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サンリオ新キャラクターなぜ“おばけ”? 近年の「カワイイ」はデザインと“共感”から生まれる
頑張っても報われないことも…「努力した事実」を褒めてくれるキャラクターが1位、内面や世界観に支持
はなまるおばけ(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
今回、初めて開催された『NEXT KAWAII PROJECT』とは、「第2のハローキティやシナモロールになれるようなニュースター」をユーザーの応援で決めるプロジェクト。サンリオといえば、毎年開催される『サンリオキャラクター大賞』が有名だが、投票するのが既存のキャラクターでない点が特徴。ユーザーが投票することで、まったく新たなキャラクターをデビューさせることができるという、昨今ブームの“推し活”のようなシステムだ。
同プロジェクトでは、社内で応募のあった120以上のキャラクターから、まずは社内投票で上位25キャラクターがエントリー。ユーザーによる「デザイン投票」「動画投票」「グッズ投票」という3つのステップで審査され、その期間は約10ヵ月に及んだ。
「はなまるおばけは、『NEXT KAWAII PROJECT』がテーマにしていた“共感性”にまさにハマったキャラクターでした。昨今の人気キャラクターはデザインの可愛らしさだけでなく、内面や世界観も含めて支持される傾向があります。こうした時代性というのは意識しなくても常に入ってくるもので、たとえば『ぐでたま』であれば“だりぃ”などやる気の無さへの共感、『ポムポムプリン』はゴールデンレトリバー人気、『コロコロクリリン』はハムスターブームなどが影響して生まれてきました」(『NEXT KAWAII PROJECT』担当者・池内慎一朗さん)
今回1位となったはなまるおばけは、頑張った“あなた”にハナマルをくれる不思議なおばけ。動画でも、テスト勉強を頑張ったもののいい点数が取れず、落ち込んでいる女の子のストーリーが描かれた。はなまるおばけは女の子に気づかれないようそっと答案用紙に近づき、小さな体で一生懸命ハナマルを描くのだ。
「SNSで他人と自分を比較しがちな今の時代、過剰に自分を低く評価してしまっている人って多いと思うんです。求められる能力はどんどん上がっているし、頑張っても報われないこともある。だけど頑張ったことそのものは尊いはず。そこを褒めてくれるキャラクターがいてくれたら──。そんな私自身の願望を投影したのが、はなまるおばけでした。個人的な思いに共感してくださった方がたくさんいたことが、何よりもうれしかったです」(デザイナー・Misatoさん)
なぜ“おばけ”?「お星さまになった大切な人、素敵な思い出…」 形ない“概念”をキャラクターに
古今東西さまざまなおばけキャラクターがいるが、上記のとおりエンタテイメントコンテンツから生まれている場合が多く、独立したキャラクターは意外にあまりいないようだ。サンリオにとっても、おばけそのものを模したキャラクターは稀で、多くが動物モチーフだったりする。なぜ今回、あえておばけのキャラクターを選んだのか。
「はなまるおばけは、デザインより先にコンセプト から生まれたんです。 まず、“身近に潜む何か×癒し”をキーワードにしたいと思い、それならば“おばけ”かなと。ただ、おばけであるというのは一つの要素にすぎないんです。頑張っても報われない経験を持つ人、自己肯定感が下がってしまった人に寄り添う…そんな方向性を見つけて、詰めていきました。こうして生まれたはなまるおばけは、『頑張った人にこっそりハナマルをつけてくれる』キャラクターであり、いつも近くで見守ってくれる存在。たとえば、お星さまになった大切な人、遠い昔の素敵な思い出とか、そういった形のない“概念”みたいなものなんじゃないかなと考えたんですね。だから、はなまるおばけはみなさん一人一人についていて、その人の思いを映し出しているものなのかなと思います」(Misatoさん)
キャラクター解説によると、「おばけたちはみんなの近くに潜んでいて、人それぞれ違ったコがついているらしい」という。おばけがモチーフであればそれもたしかに腑に落ちるが、ユーザーごとに違い、一緒に創作できる自由な余地があるという点でも、新しいキャラクター像だ。
「はなまるおばけという種族がいて、その概念を具現化したのが『まるまる』というコです。癒しの意味も込め、ふわふわで柔らかそうなフォルムをデザインしました。アイテムの赤鉛筆はどこかからピュッと取り出すのですが、その辺の都合のいい感じもおばけならではなのかなと思っています(笑)」(Misatoさん)
頑張っているすべての人のそばに、自分だけのはなまるおばけがいる──。キャラクターとしての可愛らしさに加えて、自分の心の柔らかい部分を託したり、メッセージ性を込めたりできるのも、はなまるおばけが“概念”であるからにほかならない。