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Netflixの自国言語字幕が話題、字幕へのこだわりが生む日本作品のグローバル化

 世界最大級のオンラインストリーミングサービスNetflix。日本では昨年、登録者数が300万人を突破。映画、ドラマ、アニメなどのほか、アカデミー賞獲得のNetflix映画『ROMA/ローマ』などオリジナルコンテンツにも定評がある。そんななか昨年、日本のSNSではNetflixでの自国言語に字幕をつける機能について一般ユーザーのコメントが反響を呼び、「古い邦画は劣化から何を言っているか分からないことがあるが理解できた」などその正確さについて声が集まった。Netflixはどのように字幕を制作しているのか。また、昨年末から独占配信されて話題の嵐のドキュメンタリーについても聞いた。

担当者も予想外の反応に驚き「意図しなかったうれしい反響」

 「日本で、弊社の字幕機能への評価が高いというのはとてもうれしい声」と話すのは、Netflixにおける作品の多言語化を担当するキャシー・ロクニ(Kathy Rokni)氏。「この場合における“字幕”とは、おそらく聴覚障がい者が作品を楽しめるように展開している、クローズドキャプションのことでしょう。セリフはもちろん、“(風の音が聞こえる)”などの状況説明がテキストで記されています。Netflixはさまざまな環境で利用されることを前提としています。例えばスマートフォンで鑑賞する場合、混雑して音がざわざわしているなかでは音声が聞こえにくい。そういった場合でもクローズドキャプションは活用されているようです」(キャシー氏)

 SNSではその正確なセリフ、正確な役名も賞賛されており、リプライでも「古い邦画で何を言っているか分からなかったのが理解できた」のほか、「クローズドキャプションという“文字”で見ることで、音声だけで鑑賞するより、より内容が理解できた」などのコメントがついた。ネット検索すると賛否両論でもあるが、いずれにせよ、作品内容ではなく、クローズドキャプションで話題になるのはかなり珍しい現象であり、オンラインストリーミングサービスではNetflixが初だ。

 キャシー氏は「正直、まったく予想しなかった反応」と感想を述べる。同じくSNSでは、こうした日本語のクローズドキャプションで日本語の勉強をしている外国人もいることが判明したが、これも「意図はしてなかった」と驚く。「実際にNetflixのクローズドキャプションや字幕で言語を習得できるというインセンティブを感じていただけるのであれば素晴らしいこと。エンターテインメントは、異文化への理解を深めるひとつの窓と考えています。私たちとしてもその動機づけ、多言語、多文化を知るためのきっかけの一つになれば非常にうれしいことだと思っています」(キャシー氏)

エンタメ作品は創造物の賜物、AI時代でも人間の“想像力”が不可欠

 ではその正確なクローズドキャプション、また字幕はどのように制作されているのか。キャシー氏は「反復作業」だと語る。

 「字幕の多言語化作業が始まる前段階から脚本を入手できる場合もありますし、映画や配給会社からライターが書き起こしたオリジナルのスクリプトを入手することもできます。ですが作品はいろんな形で書き換えが行われ、バージョンが変わっている場合も少なからずある。ですからやはりしっかりと担当者が自身の耳で“聞く”。そして何度も“反復して確認する”作業を繰り返すことで極力正確なキャプションを目指します」(キャシー氏)

 もちろん書き起こしソフトなどのテクノロジーも利用される。今後、技術の進歩によってこれらの作業が著しく簡略化されるか質問したところ、可能性では肯定したものの現状では「No」と言う。

 「すべての作品は、最終的には人間の想像力の賜物です。ですから、とくに翻訳字幕の場合、どうしても人間の創造性を付加していかないと、作り手の意図が正確には伝わらない。AIのようなテクノロジーが進化して我々の想像力までくればいいのですが、今はまだ人間の想像力を置き換えられる技術は存在しないと思っています」

字幕配信は、日本のエンタメ作品が世界へ羽ばたく試金石に?

