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『鬼滅の刃』は本当に「怖いから観ちゃダメ」? カウンセラーが教える、子どもへの影響とは
※一部、ネタバレになる内容を含んでいます。
戦闘の生々しさは物語に必要、「単なる惨殺シーンではなく、『何をしたら死ぬのか』を描いている」
「鬼と人間の戦いの場面は確かに生々しいですが、それは『鬼滅の刃』の物語に必要なものだと考えています。本作の根底にあるのは、『命とはなんぞや?』というテーマだと思うんですね。主人公の炭治郎をはじめとする鬼殺隊の隊員は、生身の身体で鬼たちに戦いを挑みますが、ここで描かれる鬼と人間の姿こそが、“生と死”というテーマにつながっています。医療が進んだ現在は、『死ぬことは負け』と思われがちです。でも本当は、長生きすること自体がゴールではなく、『何をもって生きるか、人生の中で何を残すか?』が大切。そのことを『鬼滅の刃』は問いかけているのだと思います」
――死を克明に描いていることも、生と死というテーマを際立たせるために必要だと。
「そうだと思います。鬼殺隊は日輪刀で鬼の首を飛ばしますが、それは単なる惨殺シーンではなく、『何をしたら死ぬのか』を描いているんですよね。隊員や柱(鬼殺隊の頂点に立つ9人の剣士)たちも戦いで壮絶な死を遂げていきますが、それをリアルに表現することで、やはり『死とは何か?』というテーマに行き当たります。多くのヒーロー漫画、ヒーローアニメでは、殺された主人公が生き返ったり、転生したりすることがありますが、『鬼滅の刃』ではそうではなく、理不尽な死、無残な死であっても、そのまま描いています。これは、私たちが生きている世界でも起こり得ることですよね」
死生観が麻痺した子どもたち、親と子が話し合うきっかけになる作品
「『怖いシーンは見ちゃダメ』と隠すのではなく、しっかりと話をしてほしいと思います。現代の子どもたちは、死んでも何度でもリセットできるゲームなどの影響もあり、死生観が麻痺しがち。『鬼滅の刃』を親子で観て、『人間は死ぬ。だからこそ命を大事にしなくちゃいけない』『守ってあげなくちゃいけない』という話をすることは、とても大切だと思います。小学生以下の小さいお子さんの場合、“生と死”“死生観”というテーマをすぐに理解できるわけではありませんが、何年か経った後、『そういえばお父さんお母さんと映画を観たとき、そんなこと言ってたな』と思い出すこともあると思うんですよ。命の大切さや、仲間と一緒に頑張って生きることの素晴らしさについて、親子で話す機会はそれほどないですよね? 『鬼滅の刃』を一緒に観て、泣いて、ぜひ語り合ってみてください」
――アニメや映画を観て、お子さんが怖がっていた場合は、どう対処すればいいでしょうか?
「まずは、『どこが怖かったの?』と聞いてみましょう。小さいお子さんの場合、死への恐怖というより、『鬼に追いかけられるところが怖かった』『鬼にされたらイヤだ』ということもあります。それはもしかしたら、普段、その子が抱えている不安、成長の段階で訪れる親との離別への怖さが重なっているのかも。しっかり話を聞いてあげて、『怖くないよ』『お母さんが守ってあげるから』と不安を取り除いてあげれば大丈夫です」