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大泉洋、これまでと違う『真田丸』の“真面目役”で新境地
家のために真面目に尽くす、理想の長男役
朝ドラ『まれ』での愛すべきダメ親父やTEAM NACSでの舞台など、これまでのコミカルな役どころとは違った、堅いキャラクター(しかも歴史上、実在した人物)への重責感からか、キャスティング当初は大泉本人も会見の場で「とてもふざけられない。そのことを強く意識した結果、かたくなり過ぎて、うまくしゃべれない自分にガッカリしました(笑)」と心境を吐露していた。
しかし、ドラマがスタートしてみると、そんな実直な長男像を好演している大泉は、これまでとは異なる新鮮な魅力を放っている。第2回「決断」で、父・昌幸(草刈正雄)のもとへ真田家一行が向かう道中、野盗を斬ることを躊躇した信繁に「ためらうな、おまえのためではない、一族のためだ」と叱咤するその横顔には、一族を導く長としての凛々しさが漲り、ほとんど見たことのない大泉洋の姿があった。
実直な役柄にも芸達者な大泉ならではのおもしろさ
頼もしい兄だが、駄々っ子の母や、向こうっ気の強い祖母には強く言えず、そんなときは信幸に代わり、信繁が話術で取り繕うなど、実に調和のとれた関係が築かれている。終始慎重な信幸だが、ギャグで笑わせるのではなく、信繁とのちょっとした会話のズレから、信幸のおもしろ味が垣間見れる楽しさは、芸達者な大泉ならではのうま味だろう。
『真田丸』の脚本を手がける三谷幸喜氏によれば、英雄を父に持つ「“二代目”が抱えていた誇りとコンプレックス」が、隠しテーマになっている本作。第2回で、武田勝頼の無惨な死を大いに嘆いた信幸もまた、父に翻弄された悩める二代目であった。第1回「船出」から、父・昌幸の器の大きさについていけないと自覚していた信幸は、父の策略と決断に毎回驚かされるばかりだ。第3回「策略」で、生真面目な性格を見越した父に欺かれたことを知った、信幸の落胆ぶりはいたわしい限りだった。
歴史の大きなうねりのなかの一族の姿を描く物語で、信幸のキャラクターは重要なアクセントになっている。その人物像を見事に体現している大泉は、俳優としての存在感をまざまざと見せつけた。コミカルな役が得意で器用な“軽量級”俳優のイメージが持たれがちだったかもしれない大泉が、大河ドラマという大きなステージでこれまでのイメージを払拭するような“重量級”の顔をのぞかせている。