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“退職代行サービス”に問題は?「辞めたいなら代わりを探せ」「有給は使わせない」トラブル続出の退職時の盲点を弁護士が解説
トラブルが頻発する退職時、「まともな業者であるほどそれ以上の対応ができない」
「第一に考えられるのは、2〜3万円で引き受けてもらえるなど、費用が比較的安いからでしょう。また、従来の終身雇用、年功序列型の賃金制度というのは崩壊しつつありますし、転職してキャリアアップするという考えも一般化してきているので、退職自体がそれほど重大な意味を持たなくなっているというのもあると思います。退職代行サービスを利用する方の状況はそれぞれです。何度も退職したいと伝えているのに辞めさせてもらえない方、介護、看護、保育など人手不足の業界で『残った人や利用者に迷惑をかけられない』との責任感から退職を切り出せない方、退職自体はできそうだけれど、誰かが間に入ってくれるならその方がよいと考える方。自分から言えないだけであれば、こうしたサービスを使うのも良いと思います」
――ただ、切羽詰まるまで追い込まれているとなると、会社側にも問題があり、そう簡単にはいかないように思えますね。
「『退職は認めない』『シフトを組んでしまったので、すぐに辞められては困る』『資格者がいないと営業できない』『辞めたいなら代わりの人員を探して来るように』『引継ぎのためにあと2ヵ月は出勤してもらう』『昔起こした事故の修理代を払い終わるまで辞めさせない』など、退職自体を拒否されることもありますし、『退職で迷惑を被るから有給は使わせない』『退職関係書類は出さない』『最後の給料だけ手渡しにする』など、退職以外の問題が絡んでくる状況もあります。ですから、本当に全部まとめて交渉してほしいならば弁護士一択となります」
――ちなみに、弁護士事務所に退職の相談に来る人はどのような方ですか?
「様々ですが、新卒の方の場合は親御さんが同席することもあります。また、『入社〇年以内に辞めるなら損害賠償を請求する』と会社に言われ、辞められない方も法律事務所を訪れます。ただ、本当に賠償しなければならないかといえば、そんなことはありません。弁護士が間に入った途端、損害賠償の話をしてこなくなったり、当初は会社側が息巻いていても、法的な説明をした上で『一度、御社も弁護士に相談したらどうですか?』と対応すると、大半がその話は二度としてこなくなります」
――そうした会社との間の交渉も民間業者ではできず、弁護士または労組となるわけですね。
「民間業者の問題点については、先に述べたとおりですが、辞められないまま過労で心身を病んでしまい、次に働くことができなくなってしまったという方も多く見てきているので、個人的には、ここはまずいなと思ったら、民間業者を使ってでも早急に辞めるためのアクションをすべきだと考えます。ですが、トラブルが起こったとき、まともな業者であるほどそれ以上の対応ができないのはたしか。費用の安さから民間業者を使っても、結局は弁護士に相談する方もいるのです。そうなると、手間も費用も増えてしまうので、ご自身と会社の状況を考えて、できれば最初から弁護士に相談するのが良いと思います」
(文:衣輪晋一)
監修者 島田さくら
弁護士、アディーレ法律事務所所属。 『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)、『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)など、メディア出演多数。