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劇的人生で円熟味増す窪塚洋介は、ハリウッド御用達の名優となりうるか?

 俳優の窪塚洋介(37)が、マーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙−サイレンス−』(2017年日本公開)に続き、ハリウッド進出2作目となる『リタ・ヘイワースと手榴弾(仮訳邦題)』に主要キャストとして出演することが決定した。『沈黙〜』は数年におよぶオーディションの末、ようやく手にした切符だったが2作目はオファーを受けての出演。

 デビュー間もないころから、そのルックスとズバ抜けた演技力で俳優として高評価を得ながらも、生死をさまよった転落事故を機に、レゲエシンガー・卍LINE(マンジライン)として音楽活動を開始したり、舞台に初挑戦したりとその人生は波乱万丈。俳優のみならず、人間としても円熟味を増しているように思える。近年、日本人のハリウッド進出が顕著だが、渡辺謙や浅野忠信、菊地凛子などのように、窪塚もハリウッド御用達の俳優としてその名を世界に轟かすこととなるのだろうか?

好青年から一変、奇抜な役がハマり一躍ブレイク

 窪塚の俳優デビューは16歳の時、1995年放送のドラマ『金田一少年の事件簿』第1シリーズ(日本テレビ系)。甘いマスクに高身長というスマートなスタイルで、いわゆる“イケメン俳優”としてさまざまな作品に参加し、98年に出演したドラマ『GTO』での優等生・菊池善人役で世間の注目を集める。そこで、同世代を中心に女性たちの黄色い声援を浴びた窪塚だったが、2000年の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)では女性はもちろん、演劇ファンたちの心もつかみ、一躍ブレイクを果たすことになる。なお同作は、今や日本を代表する名クリエイターである、宮藤官九郎(脚本)、堤幸彦(チーフ演出)両名の名を世間に知らしめた意欲作でもある。

 「このドラマで窪塚さんは、金髪にオーバーサイズのファッションを纏った池袋のカラーギャング集団・G-Boysのリーダー、通称“キング”役を好演。普段はいい加減ですが、ケンカになると最強で超残忍になるというブッ飛んだキャラクターは、主人公を食ってしまうほどの強烈なインパクトを視聴者に与えました。同作への出演をきっかけに、『GTO』などでの好青年なイメージから一変。映画『ピンポン』ではおかっぱ頭の高校生卓球選手、『凶気の桜』(共に02年)では暴力的なバリバリの右翼を、『魔界転生』(03年)ではかつて沢田研二さんが演じた超能力者・天草四郎時貞を演じるなど、奇抜な役柄へとシフトしていきました。どの作品も窪塚さんならではの強烈な存在感で圧倒していましたが、当時は俳優歴としてはまだそれほど長くはなかったんですよね。間違いなく若手をリードする憑依型の実力派でした」(エンタメ誌編集者)

人気俳優がまさか…社会に激震与えた転落事故

  • 初主演映画『GO』のDVDジャケット

    初主演映画『GO』のDVDジャケット

 01年に初主演した行定勲監督の映画『GO』では、「第25回日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を史上最年少の21歳で受賞するなど、数々の映画賞を総なめにした。国民的な俳優として地位と名誉を築き、さぁこれから!という人気絶頂の03年5月に一般女性と結婚(12年に離婚)。同年10月に第1子を授かると、子育てを理由に一時芸能活動を休止してしまう。人気俳優の突然の“育休”に世間がザワつくなか翌04年6月、自宅マンションの9階から転落するというあの事故が起きるのだ。

 「人気俳優のまさかの大事故は、とても衝撃的だったのを覚えています。当時は自殺説や薬物説なども囁かれていました。本人は『マンションの向いのコンビニのソフトクリームが売り切れるのが心配で、エレベーターに乗る手順をすっ飛ばしてしまった』などと冗談っぽく語っていますが、真相は今も不明。ただ、窪塚さんのそれまでの役柄や言動、俳優としての憑依体質から見て、周囲も何となく窪塚さんならあり得ることだな…と思ったのは事実です。実際、映画『ピンポン』では、橋の欄干の上に立って『アイキャンフラ〜イ!』と絶叫しながら川に飛び込もうという名シーンがありますが、あれをリアルにやっちゃったんだという“窪塚伝説”が広まったんです」(前出・編集者)

淘汰していく活動の中でさらに輝きを増す個性

 翌05年に映画『鳶がクルリと』で俳優復帰するが、事故の“後遺症”は大きくしばらく世間の目はどこか冷ややかなものだった。それはこの事故をきっかけに、役者を続けながらもカメラマンやミュージックビデオ監督などさまざまな活動を行い、中でも卍LINEとしては“自身の言葉”でメッセージを伝えるようになったことも影響していると考えられる。ただその違和感は、時間と共に雪解けていく。はじめこそ事故をきっかけに、一度しかない人生をより謳歌しはじめた窪塚の“進化”に世間が追いつかなかっただけで、レゲエシンガーやクリエイターとしてのアプローチは面白いし、映画『パンドラの匣』(09年)や『ヘルタースケルター』(12年)、『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(13年)など相変わらず俳優としての演技力や佇まいは抜群。自分の意思を持ってアンダーグラウンドな世界で精力的な活動をこなしていく中で、俳優としてまた人間として確実に深みを増している。

 そして今、窪塚はハリウッドという新たな挑戦の場に立っている。映画公開は来年以降だが、第1作目の『沈黙〜』に続いて、2作目の『リタ・ヘイワース〜』では、主要キャストとしてのオファーを受けている。第二次世界大戦末期から戦後を舞台にする同作で、窪塚は米女優のエリザベス・バンクス演じる戦場カメラマンと太平洋の孤島で出会い、数10年を共に過ごすという日本兵役。これには窪塚も「またひとつ役者としての軌跡を伸ばし、今後も着実にキャリアを積み上げて、世界の舞台でも力を活かせるよう、海外での撮影に臨みたいと思います」とやる気をみなぎらせている。常に半歩先を行く窪塚にとって、日本よりも世界という大舞台の方が似合っている、と安心してその姿を眺めている人は少なくないはずだ。

 『シン・ゴジラ』の名を借りるなら、今の窪塚は第3形態といったところだろうか。持ち前の個性とルックス、演技力、世界観など、ますます深みを増していく俳優・窪塚洋介が、世界でさらに“化ける”可能性は十分ある。「アイキャンフライ!」と本場ハリウッドでも羽ばたいてほしい。

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