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連ドラ続編成功のカギは「描かれない過程」視聴者に“その間”を想像させる余白の提供
『まだ結婚できない男』『時効警察』『ドクターX』シリーズほか続編多数
今期は続編が群雄割拠 表出したのは「パート1を上回る続編」の稀有さ
昨今ではネットの普及により、視聴者たちの「その後」議論が地域や世代を横断して活性化。さらにいつまでも続編が作られないことで長期化する傾向が見られ、さらには「続編はまだか」という声もネットで顕在化するようになった。そうしたなかでの続編の成功例としては木村拓哉の『HERO』があり、視聴率こそ平均視聴率34.3%を記録するパート1には及ぼないものの、テレビの視聴率低下が叫ばれ20%超えドラマがほぼないなかで、平均視聴率21.3%を記録(ビデオリサーチ調べ、関東地区)した。
「人気だったから続編という流れは過去からありましたが、最近はタイムシフト視聴率(7日間・168時間内の視聴率)が出てきたり、動画配信サービスの台頭など視聴環境や指標が変わってきている、今ならではの事情もある」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「過去にも続編成功作では『踊る大捜査線』(フジ系)や『ホタルノヒカリ』。『ごくせん』(共に日本テレビ系)や『トリック』(テレ朝系)、『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)などがある。だが時間を経ての続編は高騰した俳優のギャラやスケジュールなど多くの問題があり、制作側がやりたくても出来ないことが多かった。ですが視聴環境や指標の変化、またSNSの盛り上がりで火がつく過去例(『あなたの番です』(日テレ系))などがあり、違うアプローチでの制作が出来るようになった」(同氏)
『まだ結婚できない男』に見る「描かれてない期間を想像させる仕掛け」
『まだ結婚できない男』の前作『結婚できない男』は2006年7月〜9月に阿部寛主演で放送され、平均視聴率17.1%を記録。“40歳独身男の本音さく裂ドラマ”とも言われ、阿部演じる桑野が毎回、一人で豪勢な食事をとるシーンが話題になり、「一人○○」という行動を世に広めた先駆者といわれた。
それから13年。『まだ結婚できない男』では劇中でも13年が経過しており、その長い期間に何があったのかを“匂わせる”脚本に。例えば、桑野は大の犬嫌いだったのに自らペットショップに入り、そこで前作でも登場した犬種のパグに遭遇するエピソードや、女性や体型など属性への言動でのコメントを辞め、表情や間合いでバカにするだけに。そこには少しだけだが本人なりの成長が見られ、さらには婚活経験を「なかった」ことにはしておらず、相手の女医さんとの話が出るとしょぼんとする部分も描かれていた。
つまり、偏屈ぶりに磨きのかかった“結婚できない男”という「前作でファンが楽しんだ姿」と、ハッピーエンド調への「モヤモヤ感」をくみ取った脚本。挙げていくとまずパート1では桑野は、独身という事実を楽しむ、「堂々としすぎた」姿勢を保持。「結婚できない」と言われても「結婚できないのではなく、結婚しない」を主張。結婚により「妻と子供と住宅ローンの三大不良債権を背負わされる」と発言。高級マンションに住み、“高身長・高学歴・高収入”というハイスペックを自覚、自賛していた。