する新キャラコンビにも嫌味がなく、素直に笑ってしまう。

 こうした奥深さは、『トイ・ストーリー2』以来、実に20年ぶりの登場となるボー・ピープの華麗にして深遠な大活躍によって、さらなる境地へと推し進められることになる。

 シリーズは一貫して「おもちゃのアイデンティ」を問うてきた。そのメッセージが極まったのが『トイ・ストーリー2』だとすれば、『トイ・ストーリー4』はこの問いへの「ひとつの答え」を提示してさえいる(『トイ・ストーリー』は『問い・ストーリー』でもある)。

■主人公ウッディの四半世紀にわたる旅の「到着」

 おもちゃは誰のもの?
 そもそも、おもちゃはなんのために存在しているの?

 主人公ウッディは、この根源的な疑問に向き合ってきたが、その四半世紀にわたる旅の「到着」が、ここには描かれていると言ってもいい。もちろん、かつてない冒険を躍動的に展開する活劇性はたんまり。活劇性こそが、『トイ・ストーリー』ならではの哲学を際立たせていることに、あらためて気づかされもする。

 見方を変えれば、『トイ・ストーリー4』はウッディの物語ではあるが、ウッディを狂言回しに据えた「この世界のありとあらゆるおもちゃたち」が主人公のストーリーとも言える。バズが、そんなウッディを温かく見守っている姿にも、四半世紀の熟成が感じられる。

 あらゆる世代が対象となるアニメーションだけに、新規性と安定感の同居が求められる。それだけに、これはきわめて困難なチャレンジだったと思うが、間違いなく「新しい扉」を開けた。

 シリーズの原点に立ち返るだけでなく、これまでの全作すべてを引き受けて、なおも超然としているような輝きがある。全世界の映画観客が、どう反応するのか。いまは、それが楽しみで仕方がない。
(文/相田冬二)

関連写真

  • ウッディ&ボー・ピープ(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • ウッディとフォーキー『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
  • 『トイ・ストーリー4』7月12日公開(C)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

提供元:CONFIDENCE

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