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応援上映も盛況、映画館は“コアファン”向けにシフトするのか? 劇場担当者が語る映画の未来
応援上映とは「声援OK、ペンライトの持ち込みOKの特別な上映会」
新宿バルトナイン応援上映の醍醐味は「ファンが作品の興奮や感動を共有できる」こと。趣味や感性が近い方と同じ空間で感動や興奮を共有できることが、ご家庭では味わえない映画館の最大の魅力です。
――応援上映がヒットした要因は?
新宿バルトナインキッズ向けの応援上映は行っていましたが、いわゆる大人向けは初めてでした。そこでの非常に熱烈な反応から「映画のキャラクターに声援やレスポンスを送りつつ楽しむという参加型の鑑賞スタイルが、実は意外に幅広い作品で有効ではないのか」と考え、さらに対象作品を拡大していったという流れです。当館にはアニメ好きのスタッフも多いので、ファン心を理解した丁寧な接客を率先して行ってくれたことも、成功した要因かもしれません。
――応援上映開始時と現在を比べて、お客さんの反応に違いはありますか?
新宿バルトナイン当初は作品のファンの方がメインとなり、その方々が何度もご来場いただいたことで応援上映の形ができ上がってきました。現在は徐々に裾野が広がり、作品のファンのみならず、中には「応援上映だから観に行こう」というお客様もいらっしゃるようになりました。
応援上映の細分化「家族連れにやさしい」三世代の来場も
同じアニメ作品では、3/16より上映中の『映画プリキュア ミラクルユニバース』が、春のプリキュア映画シリーズ歴代最高となる好調なスタートを切っている。同作品は子どもたちがプリキュアを応援するアイテム“ミラクルライト”の秘密に迫るストーリーで、キーワードは「家族」。まさに「家族連れに優しい」映画で、三世代を劇場に取り込む狙いが功を奏したようだ。
また『グレイテスト・ショーマン』や『ボヘミアン・ラプソディ』など、ミュージカル映画や音楽を主題とした映画も、応援上映と親和性が高い。最近では、特別な音響システムを導入した映画館や大音量での上映に加え、『アナと雪の女王』などの外国語作品でも一緒に歌えるように歌詞部分に字幕を入れた作品も登場している。
今や応援上映が定着し、『キンプリ』『プリキュア』のように爆発的ヒットも生まれている。「実写・アニメを問わず、登場人物に感情移入しやすい作品や、お客様が一体となって声を出したくなるような作品は、特に応援上映に相性が良いと思います」(新宿バルトナイン)というように、アニメや音楽映画だけでなく、さらにいろいろな作品で応援上映が行われる可能性はあるだろう。
映画業界の今とこれから
新宿バルトナイン映画館が不特定多数の人が集まって体験を共有する場であることは、黎明期から変わっていません。スマホや動画配信が普及し、個人がコンテンツと触れ合う機会は増えていますが、一方ではSNSの普及によって、本当に優れた作品が口コミで評価され、素晴らしい体験を誰かと共有したいという欲求も高まっています。応援上映はSNSで拡散していただく機会が多く、そのためか同じ映画に何度も通うファンの方が増えました。前述した作品に限らず、「参加型」の鑑賞スタイルは幅広い作品で有効だと思います。われわれはその欲求にどう応えて、特別な体験を提供できるかを考えています。
1900円という価格設定は、一般ユーザーにとっては厳しいラインだ。劇場は生き残り策として、コアファンやリピーター、ミュージカル好き、イベント好きなど、値上がりしても劇場に足を運ぶと期待できるユーザーに的を絞り、彼ら向けの企画や設備を充実させれば活路を見出せるかもしれない。新宿バルトナインでは「”趣味や感性が近い方と同じ空間で感動や興奮を共有できる”という映画館の強みを活かせる企画を、今後も提案していきたい」としている。今後はどんな企画が飛び出すのか、その動向に注目したい。