ハリウッド新作『ゴジラ』、日米“ゴジラ観の違い”を超越するか?
『シン・ゴジラ』の米国での評価
とくに、数多い登場人物の台詞が交差する演出のため、俳優の顔と声が一致しない米観客にとっては、人間関係を把握することはもちろん、今誰が話しているのかを追うことすら難しい場面もあっただろう(筆者も英語字幕・吹替で観たために、俳優になじみがあっても、台詞を追うのに精いっぱいで、映画のムードに入り込むのに時間がかかった)。国家的危機への向き合い方、政府組織や指令体系、文化、慣習、社会性など、さまざまな面で日本的と位置付けられてもいた。
もちろん、それこそが同作の魅力のひとつであり、日本の観客に響いたポイントでもあるだろう。米同時多発テロを扱った作品が、米国と世界では違う温度差で感じられるのと同じように、震災後の日本の魂を含んだ作品に、同レベルのユニバーサル・アピールを求めるのはナンセンスだ。ただ、米国の観客にとって、距離感が遠く感じられたことは確かだろう。
ハリウッド新作『ゴジラ』への期待値は?
さらに、「昔のゴジラ作品と言えば、人間の存在感が欠かせないのに、最近のゴジラ映画には印象に残る人間キャストが(渡辺謙のほかに)いない。だからこそ、ミリー・ボビー・ブラウン、ヴェラ・ファミーガ、カイル・チャンドラー、そして再登場の渡辺に期待」といった声も複数ある。
『シン・ゴジラ』が日本列島の絆を斬新に描いた一方で、米国ではやはり、「巨獣の迫力アクション」と「家族の絆」を押し出したハリウッド・スタイルが期待されているのかもしれない。そのカギを握るミリーは、自身が主演するNetflixの大人気シリーズ『ストレンジャー・シングス』のシーズン3配信が控えている大注目女優であるため、かなりの看板になるはずだ。