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大泉洋インタビュー『弱々しい一面が似ている?』
自分の答えは間違っていない…という思いはある
大泉まず、原田(眞人)監督が舞台『ドレッサー』(2013年6〜7月)を観に来て下さったんです。さらに終演後、楽屋まで挨拶に来て下さって、そのときは随分と褒めていただいたので素直に喜んでいました。そのあとすぐに、この映画の主演のオファーをいただいたので「思い切った決断をされる方だな」と驚きました。監督は、この映画の原案『東慶寺花だより』を読んだときから、「中村信次郎は大泉くんだと思った」そうなのですが、それを聞いたのはつい先日で(笑)。
映画の台本を読んだときは本当におもしろく、こんなに江戸時代の活気が描かれていて、ワクワクするようなエピソードが入り混じって、笑って泣けるものはないなと興奮したのを覚えています。
――信次郎というキャラクターは大泉さんにぴったりではないかと思いました。
大泉長セリフがあるのを見て、それもあって私に声をかけてくれたのかなとは思いました。『ドレッサー』も長セリフが多かったのですが、今回の台本を読んで監督が求めているスピード感がすぐにイメージできたんです。講談師のようにベラベラしゃべる感じですね。それに、信次郎は子どもっぽいところもあります。医者になりたいという気持ちと、戯作者への憧れもあって、どっちに進むか決めかねている弱々しい一面も見せます。そういうところは私のイメージに近いのかなと思いました。
大泉『まれ』のお父さんとは違いますね(笑)。信次郎は男から見てもかわいらしい人で、医者の卵としてとにかく戸田恵梨香さん演じるじょごの傷を治したいと思っています。傷が治った途端にじょごに恋をしてしまったり、子どものように素直な人だなと思いました。
――大泉さんご自身は、津村徹と信次郎ではどちらに共感する部分が大きいですか?
大泉『まれ』のお父さんはまったく私に近くないです。大きな夢を持たないし慎重な男なので。信次郎のように、進む方向をなかなか自分では決められないというところは、近いと思います。でも私は、最終的に出した自分の答えは間違っていないという思いはありますけど。
いつもおもしろい話で応戦してるわけでは…
大泉大学時代になんとなくアルバイトでテレビに出るようになって、親から「あんた将来どうするの?」と聞かれても「そのとき考えるわ」って言いながらこの仕事を続けてきたので、タレントとして生きていくと決めた瞬間がないんですよ。その結果、今はテレビや映画に出させていただくのも楽しいし、仲間とやっている舞台も楽しい。でも、よく考えると、私らの頃は「将来を決めないこと」に対して追い風だった時代だったのかもしれないですね。不況で就職先も見つからない、だったら好きなことをやってもいいんじゃないっていう空気がありました。
――私も同年代(ロスジェネ、団塊ジュニア)なのでわかります。必ず何者かにならないといけないという圧力がなかったなって。
大泉終身雇用の制度とかも崩れていく時代でしたからね。それは私がこの仕事を続けていくのにいい時代だったのかもしれません。もし別の時代に生まれていたら、慎重な男だからやっぱり就職していたと思いますね。当時、テレビに出ていたのもありますが、北海道での舞台もある程度上手くいっていたので、辞めないで済みました。私は堅実な人間なので、それがなかったら続けていなかったかもしれないです。
――舞台の話が出ましたが、TEAM NACSも男所帯ですし、なかなかこの映画のように女性ばかりに囲まれることは少なそうですよね。
大泉普段はひたすら男のなかにいることが多いですね。この映画の撮影では、東慶寺に入ったら出演者は女性しかいなかったんです。あそこまで控室に女性しかいないと、居場所がないもんですね(笑)。どこにいていいのやらという感じでした。誕生日が撮影期間中だったんですけど、皆さんにケーキで祝っていただいて、こんな華々しい誕生日は初めてでした。
――大泉さんは信次郎のように、困った女性が周囲にいたらどうするタイプなんですか? 例えば相談をされたりしたら……。
大泉困っている人に相談されたら、そりゃ話を聞きますよね。でも、相談しても自分の話しかしないんじゃないか、どんな話でも笑い話に変えられてしまうんじゃないかと思われているようで、なかなか相談されないタイプみたいです(笑)。もちろん、相談されたら一生懸命聞きますよ。いつもおもしろい話で応戦してるわけではありませんから(笑)。ただ、私もそうなんですけど、誰かに悩みを相談しても最後に決めるのは自分なんだよね、とは思っています。
“理想の結婚相手”…そんな時代が来るとは(笑)
大泉そうらしいですね。ファンの方から教えてもらいました。『しあわせのパン』に出演したときに「そろそろそういう時代が来るんじゃないの〜?」なんて言ってたんですが、一向に来なかったんです(笑)。そしたらねぇ、まさかそんな時代が来るとは……(笑)。
――ナンバーワンに選ばれた理由ってなんだと思われますか?
大泉単純に、私がいたらずっとしゃべっていて家庭が楽しそうだと思っていただいているんですかね。ふだんはそこまでしゃべりっぱなしではないんですけど。こういう調子でずっとしゃべり続けたら、うっとうしいと思いますよ(笑)。
――ただ、昨年『青天の霹靂』でインタビューをさせていただいたときに、「誤解されたままが嫌なんで、きちんと真意を伝えたいタイプ」と言われていて、そこは評判が良かったんですよ。
大泉そうですか(笑)。家庭だけではなくて、私は言い訳は必要だと思っているんです。理由があるのに言い訳しないから、変な誤解が生まれて不幸になっている事例を他の人でよく見るんですよね。きちんと話さないからじゃないかと思うんです。ちゃんと言い訳してくれて、それが納得出来れば許せるし、それを疑わないですね。
――でも、テレビ番組出演やこうしたインタビューだったりは、そこで言い残したものがあると、説明できないときもありそうですよね。
大泉我々の仕事だと、誤解されたまま終わってしまうことはあります。最近、驚いたのは、私が『まれ』の現場で常にスープカレーを差し入れしているって記事があったんですけど、そんなことは一度もないんですよ(笑)。まったく事実がないんですから、もう小説です。これは今、たまたま話す機会があったから良かったですけど、やっぱりそういうことが多い商売ではあります。テレビのバラエティ番組でも、笑ってもらうためにはそう返すしかないでしょっていう場面は多々ありますし。『まれ』でも、「お父さんがひどすぎて娘がかわいそうだから、大泉は北海道に帰れ!」って手紙が番組に届いたそうです(笑)。
大泉不遇な女性のエピソードが中心なんですけれど、そんななかに笑える、泣ける場面が、実に巧みに描かれていて、最後まで飽きることなく観られると思います。がんばっている女性とか、進む方向に迷っている人が観て、何か動き出すきっかけになればと思います。
文:西森路代/撮り下ろし写真:鈴木一なり
スタイリスト:九(Yolken)/ヘアメイク:西岡達也(vitamins)
駆込み女と駆出し男
監督:原田眞人
出演:大泉洋 戸田恵梨 満島ひかり 内山理名 陽月華
2015年5月16日(土) 全国ロードショー
(C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会
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