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(更新: ORICON NEWS

長谷川博己、『シンゴジラ』で感じた成長物語「問題作になるだろうな」

12年ぶりに日本で復活を遂げるゴジラシリーズ最新作『シン・ゴジラ』。3.11後の現代日本に、シリーズ史上最大の体長のゴジラが出現!? 未曾有の危機を、いまの日本を生きる人々はどう乗り越えるのか?「現実 VS 虚構」(現実にニッポン、虚構にゴジラ)というキャッチコピーの現実パートを担うのは、主人公・矢口蘭堂率いる日本政府のゴジラ対策チームの面々。国家を率いるリーダー・矢口を演じた長谷川博己に、世界でも類をみない空想特撮エンタテインメント誕生の舞台裏について聞いた。

問題作になると思ったけど幸せな気持ちになった

――前作から12年ぶり、満を持しての『シン・ゴジラ』です。庵野秀明総監督が手がけた脚本を読んだとき、どのような衝撃を受けましたか?
長谷川博己すごい発想だなと。問題作になるだろうなとは思いましたけど、なんだか僕は幸せな気持ちになったというか。専門用語も多くて、一度読んだだけでは解らないこともあったのですが、何度も読み返していくうちに脚本の深さを感じて、これを演じられることにうれしくなりました。
――本作で、長谷川さんが演じた矢口蘭堂は、内閣官房副長官を務める政治家です。社会的側面を担う役どころを、脚本からどのように造形していったのですか?
長谷川博己30代後半で、内閣官房副長官というポジションに立っていることに、まずこの人の独自性があると思いました。衆議院議員を2期以上経験していて選ばれればなれるのですが、ベテランの政治家やライバルが多くいるなかで普通はそのポジションに30代で就くことは難しいんです。そのリアリティを、何とかして持たせなきゃいけないという気持ちがありました。矢口とはどういう人間なのか? とことん追求していかなきゃいけないなって。
 矢口には、正義と国を守りたいという政治家としての熱い気持ちがあると思います。だけど最初に脚本を読んだとき、矢口の雰囲気が淡々としていたというか、ドライな印象を受けました。感情の起伏が全く感じられなかったんです。でも、こういうキャラクターだからこそ、あのポジションに立てたんじゃないのかなって。存在していないようで、存在しているというか、いわゆる無色な感じからスタートして、ゴジラという脅威やさまざまなものと出合い、だんだんといろんな色に変わっていく。そんなイメージで演じていったら、おもしろいんじゃないかと思いました。
――リアルを追求するという点では、ゴジラという大怪獣と対峙する役どころを演じるにあたって、特別な心がまえは必要でしたか?
長谷川博己どの作品も、基本的には一緒です。演じるうえで、その世界観にうまく染まれるようにしたいと思っています。脚本によって、いろいろなパターンを使い分ける感じですね。脚本からどういうことを求められているとか、こういう役にしたいんだというところを見極めていく。今回は、ゴジラがメインですから、矢口と同じく、出過ぎないようにしようとは思っていましたね。それが矢口にもつながっていくのではないかと、正直、思っていました。

庵野秀明総監督との細かい確認の積み重ねで作り上げた

――役作りのうえで、庵野総監督とはどのようなやりとりを?
長谷川博己政治家にとって大切なのは、人とどういうふうにつき合うかという人間関係、社会性だと思うんです。ああいうポジションにいれば、上からの反発もあるだろうし、足を引っ張られることだって当然ある。そういう政治家の人たちの、基本的な人と人との関係性がよくわからなかったんです。公の場で会議室とかで座っている様子くらいしか、僕らには見えないですから。誰に対して命令口調で、誰に対しては敬語なのか、実際のところがわからなかった。
 例えば市川実日子さん扮する環境省の尾頭(オガシラ)ヒロミをはじめ、専門家たちが官邸にやって来たとき、矢口はどういう対応をするのか? 脚本にはわりと威圧的なセリフが書かれていたんですが、そんなに政治的な口調でものを言うような人間だとしたら、矢口は周りからどう思われているんだろうか? あのポジションに立つ人間って、それほど威圧的ではないんじゃないか? という話を庵野さんにしたら、「じゃあ、そこは敬語でいこうか」とか。そういう細かい確認の積み重ねで、矢口の人物像を作っていったところがあります。
――ゴジラ対策を指揮する矢口と、専門家たちのチームワークの良さに、日本人ならではの醍醐味を現場で感じる部分はありましたか?
長谷川博己ありました。この作品は“みんなでやっていこう”という日本のチームワークが、ひとつのテーマなんでしょうね。あとは、現場に出ている人がいちばんエラいという現場主義。『七人の侍』(『ゴジラ』第1作目と同じ1954年に公開)も、チームを作って、ひとつのものに立ち向かっていった。あれって日本のスタイルなのかなって。照れ臭いんですけど、日本の良さというのは、もしかしたらそこにあるんじゃないかなという気にはなりました。変に個人主義とか、それぞれがっていうことよりも、みんなで力を合わせて、何とか乗り越えていく。それが日本のパワーなのかなって。「チームワーク」とか「一生懸命がんばる」とか、表層的にも聞こえるんですけど(苦笑)、それが大事なのかなと思います。
――「この国はまだまだやれる」という矢口のセリフには、いまを生きる全ての日本人を牽引していくような力強さを感じましたが、長谷川さんはどう解釈しましたか?
長谷川博己国民側にいる政治家だなと、僕は捉えていました。そこに関しては(竹野内豊扮する)内閣総理大臣補佐官の赤坂秀樹は、多少の犠牲は厭わない現実主義者。対して、矢口は理想主義者ですよね。そういう意味ではわりと、市民や国民の側に立っている政治家というつもりでした。

