レコード大賞、紅白歌合戦がシングルセールスに及ぼした影響とは?

『NHK紅白歌合戦』でのパフォーマンスでも話題をさらった米津玄師やあいみょんのブレイクが大きな注目を集めた2018年。彼らの活躍は従来のCDマーケットだけではなく、むしろデジタル配信やストリーミングでのヒットが目立ったという点でも大きなエポックとなった言える。そんな2018年の締めくくりを飾ったTBS系『輝く!日本レコード大賞』と、『第69回NHK紅白歌合戦』の2大音楽番組が実際のところ、CDシングル、ダウンロード、ストリーミングなど各ランキングにどのような影響を及ぼしているのか、オリコンのデータから明らかにしてみたい。

デジタルシングルのDL売上は7作品平均で前週比573%に

 年末の風物詩となっているTBS系『輝く!日本レコード大賞』と、『第69回NHK紅白歌合戦』が音楽業界に与える影響は、ここで改めて説明するまでもないだろう。出演したアーティストのCDセールスが上がるのは例年のことで、だからこそ多くのアーティストが両番組への出演を願ってやまないのだ。

 そんな両番組の影響力について、これまではCDでしか計ることができなかったが、オリコンでは一昨年からデジタルシングル(単曲)ランキング、今年から合算ランキング及びストリーミングランキングの発表を開始し、より詳細に視聴者動向を把握することができるようになった。そこで今回は、編集部が注目した7曲のセールスデータを見ながら、視聴者がどのように音楽を購入していたのかを探ってみたい。

 まずCDセールスについて。18年12/31付と19年1/14付で比較をすると、7曲の平均上昇率は322%。これが、長年音楽業界が経験してきた「年末の2大番組効果」だ。ほとんどの楽曲が、CDセールスとしてはひと山越えてしまったにもかかわらず、ここに来て3倍以上の売上を記録するのだから、その威力がよく分かる。

 ところが、このCDセールス以上の売上を示したのがデジタルシングルのDL売上だ。7作品平均で573%。ドラマ主題歌として大ヒットしたMISIAの「アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)」に至っては、2週前に記録したDL数の13倍という驚異的な伸びを示した。

 ストリーミングはどうだろう。こちらは「Lemon」が未解禁、「世界はあなたに笑いかけている」が解禁前ということで5曲分のデータとなるが、対12/31付で平均179%。伸び率としては最も少ない数値だった。

ライトな音楽ファンはCDからDL購入へ、いまだハードルが高いサブスク

  • 米津玄師「Lemon」

    米津玄師「Lemon」

 これらの結果を今後どのように活かすべきか。まずストリーミングは、もともと2週間程度では大きな差が出ないもの。それが179%を記録したことは記憶しておくべきだろう。年末の2大音楽番組がもたらしたこの数値が、今後のデータ分析にとって1つの指標となるのは間違いない。

 もう1つ気にしておきたいのが、国民的番組になればなるほど、デジタルDLは強いということだ。まだ世の中にCDしかなかった時代、「紅白歌合戦」を観た翌日、CDショップに駆け込み、気に入った曲を購入していたライトな音楽ファンが、今は気に入った曲を見つけたら即座にデジタルDLで手に入れることができるようになった。それが、573%という数値に表れていると想像できる。

 しかもそうした人たちの多くは、まだ有料のストリーミングサービスは活用していないのだろう。一部の熱心な音楽ファンではなく、大多数のライトな音楽ファンでも観る国民的番組だからこそ、このような現象が起こったのではないか。

 音楽業界にとっては、姿が見えづらくなっていたこれらのファンの存在を、改めて強烈に印象付けたことで、19年のデータ分析に活かしていきたいと思う。

提供元: コンフィデンス

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