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自身のイメージにも影響する“嫌われ役” イメージ低下への危険性とその回避策は?

  • “悪女役”イメージが定着した菜々緒 (C)ORICON NewS inc.

    “悪女役”イメージが定着した菜々緒 (C)ORICON NewS inc.

 ドラマや映画において“嫌われ役”は必要不可欠。“嫌われ役”と一言で言ってもそれは悪役であったりライバルであったりとタイプは様々。中には“ヒロイン”として描かれながら、現実社会では嫌われる要素があり、結果として“嫌われ役”となる場合も。役者にとって“嫌われ役”の完成度が高いほど、自身のイメージが低下する現象も少なくない。そしてそれは、男性俳優より女優の方が多い傾向にある。“嫌われ役”に挑むには、それ相当の“覚悟”が必要となるのだ。

役のイメージが自身の人気にも影響 大バッシングへ繋がる危険性も

 役柄のイメージがあまりに強すぎて大バッシングを浴びた代表的な例は、1993年に放送されたドラマ『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)で、不倫相手役を演じた裕木奈江だろう。裕木は1988年に映画『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』でデビュー。『北の国から’92巣立ち』(フジテレビ系)で黒坂純(吉岡秀隆)の子を妊娠し中絶する恋人役を好演し、脚光を浴びた。

 そんな中、『ポケベル〜』の役柄は、どんなにはかなく切なげであっても、愛した相手が妻子ある身だったこと、また役柄の性格や雰囲気的に女性から共感を得られにくい印象だったことから、裕木自身が“女性全体の敵”であるかのような扱いを受けてしまった。当然のことながら、役柄と演じる本人は別ものだ。だが、役に近づけば近づくほど、演者としての力量が高いほどに、そのイメージがリンクしてしまう。しかもこうした現象は、男性俳優より女優の方が多く見られるように思われる。

 この理由について、メディア研究家の衣輪晋一氏は「登場人物で“嫌われ役”を設定する場合、ドラマの制作会議では、どういったキャラが嫌われるか、分析して話し合う場面もあります。女性であれば、たとえば裏表が激しい、自分の話ばかりに終始する、悪口や噂話好き。また、落ち込んだヒロインを慰めるふりをして自身の自慢につなげる女性や、アドバイスに混ぜてヒロインを否定し、マウントを取る女性など。このほか“ぶりっ子”“あざとい”などの媚びた印象、男性が守りたくなるような“いかにも”な女性像は賛否両論で大荒れするので作品に深みを与える存在たり得る。裕木さんの場合、女性が嫌いやすい“いかにも男性が守りたくなる”が、自身の人気に悪い作用をもたらした典型的なパターンではないでしょうか」(衣輪氏)

“嫌われ役”を貫き通すことで女優としてプラスに作用する例も

 そんな“いかにも男性が守りたくなる”にプラスして“エロティック”な役柄で、多くの女性をイラッとさせたのが木村多江だ。“薄幸といえばこの人!”のイメージが定着する木村だが、彼女が業界内で最初に注目されたのはフジテレビ系ドラマ『リング〜最終章〜』(1999年)の山村志津子役と山村貞子役(二役)。山村志津子は“薄幸”であり、貞子は、今や日本で最も有名な怨霊のひとつ。木村は“薄幸”と“怨霊”の関係性を巧みに演じ、そこからブレイク街道を歩み始めた。

 それ以前は舞台『美少女戦士セーラームーン』や、『GTO』(1998年/フジテレビ系)で、ヒロイン冬月あずさ(松嶋菜々子)のイケイケな親友役を演じていたが、よほど“薄幸”なイメージがハマったのだろう。中高年男性週刊誌などにも度々取り上げられ、ぽてっとした唇や意外な胸の大きさなど、醸し出される“セックスアピール”が話題に。2010年の映画『東京島』では、無人島に、夫と16人の男性という、想像するだけで「何か起こりそう」な状況で漂着する妻役を熱演演している。

 「頭からマヨネーズをかけられるなどの虐待を受ける役や、未亡人役など、女性視聴者からは嫌われるタイプの“薄幸”を演じ続けたことで、役のイメージが直結し、女性からの人気は急下降。ですがご本人が『樹木希林さんに憧れ、この役と言えばこの人という存在になりたかった。私にとってそれは“薄幸”だった』と語る通り、懸命に“薄幸”な役に向き合い続けた。その結果、“薄幸”役のプロフェッショナル女優としての評価が生まれることに。これは、過去に“抱かれたくない男No.1”だった出川哲朗さんが、自身のキャラを貫き続けた結果、今や大人気となった現象と似ており、自身のスタンスを貫く姿勢が実を結ぶパターンがあることを示唆しています」(衣輪氏)

“悪女代表”菜々緒はバラエティ出演で、本来の自分と役柄の切り離しに成功

 その“貫き通す”姿勢で、“嫌われ役”を演じても人気が衰えない女優が菜々緒だ。彼女が演じた代表的な悪女には『ファースト・クラス』(2014年/フジ系)で、沢尻エリカ演じるヒロインをいじめ抜いた川島レミ絵役や、『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(2015年/同系)のサイコパスな殺人鬼・橘カラ役などがある。

 「菜々緒さんにお話を伺った際、『“悪女”役のイメージがついても一向に構わない。寧ろ“悪女”は私の名刺です』と語られていて、その胆力に感服した記憶があります。また彼女の場合はバラエティ番組(番宣)への積極的な出演で、そんな素敵な“素”のキャラクターをさらけ出せたことも大きい。“素”の自分を露出することも、役柄と自身のイメージを切り離すのに有効と言えるでしょう」(同氏)

 こうした成功例から見るに、どういった方向性で売り出すか、どう徹底するか、また“嫌われ役”のタイミングなど、本人の努力では補えない事務所の力量も問われそう。「ちなみに先述の裕木さんは現在放送中の『ファイナルカット』(フジ系)で主人公・慶介(亀梨和也)の母親役で出演中。SNS上では彼女演じる母親へ“気持ちがわかる”“そうそう!”など同情の声が挙がっており、裕木さん自身、『その書き込みを見て思わずガッツポーズしました』と語っていました(笑)。そもそも裕木さんは努力家タイプ。嫌われるまでに視聴者をのめり込ませるには当然ながら“志の高い演技”がそこにあったのです」(衣輪氏)。

 一歩間違えば嫌われてしまう危険な挑戦ではあるが、女優にとってはステップアップのチャンスにも。今後どんな女優が新たな“悪女っぷり”を見せてくれるのか楽しみだ。

(文/西島享)

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