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『2018NHK紅白』総合演出に聞く、“奇跡の確度”を高めた予定調和の破壊

  • 『第69回NHK紅白歌合戦』にて「総合演出」を担当した NHK制作局の山崎隆博氏。

    『第69回NHK紅白歌合戦』にて「総合演出」を担当した NHK制作局の山崎隆博氏。

 変革期を迎えているエンターテインメント業界。テレビ最盛期やミリオンヒットが続出した時代に青春を過ごした30代は今まさに、その最前線で活躍している。そんな彼らが今なにを考え、どう時代の変化に立ち向かっているのかをリレー形式でインタビューする本企画。今回は、2018年大晦日に放送された『第69回NHK紅白歌合戦』にて「総合演出」を担当したNHK制作局の山崎隆博氏。昨年放送された『紅白歌合戦』は、豪華共演やサプライズ演出などが随所に登場し高視聴率を記録。日本中が注目した平成最後の『紅白』は大成功との呼び声が高かった。総合演出を任された山崎氏は、どんな想いで『紅白歌合戦』と向き合ったのか。山崎氏の経歴と共に、演出へのこだわりや制作秘話を聞いた。
■山崎氏が担当する番組
番組名:『うたコン』
放送:NHK総合テレビで毎週火曜 午後7時30分〜8時15分
内容:演歌・歌謡曲からポップス、洋楽、クラシックまで、多彩なジャンルの音楽を、生放送・生歌唱で、幅広い世代の層に届ける

◆3月5日の「うたコン」は「昭和VS平成〜春の名曲歌合戦〜」をお届け!
司会:谷原章介、小郷知子アナウンサー

制作陣と出演者で台本は異なっていた!? 「MCのリアクション部分も基本的には“白紙”」

――NHKに就職されてからはどんな仕事を?

山崎隆博僕は1年目から東京勤務になって、音楽番組『ポップジャム』班の配属になりました。それから『歌謡コンサート』や『きよしとこの夜』など、主に歌番組のアシスタント業務を3年経験し、2008年に沖縄放送局に転勤しました。沖縄で3年半、古典芸能からニュースまで様々な番組の制作に携わって、2011年からまた東京に戻り『佐野元春のザ・ソングライターズ』や『SONGS』『うたコン』など音楽番組に関わっています。『紅白』に関しては、沖縄局にいた時以外は毎年、スタッフとして携わっていましたね。

――そんな中、36歳(当時)で昨年の『紅白歌合戦』の総合演出を任されました。具体的にはどういった役割でしょうか。

山崎隆博紅白はディレクターがとても多く、紅組担当と白組担当のディレクターに分かれています。その他に美術・音楽・映像担当…といったディレクターがいて、それぞれチームがあります。そのチーム全体を見ながら、構成や楽曲の演出、MCの内容など、それぞれのディレクターと相談しながら作り上げて判断をしていく立場ですね。自分から具体的な演出アイディアを託すパターンもありますし、みんなの意見やアイディアから立ち上げていくものも沢山あります。

――総合演出として、視聴率や満足度など、何か課せられていたものはあるのでしょうか。

山崎隆博歌の力やメッセージが観ている人の心に届く。多くの方に「紅白良かったね」と言ってもらえる放送にして欲しい。そう上司には言われました。

――では、山崎さんはどんなメッセージを残したいと?

山崎隆博平成最後の紅白なので、平成振り返りの番組にするという考え方もあったと思うんです。でもプロデューサーたちとも話して「新しい時代に向けて、少しでも前向きになれる紅白」「ワクワクできるような紅白」にしたいなと。見終わった後に、「初詣に行く足取りが軽くなる」「次の年は良い事がありそうだな」と少しでも思ってもらえる紅白にしたかった。スタッフを集めた最初のミーティングでも、そんな想いを話しましたね。

――今回、演出部分でこだわった点を教えてください。

山崎隆博細かい部分はたくさんあるのですが、特に「テンポ感」はかなり意識しました。1曲歌ってMCが入って次の曲。そういった単調なテンポはなるべく変えたかったんです。数曲続けての披露や曲への誘い方のテンポを変えて、飽きさせないリズムを作ること。その世代が好きなアーティストだけではなく、色んな世代の人に楽しんでもらえる工夫。キッズコーナーから北島三郎さんまで、世代別に目玉となるアーティストさんがいて、何が起こるか分からない「ワクワク感」も意識しました。

――サプライズ登場や豪華な共演もありました。

山崎隆博僕が持っている台本とスタッフに配られる台本の中身はかなり違っていて、通常の台本は「白紙」部分が多いんです。僕らはサプライズ部分を自分たちでコピーして貼り付けていく。MCにも伝えていない部分がありましたし、台本のリアクション部分も基本的には「白紙」です。NHKホールでの生のライブ感や雰囲気を視聴者の方に伝えるため、MCの方々にも“1人のお客さん”として番組を楽しんで頂きたかった。そうすることで、会場の雰囲気が視聴者の方にも伝わるんじゃないかと思っていました。

アドリブで視聴者を“ドキドキ”させた出川と、紅白をファミリー感で包んだ内村の「父性」

――総合司会の内村光良さんの存在も大きかったと思います。出演者をファミリーにしてしまう父性的な安心感と親しみで支持を集めました。

山崎隆博そうですね。内村さんのリアクションはとても自然ですよね。「うちの子供、三浦大知めっちゃ踊ってるんだよ〜!」「ああ、そうそう、うちも!」と一般の人が共感できるコメントや気遣いが随所に見られました。あと、内村さんはじめ、櫻井さんも広瀬さんも音楽が好きなので、純粋に番組を楽しんでいる様子が視聴者のみなさんにも伝わっているのだと思います。生放送では予定外のことやハプニングがある中で、僕たちスタッフは、司会の皆さんの進行に随所で助けて頂きました。

――今回、出川哲朗さんのゲスト審査員としての出演も話題となりました。

山崎隆博結果的に、出川さんのコメントもすべてアドリブでした(笑)。そうしたリアルさも、今回の“ライブ感”に寄与していると思います。

――視聴率も含めて評価が高かった印象があります。終わってみて、どう感じていますか?

