(更新:)
ORICON NEWS
『シン・ゴジラ』大ヒットで“エヴァの呪縛”から解放された庵野秀明
また、シネコンでの1日の上映回数も非常に多く、さらに4DX、IMAXといった、鑑賞料金の高いプレミアムシアターで観たいという声も高まっていることから、1989年以降に製作された『ゴジラ』シリーズの中では最大のヒット作となった1993年の『ゴジラVSモスラ』(配給収入22億円=推定興収38億円)、さらには1998年に制作されたハリウッド版『GODZILLA』(配給収入30億円=推定興収50億円)を超える興行成績も期待されている。
◆『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』製作でうつ状態になっていたことを告白
『エヴァンゲリオン』シリーズは庵野の人生観が色濃く反映された、というよりも庵野そのものと言うべき作品であり、それゆえに作品が完成するたびに完全燃焼を繰り返してきた。しかし、2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』第1作公開からおよそ9年という歳月を経て、いまなお未完のプロジェクトとなっている『新劇場版』に対するファンの飢餓感は、『序』『破』『Q』と作品を重ねるごとに高まっている。それゆえ、庵野が公のイベントなどに登場するたびに、「そんなことよりも早くエヴァの新作を」というファンからのプレッシャーの声が起こるのは、ある種の恒例行事のようになっていた。
もちろん『エヴァンゲリオン』の制作を中断して『シン・ゴジラ』の監督を受ければ、エヴァの新作を待ち望むファンからの集中砲火を浴びることは必至。庵野自身、最初はそのオファーを「エヴァもあるし、できません」と固辞したというが、盟友・樋口真嗣監督らの説得によりオファーを受けることを決意。その理由を「エヴァ以外の新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない状態を実感し、引き受ける事にしました」と説明。その切実なコメントからも、まさに不退転の決意で本作に向きあったことが分かる。
アニメではなく“実写映画”ヒット作を手に入れたことで次作制作を留保
しかし、実際にふたを開けてみれば、そこには『エヴァ』ファンの飢餓感を満たすような作品世界が展開されており、そこに『エヴァ』との共通点を考察する熱狂的なファンが続出。いまだ未見の人たちのなかには『シン・ゴジラ』に疑心暗鬼な層が少なからずいるものの、庵野をめぐる状況は好転しているようにも見える。
(文:壬生智裕)