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『千と千尋の神隠し』油屋を“間取り”まで再現 こだわりとは?

『千と千尋の神隠し』油屋を“間取り”まで再現 こだわりとは?

 リアルな風景を緻密に表現するジオラマ模型は、多くの人から愛されるホビーの王道。その中でも『立体間取り』というジャンルを確立させたのが、アーティストのタカマノブオさん。『サザエさん』『ドラえもん』『めぞん一刻』などの国民的アニメで登場する建物を、間取りまで忠実に再現したジオラマだ。そんなタカマさんの代表作にして最大の大きさを誇る作品が、『千と千尋の神隠し』でお馴染みの油屋。今回、その大作を紹介しつつ、制作時のエピソードから作品に対する想いを語ってもらった。

“間取り”の再現だけじゃない 煙突から煙、水面を走る電車…原作を想起させるギミックも

  • 『千と千尋の神隠し』の油屋

  • 『千と千尋の神隠し』の油屋

――『千と千尋の神隠し』の油屋を再現しようと思ったきっかけは何ですか?
タカマノブオ今までの作品以上に大きく迫力のあるものを、平成のうちに作っておこうと思ったんです。改めて平成の間に公開された映画作品を調査してみたところ、国内興行収入第1位で、未だその記録が破られていない上に、国内のみならず海外でも人気を博している作品が『千と千尋の神隠し』でした。ジブリ作品に登場する建造物は魅力的なものが多く、きっちりとした構成に基づいて描かれています。この油屋も、ありとあらゆる建築様式のミックス体であり、建造物的観点からもとても興味のあるテーマでしたね。

――平屋・2階建て等が多かった過去の作品と違い、高層建築物である油屋をどのような手順で制作するのでしょうか?
タカマノブオまず調査・推察した平面図で大きさとレイアウトを確認してから、台座の大きさを決めます。後は基礎組み、床張り、外壁や仕切り壁、天井、屋根と、下から順番にパーツを作りながら組み立てていき、並行して電気配線も施します。

――油屋の内部は、どこまで再現されているのでしょうか?
タカマノブオ油屋は、調査段階で地下階層部と最上階層部の間取りを推測するだけの画像が確認できませんでした。比較的内部シーンの多い湯殿階層部でさえ、確定できるまでには至らず……。しかし、間取りまで忠実に表現するのが私の作風ですので、どうしても内部は作り込みたかった。そこで、湯殿階層部のみ内部を再現しています。

――1階部分、2階部分…といった風に、階数別に分解して内部を見ることはできますか?
タカマノブオ三分割に分離できます。私の過去の作品はほとんどが1/40スケールで作って来ましたが、油屋もそのスケールにすると台座の大きさが120cm角、高さは240cmにもなってしまいます。これでは到底一人で運べず、工房の間口も通せない。その反面、迫力を出すために出来る限り大きい作品にしたいと、いう葛藤もあり…。結局、高さ70cmの展示台に乗せた状態で215cm程度。幅と奥行きはどちらも94cmのサイズとなりました。

――今回、油屋に関してはどのような点に留意して制作されましたか?
タカマノブオ制作構想において、当初4つのギミックを想定していました。照明は八百万の神々を迎え入れるような雰囲気を醸し出す点灯の仕方にすること、千とカオナシたちが乗り込む電車が沼の表面を走ること、煙突からは煙が立ち上ること、そして今回は新たに音声ギミックも盛り込みました。また、制作後半には、原作を強くイメージさせるため、龍のハクを沼の底から天に向かって昇るような回転動作を追加しました。内部を覗き見る楽しみ方に関しては、他の作品と同様に考慮して制作。オクサレさま(河の神)が天に向かって飛び出して行く大扉は開閉式にして、湯殿内部も覗き込めるようにしてあり、美術的な襖柄も確認できるようになっています。

間取りの推測に苦戦 数十回見直した『千と千尋の神隠し』

――映画以外では、油屋の間取りをどうやって確認したのですか?
タカマノブオ『The Art of Spirited Away』という書籍に掲載されている美術写真や絵コンテに、市販のキャラクター商品なども参考にしています。映画は通しで数十回ほど鑑賞しましたが、再確認のために部分的にシーンを見返すことも何度かありました。

――作中で触れられていない箇所の間取りを、どのように推察して再現しましたか?
タカマノブオとにかくこの映画ほど、間取りを推測する上で難解な作品はありませんでした。それぞれのシーンは緻密に描かれているものの、間取り的に全く繋がらないんです。ほとんどが想像と言っても良いかも知れません。想像する上でも、見る人が違和感を感じることがないよう、印象に残るシーンを出来るだけ多く盛り込むようにしました。

――『千と千尋の神隠し』で好きなシーンはどこですか?
タカマノブオ千とカオナシが電車で「沼の底駅」に向かうところでしょうか。非現実の世界から元の現実の世界に戻る第一歩が描かれています。そして、油屋に関わるキャラクターたちが総出で千尋を見送るシーンも印象的です。

――制作で一番苦労した点はどこですか?
タカマノブオ異種多様な建築様式である油屋の屋根の形状を表現するのに苦労しました。元々真っすぐな素材の木材を、折れないよう屋根の形状に合わせて曲げなければなりませんし、その数も多い。曲げた素材は元に戻ろうとするので、固定するのもなかなか困難な作業でした。

――400枚の障子の木の桟も一本ずつ作ったとか…。
タカマノブオ建具の多さには相当参りました。障子戸の桟を一本ずつはめ込んで、約二か月ほどかかりましたね。途方もない作業ですが、コツコツやれば必ず終わりは見えて来るので、完成時のイメージを想像しながら作業していました。

――どこに行けば、『千と千尋の神隠し』油屋を見ることが出来ますか?
タカマノブオ福井県丸岡町にある私の作品の常設ギャラリー&カフェ「茶蔵庵房 -さくらんぼう-」の2階に常設展示してあります。今後、展示イベント等で移動する場合もありますが、土日祝日はオープンしてますので、ぜひ一度、生の迫力をご覧ください。

――どういったところに注目して見てもらいたいですか?
タカマノブオ油屋のポイントは、正面から見た構図ではなくてむしろ裏側の作り。ミニチュア模型の裏側の作り込みも一切手を抜かずに制作してますので、360度どの位置から見ても楽しめる作品になっています。

――東日本大震災復興へ何かしらの形で寄与したいとのことですが
タカマノブオ先日、仙台と石巻市、東松島市の被災地を訪問してきました。他人が踏み込んではならないデリケートな部分もあるとは思いますが、被災された方々のちょっとした「癒しの展示会」になれば、と思い、震災10年目の2021年に開催できるよう準備を進めています。

――今後、油屋を超えるような大作の制作予定は?
タカマノブオ…正直言って、そのテーマがまだ見つかりません。誰もが知っている大きな建造物と言えば、ハリーポッターの『ホグワーツ魔法魔術学校』ですが、資料も入手が困難ですから難しいでしょうね。

タカマノブオさん制作の油屋

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