庵野秀明総監督も意図していなかった“成長物語”?

――瓦礫の前で、ひとり祈りを捧げる矢口の姿も印象的でした。あのシーンのとき、庵野総監督はどのような演出をしたのですか?
長谷川博己「これを見てどう思うか? 好きにやってください」と言われました。でもセットとはいえ、すごい迫力で。何かいろいろと思い出してしまって……自然に祈りを捧げたくなるような感じでした。矢口という人間は、純粋で熱いですよね。それは演じていくうえで、だんだんとそうなっていきました。庵野さんが「成長物語になったね」と言っていたのは、もしかしたら庵野さんもそれは意図していなかったのかもしれないですね。

――「矢口の成長物語」と言われたのですか?
長谷川博己撮影の後半に「これは矢口の成長物語かもしれない」って。わりと順撮りで撮っていったので、次々と危機に直面していくうちに、矢口はそうならざるを得なかったのかもしれない。(矢口)本人も“成長なんてしない、十分俺は成熟している”と思っていたのかもしれないけど、最終的にはいちばん未熟だったことに気づかされていく。矢口の最後のセリフは、庵野さんの書いたセリフだなと感じました。
――本作のヒーロー・矢口の、もとい長谷川さんの目に、今回のゴジラはどう映りましたか?
長谷川博己チャームポイントがなくなってきましたね。今までのゴジラは、人がなかに入っていたこともあって、少し人間味のようなものを感じて、そこがチャーミングだったりもしたんですけど、今回はフルCGで作っていることが、無機物でできていることを一層感じさせるというか。そこには、いろいろなアンチテーゼがあるような気もしますけどね。レニ・リーフェンシュタールが(アドルフ・)ヒトラーを神格化して撮ったプロパガンダ映画(『意志の勝利』)を観ると、ヒトラーがすごく魅力的に見えるんですよ。それと同じような、ヒールに惹かれる心理に似ているのかも。すごくカッコいいなと思ってしまうんだけど、そう思ってはいけないような気持ちもあって……。

――第1作をも彷彿とさせるようなコメントですね。最後になりましたが、幼い頃“特撮の父”といわれるレイ・ハリーハウゼンの作品が大好きだったという長谷川さんの『ゴジラ』シリーズについてのご印象をお聞かせください。
長谷川博己僕は、昔のシリアスな方が好きかもしれないですね。古臭い人間なのかもしれないな(笑)。でもいわゆる古臭いものを継承してやっていく人も必要ですから。僕はそれをやり続けていきたい。そういうものに興味を持ち続けたいですね。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

シン・ゴジラ

 東京湾アクアトンネルが巨大な轟音とともに大量の浸水に巻き込まれ、崩落する原因不明の事故が発生。首相官邸では総理大臣以下、閣僚が参集されて緊急会議が開かれ、「崩落の原因は地震や海底火山」という意見が大勢を占めるなか、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)だけが、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘した。内閣総理大臣補佐官の赤坂秀樹(竹野内豊)をはじめ、周囲は矢口の意見を一笑に付すものの、直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。“ゴジラ”と名付けられた巨大不明生物と、自衛隊との一大決戦の火蓋がついに切られた。

脚本・総監督:庵野秀明
特技監督:樋口真嗣
出演:長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ
2016年7月29日(金)全国東宝系公開 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
【公式サイト】(外部サイト)

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