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キティの顔も微妙に変化? ぬいぐるみ50年の変遷、男性や海外からの需要も…推し活やSNSが影響
多様化する推しキャラクター、ここまで多くが“スタンダード入り”したのはサンリオ史上初めて
「そのほかにもマスコットホルダーやぬい撮り用のドール、シーズン商品などさまざまな衣装やポーズ、カラー、サイズのぬいぐるみ商品を展開していますが、その中でも『スタンダードぬいぐるみ』は、キャラクターそのものであり“素”の姿。キャラクターとの最初の出会いを提供し、その後もずっと寄り添う存在になってくれることを願い、複数年にわたって変わらない姿で販売しています」(サンリオ 企画部・伊藤志乃さん)
サンリオでは70年代よりぬいぐるみを商品展開しているが、『スタンダードぬいぐるみ』という位置づけができたのは2007年から。以来、数年に一度リニューアルが行われており、現行商品は2022年6月から販売されている。
現在のラインナップはハローキティ、マイメロディ、シナモロール、クロミ、ポムポムプリン、ポチャッコ、ハンギョドン、けろけろけろっぴ、バッドばつ丸、タキシードサムの10キャラクター。サンリオにはそのほかにも数多くのキャラクターがいるだけに、“スタンダード入り”はまさに選ばれし者の証だ。
「少し前は一部のキャラクターに人気が集中していましたが、昨今は嗜好の多様化で『サンリオキャラクター大賞』でも投票が割れるようになりました。これだけ多くのキャラクターが“スタンダード入り”したのも、サンリオ史上初めてののこと。また海外需要もあり、国外出荷やインバウンド需要を想定し、『スタンダードぬいぐるみ』にはキャラクターの“自己紹介”を英語表記したタグもついています」
肉球があったりなかったり? デジタル化できないアナログのこだわり
「たとえばキティのスタンダードぬいぐるみも、一世代前は目が茶色で赤いオーバーオール。現行品は目が黒く、オーバーオールはピンクです。また大人っぽい商品が人気だった時代はぬいぐるみの顔立ちもややシャープな感じでしたが、最近はより可愛らしいベビーフェイス系が好まれる傾向があるため、目や頭を少し大きめに仕上げています」
こうした変化が付けられるのは流行もさることながら、“中綿で立体感を表現した布製の玩具”というぬいぐるみの特性によるところが大きい。
「通常、サンリオのキャラクターは平面のイラストでデザインされるため、ぬいぐるみなどの商品展開をする際には“立体化する”というステップを踏むことになります。ただし同じ立体の商品でも、樹脂製のマスコットは3Dモデリングで型を起こすなどデジタルに置き換えられる作業も多いのですが、ぬいぐるみの場合は今も昔もアナログな作業がほとんど。型紙はパタンナーさんがほぼ手作業で起こしています」
縫い合わせた布と綿の詰め具合で、どの角度から見てもそのキャラクターらしさを再現するのはまさに職人技。ただ最終校正は完璧に仕上がっても、量産にあたっては型で抜いたように完全に個体差なしに仕上げるのは素材の特性上、不可能でもあるという。
「ただ、そうした1体1体まったく同じではないというぬいぐるみの特性こそが、『世界にたった1つの私だけのキティ』みたいな愛着にも繋がっているのでは? と思うところもあります」(伊藤さん)
こいぬをモチーフとしたキャラクターのシナモロールは、くるんと巻いたシッポがチャームポイント。ほかにも、マイメロディには肉球があるがポムポムプリンにはない、ハンギョドンの足には水かきがある、ポチャッコの顔の下ぶくれには高度な技術が詰め込まれている…など、細かい部分までこだわっている。『スタンダードぬいぐるみ』で “素”の姿を見て、あらためてキャラクターの可愛らしさを再確認してみるのもいいだろう。