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“ノスタルジックな日本”に思いを馳せるモデラー「古き良き時代をいつでも見られるという喜び」
朽ちていくものの向こうに、時間の流れやかつての姿を見る(ひなた)
ひなた写真集などで、古びた建物や置き去られた廃電車、壊れゆく廃墟を見た時に、とても惹かれるものがありました。その時感じた切なさや悲しさ、奇妙な懐かしさなどの、形にできない空気や気配のようなものを形にしたいと思い作るようになりましたね。
――代表作「光さす庭(軍艦島日給社宅)」は、リアリティーのある作りで、ただただその迫力に圧倒されました。本作を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
ひなたネットで偶然見かけた日給社宅の写真を見たことがきっかけでした。廃墟の光庭(中庭)に生い茂る木々にさしている光がとても美しく、どうしてもこの光景を作りたいと強く思いました。
――写真でみた「軍艦島」がモデルになっているんですね。どのようなストーリーをイメージして、制作されましたか?
ひなた朽ちていく建物と、光を浴びて伸びていくかつてはなかった緑の木々。今は誰も居ないのに、そこかしこに残っている以前暮らしていた人々の気配…。うまく言葉にできませんが、寂しいのだけれど寂しさだけではない、懐かしいような感じ。その儚さのようなものを上手く形にできたらいいなと思いながら制作しました。
ひなたまず最初に、「店の中の鏡を覗き込む猫」が思い浮かびました。そこから、イメージを膨らませ、本がたくさん並んだ昔どこかにあったような、ひなびた懐かしい雰囲気の古書店にしようと思いました。猫の映る鏡以外にも鏡を仕込んであるので、もし実物を見る機会があれば探してみてほしいです。
――テーマにされている、朽ちていくもの、荒廃したものの魅力はどのようなところでしょうか?
ひなた朽ちていくものの向こうに、それまでの時間の流れだったり、かつてそれが使われていた時の姿だったりが見えるところでしょうか。変わってしまった事って、寂しかったり悲しかったりするのだけれど、なぜだかそこに懐かしさだったり美しさも感じることができて、とても心惹かれます。
――最後にひなたさんにとって「ジオラマ」とは?
ひなた私にとってジオラマとは「もうひとつの言葉」でしょうか。口下手で自分の気持ちを人に伝えるのが下手なので、せめて作品からだけでも何かが伝わるといいなぁと思い、制作に臨んでいます。