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ブラック企業、ジェンダーレスなど時代性を反映…大人がハマる『はぐプリ』の戦略
秀でたものはなくても“なりたい自分”がある! 感情移入のしやすい主人公設定
はなには「優れたコミュニケーション能力」「芯の強さ」といった長所がある反面、自分には取り柄がないと落ち込んでプリキュアに変身できなくなる時も。しかし最後は「なりたい“野乃はな”がある」と奮起し、周囲の助けも借りながら乗り越えていく。得意なことがなくても、守りたいものやなりたいものがあればヒーローになれる…そんな等身大のヒロイン・はなに感情移入して、心を打たれてしまうようだ。
今や悪役も“稟議”を通す時代! 女幹部も中間管理職としての悲哀が
女課長・パップルは、「しもしもー」「ぶっとびー」が口グセのバブル色濃いキャラ。ただのイロモノかと思いきや、社長にはネチネチとミスを追求され、残業続きの日々を送っているという何とも悲哀に満ちた立場であり、世のビジネスマンならその“ブラックな社風”に「わかるよその辛さ…」と同情したくもなってしまう。
アニメ史に残る名台詞「男の子だってお姫様になれる!」
近年、「ジェンダーレス男子」という言葉も定着しつつあるが、美意識の高い中性的な男子はイケメンの“新ジャンル”として、芸能界や街中で見かけるようになった。アンリも、“女(男)はこうあるべき”という世間の価値観の押しつけに対して、「自分の個性を大事にする」という制作者側のメッセージが込められているようにも思える。彼の言葉で、視聴者に「将来、男がプリキュアになる可能性も?」とすら予感させた。
これまでにも中性的なキャラクターが登場するアニメは存在したが、ここまでストレートな台詞で全肯定してみせた子ども向け作品は皆無だろう。
世相を反映させつつも「プリキュア」ブランドを守り、思いを継承
さらに第18話では、自分はアンドロイドだからプリキュアにはなれないと落ち込むルールーに、えみるはギターとオリジナルソングで励ます。そして、2人の友情について歌った歌詞がバックに流れるまま、エンドロールに入る演出がとられた。通常とは異なる、この日だけの “特殊エンディング”に差し替わり視聴者は感動、SNSでも「神回」との声が溢れた。
監督の佐藤順一氏も自身のツイッターで、「特殊EDもめちゃ良い感じでした。ちなみにこういった番組でのフォーマット変更になる演出は、局、音楽制作、スポンサーなど多くの了解を事前にとらないとできないので、急に思いついてもできません。関係者の皆様のご協力に感謝です」と謝辞を述べた。
ブラック企業、ジェンダーレス、個性(アイデンティティ)等々、世相を反映させた問題を子ども向けアニメのストーリーに盛り込む『はぐプリ』。「子どもには難解では?」と思わせる内容も多いが、メイン3人のプリキュアらしい活躍と合わせ、うまく表現されている。はぐたんの“育児”や、“お仕事”を体験するというメインのテーマもちゃんと押さえつつ、『はぐプリ』の力の源「アスパワワ(未来を信じる思いの力)」は、15周年を迎えてなお挑戦する制作者たちのみなぎる意欲を感じるようだ。