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「マイノリティを尊重する街」渋谷の壁に出現“はぐれた犬と少女”の物語に反響、意図とは?

 渋谷の再開発エリアの仮囲いに絵描かれた壁面アートが、SNSで話題となっている。全長200メートルに渡る壁画は、一見ほのぼのしたイラストに見えるが、一周すると“犬とはぐれてしまった少女”のストーリーに。SNSでは「渋谷の多様性が詰まっていて泣ける」や「絵の存在は知っていたけど物語に気づかなかった」との声が挙がった。今回、この壁面アートの制作を手掛けた1/365プロジェクトリーダーの田村勇気さんに話を聞いた。

渋谷を舞台にした心温まる物語、SNSで「泣ける」と話題に

 渋谷・明治通りの再開発エリアの仮囲いに絵描かれた壁面アートは、ポップで可愛い絵柄が目を引く。それぞれの絵をよく見ていくと「渋谷の街で犬とはぐれてしまった少女が、街の人々に助けてもらい、ラストに犬と再会する」という一つのストーリーになっているのだ。2019年3月24日、この仮囲いの物語にたまたま気づいた今治ゆかさんが、イラストを端から端まで歩いて撮影。Twitterに「渋谷の工事中のシャッターの絵 普通に道歩いてて泣いてしまった」と投稿したところ、4月6日現在で約29万「いいね」、約10万リツイートされる大反響となった。

――アートの完成から1年たったタイミングで、SNSで大きく話題になりましたね。
田村さん大変驚きました。2018年の春に完成して、2019年の春にブレイクするとは……。それまでも写真を撮ってくれる人はチラホラといたのですが、今回動画が広まってからはじっくりと壁を撮影する人が増えました。

 SNSでは「全部見るとこうなってたんだ」「絵は見たことあったのに」と動画への感想が続出。「2人が出会えてよかった」「ハチ公前で出会うのがいいですね」と物語にほっこりする声や、「いろんな人が登場するのがいい」「多様性が集う街、渋谷」と登場人物の多様性にときめく声も寄せられている。

――話題になったことでの発見、課題などはありますか?
田村さん今回はシンプルなメッセージを全長200mの面積を使って書きました。50コマくらいのカットで進んでいくのですが、これらの絵柄がお話になっていることは見る人たちに届いていると思っていたんです。登場人物の説明書きもありますし。でも、今回動画を見て「絵柄の順路通りに歩く人はめったにいない」と分かり、いかに伝わっていなかったかに気づきました。特に少女と犬が再会するクライマックスシーンは、渋谷から原宿方面に向かう道で交通量が大幅に減るため、クライマックスを見ている人の少なさを痛感しました。「見て面白いもの」「メッセージが伝わるもの」を作ることが課題ですね。

渋谷を象徴する多様な登場人物。絵は総勢200名で制作


 壁画に描かれたストーリーでは、渋谷のスクランブル交差点を愛犬と散歩していた少女が、モヤイ像の前で犬と離れ離れになってしまう。少女は犬を探す過程で、ギャルやストリートパフォーマー、視覚障がいのある高齢者、同性カップルなど、さまざまな人たちと出会う。最後は少女と犬がその日出会った人々と仲良く集合する姿で幕を閉じる。

――このストーリーを選んだ理由は?
田村さん当初は考えさせる内容の絵柄を考えていました。気持ちが暗くなる絵柄はよくない、明るいケヤキ並木にあうものへと変えようと考えて、現在の話に決定しました。私は本業で映画のプロデューサーやシナリオ作りをやっているので、そのノウハウも活かし、メンバーで協議した結果、シンプルなワンメッセージを考えました。

――登場人物の多様性も大きなポイントですね。
田村さん以前から、渋谷はマイノリティを尊重する姿勢がある街だと感じていました。同性カップルのパートナーシップ公認や東京パラリンピックの車椅子競技の会場に選ばれていることもあり、彼らを登場させる構成にしようと決めていました。誰に対しても偏見を持たずに接することができそうな存在として子供が思い浮かび、その子供のバディとして飼い犬が自然と出てきました。犬と少女には登場人物たちをつなげる役割を担ってもらい、渋谷の物語をまとめました。

――美大生100人を含む総勢200人で制作されたそうですね。
田村さん壁の絵がプリントではなく手書きなので、人手が必要でした。それなりに経験のある方でないと着手できないので、おのずと美大生に声をかける運びとなりました。クラウドファンディングで集まった方に頼ったり、知り合いのつてをたどって、何とか集めた次第です。

――制作中はどんなご苦労がありましたか?
田村さんまず工事の図面を事前に教えてもらって、壁画をコマ割りしました。工事の予定との兼ね合いで、壁画完成の日程も大幅にずれました。工事用車両の通り道が変更になるなど大幅な変更もあったので、絵柄を変えたこともあります。2017年10月に完成の予定が2018年春に完成、そして2019年春にブレイク……と、どれも遅かったですね。

――作品維持のために気を付けていることは?
田村さん夜中にスケボーの人たちにタイヤの跡をつけられるので、警察に何度も被害届を出したり、月2回は壁画の掃除をしています。ステッカーを張られることも何度かありました。タイヤの跡を消そうとすると、手書きの絵柄も消えてしまうんです。同じ「壁に絵を描く」ことにかかる時間は”落書き10秒、許可取り10か月”(許可を取って絵を描くには10か月ほど申請や交渉が必要)くらいの差があると気づきました。

多彩な作品を作り続ける1/365。新プロジェクトの舞台は「中目黒」

 田村さん率いる1/365とは、地域の人々に寄り添ったクリエイティブ作品を作り続けるNPO法人。渋谷の壁面アートの他にも、高圧洗浄機ケルヒャーを使用した交通安全アート「STOPサイン」や下北沢のビル壁面に描かれたジャンプする若者の絵など、意欲的な作品を多数発表している。

――1/365を立ち上げた際のお考えを教えてください。
田村さん絶対に実現させたいという意思が強くあり、同じ思いを持った人たちと、本業の合間にやりたかったので、おのずとNPOを立ち上げました。時間がかかる事業なので、(田村さんが勤める会社の)社内事業としては提案しませんでした。採算ベースでジャッジする会社の事業ではなく、有志で継続的に取り組んでいきたいと考えているので今後も会社の新規事業案に出す予定はありません。

――現在、中目黒のプロジェクト「なかめエンノシターズ」が進行中だと聞きました。
田村さん中目黒の壁は「公園の一部」とみなされていた渋谷と違い、管轄として「道路」となります。そのため、持ち主が東京都となり、行政書類や周辺の利権者との話し合いに時間がかかっています。地地元の商店街など地域のみなさんや、自治体の許可をもらって作業スペースを借りる必要があって、海外のアートプロジェクトの作業工程とは違った難しさがあると思います。日本の行政は各種許可手続きが非常に複雑で、なかなかハードルが高いですが「見て面白いものを届けたい」一心と、「プロジェクトをやりたい人がやりやすくなる機運をつくること」を目標にがんばっています。

――今後の目標は?
田村さん日本は場所探しで苦労するので、意味のある場所で意味のあることをやっていきたいです。その土地にあるストーリーを把握してから、そこにあったものを作っていきたいです。

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