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ぺえが縛られた「オネエ」という役割、葛藤乗り越えたどり着いた先「傷や痛手もすべて財産」
「“頑張らなきゃ”の基準ばかり上がってしまった」、YouTubeで伝えたいこと
「メディアで求められる“オネエとしての役割”を意識することをやめてから、改めて本来の自分の言葉が出るようになりました。今は原宿のショップにいた頃に近い感覚かもしれない。あの頃だって、別に悩み相談に答えていたつもりはなく、ただ普通に会話を楽しんでいただけですから」
YouTubeでも、ただ自由に思ったことをしゃべっているだけ。それでもぺえの言葉一つ一つに「救われた」「明日も生きていける」といったコメントが並ぶ。
「YouTubeは、『とにかく頑張らないでほしい』ということを発信したくてやってます。だからスッピンだし、なんなら一番みすぼらしい自分の姿を映したい。今の時代、人々を頑張らせるコンテンツが多すぎるんですよ。もっと自分を向上させなきゃ、キラキラしなきゃ、キレイを目指さなきゃって。こんな不景気で暗い世の中なのに、“頑張らなきゃ”の基準ばかり上がってしまって。『もういいって』と誰かが言わなければ、みんなどんどん首を締めていくだけじゃないかと思います」
動画はただ始まり、ただ終わっていく。YouTubeには付き物のオープニング／クロージングや、「登録お願いします」といった呼びかけもない。
「次の動画も見たい、といった名残惜しさも残したくないんです。『もういいから寝なよ』と伝えたいので。あと自分が最高の状態では撮らないですね。むしろちょっと落ちてるくらいのときのほうが、疲れてる人や苦しんでいる人と同じ距離感で言葉を届けられる気がします」
傷ついたことのない人なんかつまらない。傷があるからこそ人は優しくなれる──。YouTubeやエッセイ本『退屈の愛し方』には、そんなぺえの今の姿が映し出されている。
「だけど、メディアに呼んでいただいたあの数年間にはとても感謝しているんです。あの頃がむしゃらに突っ走ったからこそ、今の自分の活動があるわけで。だから、人生って本当に一筆書き。傷や痛手もすべて自分の財産なんだって、三十路を前につくづく思いますね」
（文：児玉澄子）
エッセイ『退屈の愛し方』
KADOKAWA 刊
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