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「街のTシャツ屋」を脱却したグラニフの現在地 “グラフィックを資産にNFT市場へも参入”
「強みは何か?」に立ち返り 創業20周年を機に大幅リブランディング
創業20周年を迎えた2021年にはロゴを「graniph」へと刷新。取り扱うアイテムもTシャツのみならず、ファッション雑貨や生活雑貨、ステーショナリー、アウトドア雑貨、コスメなどへと広がっている。同年にブランドディレクターに就任し、リブランディングを牽引してきた勝部健太郎氏は「グラニフの資産はグラフィックです」と明言する。
「Tシャツストアとして認知していただいてきたグラニフですが、私たちが提案したいのはファッションではなく『グラフィックのある豊かな暮らし』。Tシャツはキャンバスであるという考えに基づけば、グラフィックを表現するためのキャンバスは無限に広がります。創業20周年から先のさらなる成長を目指すにあたり、そうしたグラニフの原点を強化するべく、シンプルかつ広義な意味合いを含む『graniph』というロゴを採用しました」
「調査によるとグラニフというブランドを認知していなくても、コントロールベアは好きだというお客さまも実はけっこう多いんです。そうした消費行動からも、お客さまが買ってくださっているのはプロダクトではなく『グラフィックの価値と好き』であることが窺えます。自社IPを持っていることは弊社の強みの1つであり、リブランディング後には人気キャラクターの育成の強化にも取り組んできました」
増えすぎた自社キャラクター セグメントと育成で1億円プレイヤーも誕生
「リブランディング後に取り組んできたのが、20種類に絞り込んだキャラクターの育成プロジェクトです。グラニフにはいろんなキャラがいるけれど、『じゃあグラニフと言えば?』といったときにパッと思い浮かぶキャラクターを育てたい。そのために重視しているのが、キャラクターの世界観を的確に落とし込むキャンバス(=プロダクト)のチョイスです」
具体的な商品群を見てみよう。たとえばグラニフで人気ナンバーワンのキャラクター・ビューティフルシャドーは、長い手足で縦横無尽に動き回るイタズラ好きの不思議な生き物。モノトーンのデザインは多彩なプロダクトにフィットするが、中でもアウトドア雑貨やアパレルはその自由気ままなキャラクター性まで表現しているようだ。
さらに7月には絵本『ぷかぷか_メンダコ』が販売開始する。グラニフのキャラクターを原作とした絵本はこれで第3弾目。書店でも取り扱われることで、これまでグラニフと接点のなかったユーザーとのコミュニケーションも生まれているようだ。
「弊社の1つ1つのキャラクターは単なるイラストではなく、明確な世界観やストーリーを持って生み出されています。とは言え、プロダクトだけではそのストーリーの深い部分までお伝えできていませんでした。絵本というキャンバスに落とし込むことでストーリーがさらに膨らみ、新たなプロダクトが生まれるといった好循環も生まれています」
キャラクターを絞り込んだ重点育成の取り組みは確実に成果を出しており、今ではコントロールベア、ビューティフルシャドー、ラムチョップ 、ナガスギルイヌの4キャラクターが年間1億円を超える売上を達成するようになった。
「中でも弊社で最も長く愛されているコントロールベアとビューティフルシャドーは、グラニフの原点であり未来。これからまったく新しいブランドに生まれ変わろうとしている、その指針を示している存在です」
親和性の高い「テクノロジー」を掛け合わせグラフィックの未来を目指す
「NFTアートへの参入は明確にグローバルへの訴求を狙ったものです。第1弾として『コントロールベア』を選定したのは、デザインから世界観まで極めて日本のポップカルチャー感を醸しているキャラクターだったから。今年6月には『コントロールベア』の15周年を記念して3DスニーカーNFT10点を販売し、こちらも完売しました。7月にはグローバルのNFT界隈で話題となっている“ダイナミックNFT”(※動的に変化や進化するNFT。NFT発行後も、特定の条件に合わせて表示仕様を変化させられる技術)を販売します」
たしかにグラフィックとアートとの親和性は高い。それにしても“街のTシャツ屋さん”からのあまりに大胆なシフトチェンジ。グラニフはいったいどこへ向かっているのか。
「もちろんお店でプロダクトを手に取ってくださる顧客と向き合う“現在”はとても大切です。それと同時に“未来”への道標を示し、実行していかないと会社というのはなかなかそちらに向かって進んでいかないものです。グラニフが目指す未来の姿は、グラフィックとテクノロジーを掛け合わせたまったく新しいブランドです」
今年6月からは新たなスローガン「GRAPHIC IS MY LIFE.」を掲げ、社是である「グラフィックのある豊かな暮らし」をより明確に打ち出している。
「このスローガンはお客さまに向けた発信である以上に、社員への意識付けでもあります。このプロダクトは『GRAPHIC IS MY LIFE.』にそぐわしいものであるか? 自分の接客は『GRAPHIC IS MY LIFE.』を体現しているか? そうした自問自答を繰り返すことで、グラフィックを軸としたグローバルで通用するジャパニーズポップカルチャーの会社へと成長していきたいと思っています」
(取材・文/児玉澄子)