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是枝裕和監督、パルムドール受賞からNo.1ヒットへ高まる期待

 是枝裕和監督の最新作『万引き家族』(6月8日公開)が、『第71回カンヌ国際映画祭』で最高賞のパルムドールを受賞した。現地時間5月19日に開催された授賞式のステージに立った是枝監督は「ここを目指す若い映画の作り手たちと分かち合いたい」と力強くコメントした。

カンヌ7度目の常連監督が噛みしめる栄誉と責任

 今回で7度目のカンヌ国際映画祭となった是枝監督。これまでに、01年に『DISTANCE』でコンペティションに出品してから、04年に『誰も知らない』で柳楽優弥が男優賞、13年に『そして父になる』で審査員賞を受賞。そして、7作目となる『万引き家族』で、3度目の受賞にしてついにパルムドールの栄冠に輝いた。

 日本映画の受賞は、97年の『第50回カンヌ国際映画祭』での今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶり。ここ数年、毎年のように招待され、カンヌ常連となっていた是枝監督だが、受賞スピーチでは「さすがに足が震えています。この場にいられることが本当に幸せです」と世界三大映画祭での最高賞受賞の栄誉と責任を噛みしめている様子が見られた。

 これまでの作品でも、家族のあり方とその人間ドラマにフォーカスし、さまざまな角度から社会とのつながりを描いてきた是枝監督だが、今作は「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」とする渾身作。年金と万引きでひっそりと生活する貧しい家族が、ある事件をきっかけにその絆を引き裂かれ、社会からの容赦ない批判の矢面に立たされながら、それぞれが抱える秘密と切なる願いが明らかになっていく物語。そんな家族の姿を通して、豊かな現代社会の隅に追いやられてしまっている人たち、そこに生じる社会のひずみ、生々しい人間の感情を映し出している。

 そんな今作は、カンヌの心をしっかりと掴んだ。公式上映での観客、海外メディアの評価は非常に高かったほか、受賞結果発表後の審査員たちも「演技、演出、撮影など総合的にすばらしかった。選考は難しかったが、最終的に(審査員の)意見が合致した」(ケイト・ブランシェット)、「私たちに深い感動を与えてくれた。とにかく恋に落ちてしまった。上品かつとても深くすばらしい。魂をわし掴みにされた」(ドゥニ・ヴィルヌーブ監督)と口を揃えて絶賛した。

米映画業界誌も太鼓判 メインストリーム映画へ

 家族の人間ドラマを描いた3作で、同映画祭3度目の受賞となった是枝監督だが、この先、手がけていく作品については「今作の受賞によって、家族ドラマの作家という捉え方がますます強くなってしまうかもしれませんが、自分ではそうは思っていません。年齢を重ねて自分が変化していくと、いろいろな家族の形を見つけたり、また、見えてくる形も変わっていきますので、決して同じことを繰り返していくのではない。60代、70代になったときに、また違う家族のドラマが作れると思う」としながら、「(今回の受賞は)監督として本当に重い出来事で、この先、パルムドール受賞監督として恥ずかしくない作品をまた作らなければならないという覚悟を新たにしています」と次への決意を語った。

 一方、興行収入で見ると、是枝監督のカンヌ選出作のなかで10億円を超えたのは、『そして父になる』(32.0億円/13年)『海街diary』(16.8億円/15年)の2本のみ。昨年の『第41回日本アカデミー賞』で最多6部門(作品賞、脚本賞、監督賞ほか)を受賞した『三度目の殺人』(17年)も14.6億円。是枝作品に限らず、昨今の日本映画シーンにおいては、漫画原作などのエンタテインメント大作以外の邦画実写で20億円を超える大ヒットは極めて少なくなっている。

 しかし今作は、パルムドール受賞という大きな話題を巻き起こしたすぐあとの絶好のタイミングで公開される。米映画業界誌『Variety』は「チャーミングでもあり、胸が張り裂けるようなこのすばらしく巧みな作りの映画はアート系のファンだけでなく、メインストリームの観客の心も掴むだろう」と評していた。従来のファンに限らず幅広い層へのアプローチが予想される今作は、是枝作品No.1ヒットへの期待が高まる。

『万引き家族』

6月8日(金)全国公開
配給:ギャガ 【公式サイト】(外部サイト)
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

提供元: コンフィデンス

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