 そして昨年末は、2020年で活動を休止する嵐のドキュメンタリーシリーズ『ARASHI′s Diary -Voyage-』が、Netflixで独占配信スタート。『ARASHI′s Diary -Voyage-』は日本語以外でも28言語に翻訳され世界配信されており話題となっている。今後こうした海外展開については各芸能事務所も気になることだろう。

 この件について同社の広報を務める東菜緒氏に話を伺うと、「今後、波及効果があるとうれしいですが、まずは嵐さんのこのドキュメンタリーを国内外の方に楽しんでもらうことにフォーカスをしたい。その経過をしっかり診ることが先決と感じます」と語る。

 現在、Netflixは約30言語に作品を多言語化。これはNetflixが字幕付きで展開をすれば、映画館へ足を運ぶ、ソフトを買うといった手間を省いてグローバルに鑑賞されることを意味する。これまで日本のエンタメ作品は、“日本語”というマイナー言語が障壁となっており、英語作品と比べると世界展開に困難が伴っていた。だが、エンタメ業界、芸能事務所やタレントにとって、世界はより“身近”になるのではないか。キャシー氏に聞いた。
 
 「日本のクリエイターが編み出すストーリーは素晴らしいものがたくさんあると私は感じています。言語、文化は違えど、最終的に人は人。素晴らしいストーリーはどの国でも愛されます。Netflixは世界への接点を創ることが役割。ですから日本のクリエイターの皆さんには創作活動にいそしんでいただき、我々は我々の役割をしっかりと果たしたい」

『テラスハウス』は年間2位のパワーコンテンツ「テレビ局は非常に重要なパートナー」

 昨今はテレビの視聴率低下が取り上げられることも多く、サブスクリプション形式の動画配信が台頭するにつれて識者やユーザーからは「テレビの時代が終わる」といった過激な意見もしばしば見られる。これはテレビ局制作の番組が激減しており、実質制作会社が日本の番組を作っている流れも理由として挙げられている。とはいえ、東氏は「テレビ局さんとは共存したいというのがシンプルな答え」と話す。

 「例えば『テラスハウス』は昨年、Netflixで、日本で2番目に観られたパワーコンテンツでした。『テラスハウス』はテレビ局が企画し、もともと多くのファンに愛されたシリーズ。弊社も2015年に日本国内でローンチしたタイミングからパートナーとして配信権をいただている状況です。ひとことで言って、テレビ局は私たちにとっても非常に重要なパートナーなのです」(東氏)

 さらにこう続ける。「Netflixの存在意義を考えると、地上波の番組やハリウッド映画などが持つファンの強い引きはうらやましいものがあります。Netflixは今の時点ではまったくそこには追いついていません。テレビは家族皆さんでご覧になったり、Netflixはモバイルで移動中に鑑賞することができたり、タッチポイントや楽しみ方の形式は視聴者が選べる時代なのだと思うのです。そうした各サービスの魅力の違いがあるからこそ共存していけるのではないでしょうか」

 Netflixの存在意義の最終目標は「世界中のメンバーに喜びをもたらすこと」ともキャシー氏。素晴らしいクローズドキャプション、字幕、吹き替え技術で、オンラインストリーミングサービスが日本のエンタメ界、世界のエンタメ界に今後どんな影響をもたらすか。昨年、日本のNetflixで1番観られたという独占配信の『全裸監督』(主演・山田孝之)のようにオリジナル作品が充実するだけでなく、日本の映画やテレビ番組がより世界に評価される未来も…? 時代は今まさに、転換期を迎えている。

(取材・文/衣輪晋一)

『Netflix』Information

Netflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ「ARASHI′s Diary -Voyage-」
Netflixにて、全世界独占配信中
『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』
Netflixにて毎週火曜に新エピソード先行配信中(4週に1週休止)
FODにて毎週火曜深夜0時に配信中(4週に1週休止)
放送 : フジテレビにて毎週月曜24:25-24:55地上波放送中(一部地域を除く)
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』
独占配信中
『Netflix』公式サイト(外部サイト)

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