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連ドラ続編成功のカギは「描かれない過程」視聴者に“その間”を想像させる余白の提供

 阿部寛が主演する関西テレビ制作のドラマ『まだ結婚できない男』が火曜9時枠のドラマでは2年半ぶりの視聴率2桁スタートを切り、Twitterでも世界トレンド1位に。22日に放送された第3話も平均視聴率を2桁で保っている。今クールは『ドクターX』 『時効警察』『孤独のグルメ』など続編ドラマが目白押し。だが続編といえば批判も絶えずついて回り、基本的に1作目を上回るほどの大成功は難しいとされている。そんな続編成功のカギはどこにあるのか?

『まだ結婚できない男』『時効警察』『ドクターX』シリーズほか続編多数

今期は続編が群雄割拠 表出したのは「パート1を上回る続編」の稀有さ

 2019年秋クールのドラマを見てみると、続編作品としては『まだ結婚できない男』のほか、『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』に始まり、『科捜研の女』、『相棒』、『時効警察はじめました』(すべてテレビ朝日系)や『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などが挙げられる。『ドクターX』や『科捜研の女』、『相棒』はもはや人気シリーズで、そんな意味でもテレ朝らしい続編の作られ方をしている。だが、『時効警察』にいたってはパート2の終了から続編が待ち望まれていた作品。殺人など凶悪犯罪の公訴時効の廃止や延長を盛り込んだ改正刑事訴訟法が2010年に施行されて時効が撤廃になるなどの社会的変化や、局内での諸処の事情によって企画が浮かんでは消えしていたが、満を持しての復活となった。

 昨今ではネットの普及により、視聴者たちの「その後」議論が地域や世代を横断して活性化。さらにいつまでも続編が作られないことで長期化する傾向が見られ、さらには「続編はまだか」という声もネットで顕在化するようになった。そうしたなかでの続編の成功例としては木村拓哉の『HERO』があり、視聴率こそ平均視聴率34.3%を記録するパート1には及ぼないものの、テレビの視聴率低下が叫ばれ20%超えドラマがほぼないなかで、平均視聴率21.3%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区)した。

 「人気だったから続編という流れは過去からありましたが、最近はタイムシフト視聴率(7日間・168時間内の視聴率)が出てきたり、動画配信サービスの台頭など視聴環境や指標が変わってきている、今ならではの事情もある」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「過去にも続編成功作では『踊る大捜査線』(フジ系)や『ホタルノヒカリ』。『ごくせん』(共に日本テレビ系)や『トリック』(テレ朝系)、『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)などがある。だが時間を経ての続編は高騰した俳優のギャラやスケジュールなど多くの問題があり、制作側がやりたくても出来ないことが多かった。ですが視聴環境や指標の変化、またSNSの盛り上がりで火がつく過去例(『あなたの番です』(日テレ系))などがあり、違うアプローチでの制作が出来るようになった」(同氏)

『まだ結婚できない男』に見る「描かれてない期間を想像させる仕掛け」

 こうして過去10年近く続編のなかった人気作の“その後”を描いたドラマが登場し始めているが、時間が経過している分、このパターンで重要になるのは「パート1を好きだった人に10年分の懐かしさを感じさせる作りや、パート1とパート2の間、描かれていない「間」や「変化」を想像させる演出」と衣輪氏。

 『まだ結婚できない男』の前作『結婚できない男』は2006年7月〜9月に阿部寛主演で放送され、平均視聴率17.1%を記録。“40歳独身男の本音さく裂ドラマ”とも言われ、阿部演じる桑野が毎回、一人で豪勢な食事をとるシーンが話題になり、「一人○○」という行動を世に広めた先駆者といわれた。

 それから13年。『まだ結婚できない男』では劇中でも13年が経過しており、その長い期間に何があったのかを“匂わせる”脚本に。例えば、桑野は大の犬嫌いだったのに自らペットショップに入り、そこで前作でも登場した犬種のパグに遭遇するエピソードや、女性や体型など属性への言動でのコメントを辞め、表情や間合いでバカにするだけに。そこには少しだけだが本人なりの成長が見られ、さらには婚活経験を「なかった」ことにはしておらず、相手の女医さんとの話が出るとしょぼんとする部分も描かれていた。

 つまり、偏屈ぶりに磨きのかかった“結婚できない男”という「前作でファンが楽しんだ姿」と、ハッピーエンド調への「モヤモヤ感」をくみ取った脚本。挙げていくとまずパート1では桑野は、独身という事実を楽しむ、「堂々としすぎた」姿勢を保持。「結婚できない」と言われても「結婚できないのではなく、結婚しない」を主張。結婚により「妻と子供と住宅ローンの三大不良債権を背負わされる」と発言。高級マンションに住み、“高身長・高学歴・高収入”というハイスペックを自覚、自賛していた。

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