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「自由に使って」社員1人あたり10万円支給 コロナ禍を社員と歩む社長の想い

共同カイテック株式会社 吉田社長

新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方は大きく変わり、企業のトップは危機管理能力が問われた。そんな中、東京・渋谷に本社を構える環境設備メーカーが正社員1人あたり10万円を特別支給した。昨年に続く2度目の支給という。「今年は増額した」と話す代表取締役社長の吉田建氏に、特別金支給への想い、コロナ禍におけるリーダーとしての気概を聞いた。すると、社員との面談やふだんのコミュニケーションを通して、仲間意識の醸成にも積極取り組んでいる姿勢が見えてきた。

コロナ格差を生まないための「現金支給」

「リモートワークのための環境整備費を支援する企業もありますが、職種によっては在宅勤務が出来ない場合もあります。例えば、当社の製造部門では出社しないと仕事になりません。また事務仕事でも経理など、対外的な書類を扱う部門では出社しなければ処理できない業務もあります。彼らに不公平となる支援はしたくなかったんです」

 2年続けての現金支給は、在宅勤務者と出社勤務者のどちらにも分け隔てなく対処したいと考えた結果と話すのは、「共同カイテック」代表取締役社長の吉田建氏。

 吉田社長の祖父が創業した同社は、オフィスビルなどの電力幹線システム「バスダクト」を主力に提供する。一般消費者には目に触れることの少ないオフィスビルのインフラを支える重要な製品・技術力が高く評価され、バスダクト事業においては国内で約7割のシェアを誇る優良企業だ。
  • 共同カイテックの主力製品「バスダクト(シャフトスター)」

    共同カイテックの主力製品「バスダクト(シャフトスター)」

  • バスダクト施工写真。安全に大電流を送ることができる。

    バスダクト施工写真。安全に大電流を送ることができる。

 2020年以降、同社ではリモートワークができるセクションは在宅勤務に切り替え、出社しなければ業務が遂行できない製造セクションは感染リスクを最小減にするべく勤務体制を見直したという。

「働き方が変わり、社員たちはそれまでにない不安とストレスを抱えることになったと思います。何か支援できることはないかと考えて慰労の意味を込めて、昨年1人あたり5万円の現金支給をしました」

 新型コロナのパンデミックの波で世界中が不安に陥っていた中、企業トップとして感染リスクからどう社員を守るか。これまで通りに事業が展開できるのか。あらゆる角度からの課題が一気に差し迫っていた時に、吉田社長はまず社員への経済的支援に踏み切った。こうした思いに応えるかのように社員も奮闘、業績は伸びた。その結果、2021年末には増額賞与まで社員は手にした。

「2022年になってもコロナ禍が続いていましたので、今度は思いきって倍増して10万円の支給をしました。『打倒!コロナ応援金』という名目でしたが、このお金は自由に使ってもらおうと思っていました。例えば感染対策グッズを揃えるためでもいいですし、現場に出て感染リスクのストレスを抱える社員には美味しいものを食べて体調を管理してもらうのもいいでしょう。使い方は社員任せです」

 社名にもなっている共同カイテック株式会社の「カイテック」は造語で、 その由来は企業使命に掲げている“人と社会に快適テクノロジー” にある。快適で仕事をしやすい環境づくりを提供している企業のリーダーだと聞けば、社員への応援金の発想も頷ける。

社員は仲間「400人以上の顔と名前を覚えています」

「社員は、仕事をする上での大切な仲間だと思っています」と、言い切る吉田社長。

 これが組織づくりの鉄則になっており、1人1人の社員がよりよい仕事することで企業成長につながると話す。実際、吉田氏が社長に就任して以来、社員採用の最終面接は必ずしているという。学歴や経歴だけでは判断できない人間性を重視しているからだ。

 さらに入社3年から5年目の社員を集めて実施される社長主催の研修合宿は、将来的に組織の中核を担う人材育成ととともに、社員同士の縦と横のつながりを強固にして組織内コミュニケーションを円滑にする効果をもたらしているという。そして3年ごとに社員と個別面談の機会をもうけているのは、社長就任時から仕事の仲間と話したいという吉田氏のこだわりだ。
  • 共同カイテック本社エントランス

    共同カイテック本社エントランス

  • 共同カイテック・綾瀬プラント

    共同カイテック・綾瀬プラント

  • 神奈川にある技術センター

    神奈川にある技術センター

「この2年のコロナ禍では、1人1人の社員面談は実現できていませんが、それまでは面談をして社員と話すようにしていました。面談といっても特にテーマもありません。中にはプレゼンをしてくる社員もいますよ(笑)。どちらかといえば、仕事の話よりもプライベートのことを話す社員も多いですね。例えば、結婚しますとか、子どもが生まれましたという話も聞きますよ」

 そこには社長と社員という垣根はない。敢えて言うなら同じ組織の中の仲間意識から生まれるさりげない会話に近い。現在、全国にある営業所は、北から仙台、神奈川、名古屋、大阪、広島、福岡だ。吉田社長は3年に一度全国を巡り、400人以上の社員の個別面談を実施して来た。だから、全社員の名前と顔はしっかりわかるという。

「今年は、面談も合宿もぜひやりたいですね」そういう吉田社長の声は、明るく響く。パンデミックにも負けない強力な組織を仲間とともに構築しながら、常に前向きな姿勢がこちらに伝わって来る。そのあたりがコロナ禍でも実績を上げているリーダーの気概なのかもしれない。

(取材・文/福崎剛)

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