山崎隆博課題もいくつか残りましたが、会場のお客さんの盛り上がりや雰囲気、2階も3階も総立ちになって、ライブ感も本当に凄かった。出演者の皆さんも口をそろえて「楽しかった」と言って下さいました。僕たちというよりも、出演者の皆さんが「平成最後」「時代の変わり目」を意識していただき、自分達の歌の力を届けたい。そんなパワーが例年よりも強かったように感じます。

ラストのユーミン&桑田佳祐の共演は完全サプライズ!“奇跡の確度”を高めた先の「カオス」

  • 台本がチェックの付箋でブ厚くなっている(右)

    台本がチェックの付箋でブ厚くなっている(右)

――紅白ならではの苦労はありましたか?

山崎隆博スケジュールのタイトさは毎年、苦労しています。基本的に、世の中に発表されてから出演者の方との打ち合わせが始まるので、1ヵ月半という期間の中で演出を決め、背景映像を制作し本番を迎えます。その期間の中で、昨年はそれぞれのスタッフが最大限の力を発揮してくれました。そこは本当にありがたかったです。

――ギリギリのスケジュールの中で、番組に“奇跡”が起こる確度を高める仕掛けを、そこかしこに仕掛けていたわけですね。

山崎隆博台本がチェックの付箋でブ厚くなるまで内容を詰めますが、生放送ならではの予想外のコトがおこります。ラストの松任谷由実さんと桑田佳祐さんの共演はリハでも行っておらず、あそこまでなるとは…まさに“サプライズ”でした。

――内村さんが番組終了後の取材で「本当のカオスがそこにありました」といった理由がわかりました。視聴者にとっても満足度の高い紅白だったと思いますが、今後、国民的番組『紅白歌合戦』で残していくべきところは何だと思いますか?

山崎隆博ずっと根底にあるのは「世代を超えて、家族揃って見てもらえる番組」これが一番大切な部分だと思っています。おじいちゃん、おばあちゃん、小さい子供達が一緒にテレビの前で座って見れる番組。時代の流れの中で難しい部分ではありますが、諦めずに守っていければと思っています。

――「紅白」に限らず、山崎さんが仕事をしているうえで意識していることはありますか?

山崎隆博僕にとって「沖縄放送局」での経験がとても大きかったんです。特に転機となった番組が1つあります。ある看護師さんが書いた詞に沖縄のミュージシャンの方が歌をつけて歌ったという実話を基に作ったドキュメント番組です。その歌詞の元になったのは、看護師さんが担当していた方の亡くなる直前の「最後のメッセージ」。放送後の反響も大きくて、全国から沢山の感想ハガキが届いたんです。「明日、死のうと思っていたけど生きなきゃと思えました」「生きる勇気をもらえた」そういった内容のハガキが何通も届きました。それまでの僕は「好きなアーティストで、ただ面白い番組・格好良い番組を作りたい。」そういった気持ちが強かったんですよね。でも、その時に届いたハガキを読んで「テレビには「1人の人生」を変える可能性があるんだ」と気付かされた。その時から、番組を見た人がどう感じるのか。どういう気持ちで見終わるのかをいつもイメージするようになりました。以前担当した『震災から5年“明日へ”コンサート』では、番組を見た方が「東北へ行ってみたい!」そう思ってもらえるような番組作りを心掛けました。「紅白」で意識した「テンポ感」や「ワクワク感」も、見てくれている人の様子を何度も何度も想像しながら作っていましたね。

――最後に、山崎さんの原動力を聞かせてください。

山崎隆博番組を観てくれている人の表情ですかね。NHKの音楽番組は一般のお客さんを招いた公開番組が多いんです。最初に担当した『ポップジャム』や『うたコン』。もちろん『紅白』もそうですよね。お客さんの前で番組を作ることが出来るのは、とても魅力的だと思っています。その中で、お客さんの「リアクション」や「感想」が生で伝わってくる。公開番組でなかったとしてもSNSでだって、直接的な表情は観られないけれど番組への様々な反応が見れますよね。そのひとつ1つが、僕の“原動力”なんだと思います。テレビ番組って、手を抜こうと思えばいくらでも手を抜ける。真面目に手を抜かずに番組に対して愛情を持って最後まで取り組む。これはずっと大切にしたいですし、後輩たちにも伝えていきたいと思っています。

「平成最後」として例年よりも注目された『第69回NHK紅白歌合戦』。守るべきものと変えるべきもの。様々な意見がある中で、判断を下すプレッシャーは計り知れない。次はいよいよ新元号で「70回」。今年はどんな『紅白歌合戦』が待っているのだろう。

取材・文/山本圭介(SunMusic)
「カメラを止めるな!」上田慎一郎監督や幻冬舎の名物編集者・箕輪厚介氏も登場!
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