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キャリア21年の山口紗弥加、“アネゴ肌女優”の第一人者

今期の連ドラで、『サイレーン』(フジテレビ系)に『コウノドリ』(TBS系)と山口紗弥加が掛け持ちでレギュラー出演している。4月期ではWOWOWも含めると3本掛け持ちしていて、今年だけで6本に出演。いずれも脇役ではあるが、『サイレーン』での男勝りな警察官、『コウノドリ』での有能な医師など、どれもアネゴ肌で強めの女性役だ。同じタイプの女優としては吉田羊も思い浮かぶが、ここ最近は母親役などソフトな女性役も多い。山口はデビューから21年、主役はなくても出演作は途切れず、気がつくと独自のポジションを築き上げ、“アネゴ肌女優”の第一人者となっている。

印象に残る存在ではないが安定感に高評価

 山口の女優デビュー作は、1994年のドラマ『若者のすべて』(フジテレビ系)。萩原聖人が演じた主人公の妹役で、両親を亡くした事故の後遺症で自閉症との設定ながら笑顔が印象的だった。10代の頃はアイドル女優的な立ち位置で、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)などバラエティにも出たり、清春のプロデュースで歌手デビューもしている。

 23歳の頃には方向性に悩み、体調も崩して芸能界を「辞めようと思った」と、今年8月にトーク番組『ボクらの時代』(フジテレビ系)で語っていた。だが、最後の仕事のつもりで臨んだ野田秀樹氏の舞台『オイル』で、演技の楽しさを実感して踏み止まったという。その後、蜷川幸雄氏の舞台『エレクトラ』にも出演し、「鼻くそ」などとののしられる厳しい稽古のなかで女優としての地力を鍛えられた。

 連ドラにも毎年数本ペースで出演。『僕と彼女と彼女の生きる道』(フジテレビ系)、連続テレビ小説『わかば』(NHK)、『14歳の母』(日本テレビ系)などの話題作にも名を連ね、主人公の昔の不倫相手、親友のOL、学校の先生といった幅広い役柄を演じてきた。主役ラインからは外れていて、一般視聴者に強く印象が残る存在ではなかったが、どんな役でも自然になじむ安定感は制作サイドの信頼を高めていった。目立たぬところで作品の質を支えている。

認知され始めた“カッコいい色気”女優

 今年の4月期で、『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)の社内の不正を許さない契約社員、『ヤメゴク』(TBS系)のヤクザの嫌がらせにも逃げない医師、『スケープゴート』(WOWOW)の男社会を勝ち抜こうとするテレビ局記者と掛け持ち出演すると、「そういえば、いつもドラマに出ている」との声がネットで挙がるように。さっそうとした役柄、35歳にして衰え知らずの美貌に「カッコイイ」「20代かと思った」「色気もある」といった称賛が相次ぎ、ようやく顔と名前が広く認知され始めた。

 様々なタイプの脇役を演じたキャリアを経て、ここに来て“アネゴ枠”とでもいうような、芯が強くヒロインを支えたりする女性役がオハコに見えてきた。ただ彼女の強みは、大枠はアネゴでも、『コウノドリ』では責任感の強い“鉄の女”、『サイレーン』では“オジサン”のような先輩と、決して似た人物像にならないこと。だからこそ同期での掛け持ち出演もこなせるのだろう。

 山口は若手の頃から、出演前に自分でドラマの人物相関図を作り、スタッフ相手に何度も台詞の読み合わせをしていたという。出番は多くない脇役でも、他の誰でもないひとりの人間としてキッチリ演じ切る。その努力を20年以上続けてきたのが実を結んでいる。ドラマに欠かせない名バイプレーヤーとして、いっそうの活躍が見られそうだ。
(文:斉藤貴志)

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