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近所のおばちゃんから貴婦人まで 怪演女優・キムラ緑子
“ヒール役”でブレイク 遅咲きのベテラン女優
しかし実際は、『悪夢ちゃん』(日本テレビ系)のしっかり者の信頼できる校長役や、『医龍4』(フジテレビ系)の病院を裏で支えるベテラン看護師リーダー、映画『テルマエ・ロマエ』の上戸彩や『嫌われ松子の一生』の中谷美紀などのヒロインの母親役など、幅広い役柄を演じており、視聴者にしてもキムラとは気づかずに観ていた作品が多数あるのである。
現在放送中の『偽装の夫婦』では、人間嫌いの主人公・ヒロ(天海祐希)の育ての母でもある叔母役。ヒロが25年前に唯一愛した男・超治(沢村一樹=ゲイ)と偽装結婚するという、ひと癖もふた癖もある人物ばかりが登場する物語だが、そんなクセ者だらけの中で、主人公ふたりに「お見通しなんだよ全部! このふたりが結婚してもうまくいくとは思えませんけど」と言い捨て、タバコを吸いながら魔女のような目をヒロに向けるといった、ぶっちぎりの毒を放つ役どころを怪演している。
一方『破裂』では、画期的な心臓病の治療法を発表した医大の准教授(椎名桔平)の父でありながら、いっさい認知せずに放置してきた国民的俳優(仲代達矢)の内縁の妻役。仲代をけなげに支えながら、椎名と40年ぶりに再会した父子の仲を取り持つという、明るく聡明な女性を演じており、このまさに両極端とも言える難しい役柄をいとも簡単に演じ分けるところに、キムラの実力のほどが現われている。
演技の幅で魅了 キムラにしかない“凄味”
テレビ局などの制作側にとっても、キムラは貴重な存在だ。劇団時代から培ってきた演技力は折り紙つき、キレイな熟女から化粧っ気のない近所のおばちゃんまで、主役を食わないようにどんな役でもこなす。しかも、朝ドラの“イビリ役”で広く知られるようになってからは、「キムラが出演しているから、そのドラマを見る」という“キムラマニア”まで出現しているというのだから、引っ張りだこにならないほうがおかしい。
50代の熟女優の中でも、キムラほど幅の広い演技力を持った女優はそうはいない。ましてや、視聴者が本当に“怖さ”を感じるような演技ができる女優ともなれば、キムラしかいないかもしれない。遅咲きのベテラン女優とも言われるキムラ緑子だが、これからさらに経験と年齢を重ね、ますます“凄味”のある演技を見せてくれることだろう。
(文/五目舎)