ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

窪塚洋介が語る“不遇の時期”からの再起「怒りがエネルギーになっていた」

役者としてのキャリアはこれで終わってもいい

――スコセッシ演出というのはどんな感じだったのでしょうか?
窪塚洋介役者をすごく信頼してくれますね。あの方の哲学というか、スタイルだと思うんですが、まず役者を信頼して、委ねてくれて、褒めてくれる。もう1回やるときも、「最高だな、良かった良かった。もう一回いってみよう」と。オーディションのときにも感じた懐の深さがずっとありました。こちらがいい芝居を出せるようなその温度が肌で入っているんでしょうね。いい空気感をちゃんと作ってくれて。そこにマーティンがいるだけでみんなは集中するし、それぞれのポテンシャルも上がる。ナメック星の長老みたいに、それぞれの能力を上げてくれる人でした。いつもより大きな自分に、いつもより仕事のできる自分になれるんだと、のせてくれるなかでみんな演じていたんじゃないかな。
――スコセッシの現場を体験した後では、役者としてのスタンスが変わりそうな予感があったのでは?
窪塚洋介ぶっちゃけ役者としてのキャリアはこれで終わってもいいとまで思いました。マーティンとやったことや、役柄も含めて、今までで一番“高い山”でした。きっとマイケル・ジョーダンが辞めたのも同じくらいの年齢だったなって(笑)。まあ冗談ですけど、そんなことが頭をよぎるくらいの気持ちでしたね。ただ今後、この感覚が変な足かせにはなるかもな、という予感もありました。でも、その後にやったのが映画ではなく舞台だったので、そのチョイスが我ながら良かったなと思っていて。同じ演じるという仕事ではあるけれども、まったくアプローチの違うことをやることで、マーティンたちからもらったエネルギーをいい形で、こっちに持ってくることができたと思います。

――近年は俳優のみならず、ミュージシャンやカメラマンとしてもマルチに活躍されていますが、そのなかで俳優業はどういう位置づけなのでしょうか?
窪塚洋介ここ最近はレゲエDJで食べてるんですよ。基本的に活動のベースは、卍LINEなんです。さっきもお話ししましたが、ふだん考えていること、感じていること、怒っていること、願っていることが、卍LINEを通して歌に出てきます。ちょっと言い方が難しいんですが、“俺がなりたい俺”が卍LINEなんです。それがあるから、現実的に生活ができていて。それがあるから、映画は本当にやりたいものだけをやることができる。食っていくために俳優をやらなければならない、ということがないので。それが音楽にも俳優業にも100-100のエネルギーで挑むことができることにつながっていて。すごくありがたいと思っています。

20代の早い段階でドラマは辞めようと思った

――俳優としての窪塚さんへの需要も高いと思うのですが、“本当にやりたい”と思える作品とは?
窪塚洋介台本を読んだインパクトと、あとは誰が出演するのか、監督は誰がやるのかといった情報をもとにした直感ですね。自分がワクワクしているかどうかは大きいです。あと、漫画原作の作品も『ピンポン』をやったころは好きだったんですけど、最近はちょっと多いかなと思っていて。どこかでオリジナルの作品に挑戦したいなという気持ちはあります。

――最近はテレビドラマにはほとんど出られていないようですが。
窪塚洋介そうですね。20代の早い段階でドラマはもう辞めようと思いました。今は出るつもりはないです。もちろん素晴らしいテレビ局のディレクターがいるのは知っていますし、『北の国から』の杉田成道さんなど実際に僕にすごく大きな影響を与えてくれた方もいます。でも、ドラマと映画の現場の温度の違いが、僕には大きくて。映画は基本、カメラ1台で、あれだけの大人数が集まって、ひとつの瞬間を撮るために集中します。たしかに、カメラ位置を変えて同じ芝居を2回、3回やるより、複数台で1回で撮ってほしいというのがふっと頭をよぎることもあるんですが、でもやっぱりそうすることによって出てくる画の力の違いがあります。やるのであれば、温度が高いところにいた方が俳優として上がっていけるわけですし、ギョーカイの政治的なことや人気だけにとらわれず、自分のクリエイティブを絡め取られない場所で自由にやっていきたいんだと思います。

――今後、海外作品への出演は?
窪塚洋介英語を学びながらですね。今のままではハリウッドで勝負できるとは思えないので、少しだけ開いた向こうへの扉を押し開いていけるかどうかは、僕のこれからの努力によると思うから、それも見据えつつ。でも地に足をついて、無理することなく、背伸びすることもなく。必要以上に自分を大きく見せる必要もないし、小さく見せる必要もない。そのまま等身大でまかり通す、という感じですね。でもやっぱり日本が好きなので、この国で力を発揮し続けたいという気持ちもあります。

――本当に窪塚さんって波瀾万丈な人生ですよね。
窪塚洋介高校までは普通だったんですけどね(笑)。それがコンプレックスみたいなところもあったので、その反動があっての今というところもあるのかな。でも、それが活かせる仕事なので、それを栄養にいろいろな役に挑戦していきたいと思っています。
文:壬生智裕/撮り下ろし写真:逢坂 聡
ヘアメイク:KATSUHIKO YUHMI(THYMON Inc.)

沈黙-サイレンス-

 17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。
 日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、そのなかで弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。
 かたくななロドリゴに対し、長崎奉行の井上筑後守は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。次々と犠牲になる人々。守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは――。

監督:マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールド リーアム・ニーソン アダム・ドライバー 窪塚洋介 浅野忠信 イッセー尾形 塚本晋也 小松菜奈 加瀬亮 笈田ヨシ
2017年1月21日(土) 全国ロードショー
(C)2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.
【公式サイト】(外部サイト)

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索