ディズニー、独自パッケージ戦略のこれまでとこれから
日本市場にマッチングした日本のみのパッケージ
「商品を1つにしたことで、販売店は管理しやすくなりましたし、お客さまにとってはわかりやすくなったのが大きいと思います。加えて、パッケージソフトの商品化には2ヶ月前にはマスターコピーを完成させないといけないのですが、映像特典などにおいてその時間的な制約がなくなるぶん、MovieNEXならではのプラスアルファのコンテンツをデジタル提供できるようになったメリットがあります」
商品を一本化したことで盤種が減るぶん、トータルの売上ボリュームは多少減ったようだが、ユーザーへのさらなる高付加価値を提供することが満足度を高めることにつながり、それを上回るメリットがあるとする。それにより、廉価版などの価格競争に舵を切る必要がないのもMovieNEXの戦略の1つだ。ただし、この成功は、ディズニー作品のコンテンツ力があればこそ。他社が容易に追随できないのもそこだろう。
「創業者のウォルト・ディズニーは、クオリティーにこだわってイノベーションを続けてきた人。そのDNAが、戦略として普遍的に会社に根付いているということはあります。ディズニーだけでなく、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズというすばらしいブランドが加わったことで、『質の高い作品を作ることこそが最良の戦略』となることがより明確化してきました。それが何よりもディズニーが他の会社とは違うところ。MovieNEXは日本のみのパッケージサービスですが、日本市場にマッチングした商品をしっかり提供できているということでもあります」
パッケージとSVODは競合する位置付けではない
「この先もデジタルで映画を観る人が増えていくのは間違いないですが、パッケージがなくなることはないと思っています。やはり大切な商品を手元に置いておきたいという欲求がなくなることはありませんから。たとえば、新しい映像体験という意味では『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の4K UHD版は、想定よりもはるかに多く売れています。『スター・ウォーズ』や『マーベル』シリーズのコアファンは男性が多いのですが、男性の方が映像パッケージに対する要求は高く、手元に置いておくならより良いものを持っておきたいという意識があるようです」
そういった状況のなか、今後もMovieNEXはSVODサービスと共存していくのだろうか。
「両者はリリースタイミングが異なります。SVODの場合、新作をすぐに観られるわけではないですから。ただ、定額でいつでも観たいときに好きな映画を観られるのは、とても良いことだと思います。そういう意味で、パッケージとSVODは競合する位置付けではありません。DVDを持っていても、その映画がテレビで放送されていたら観てしまうのと同じです。今はSVODでしか観られない映画やドラマも配信されていますが、お互いに映画に触れる接点を増やしているという点では、共存する道はあると思います」
井原氏はディズニーに入って10年。テレビマーケティング、ライセンス管理、スタジオ部門での新作映画宣伝といったキャリアを経て、現在の職責となった。
4月25日に発売された最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』も大ヒット中。長いシリーズだけに親子二代で楽しむファンも多く、そういった世代をまたぐユーザーにも、フィジカルとデジタルが1つになっているMovieNEXは好評のようだ。
(文:壬生智裕)
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
(C)2018 & TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.