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哀川翔『Vシネの灯はけさねぇよ…“帝王”が語る Vシネ25年の歩み』

気付いたら(主演作)100本を突破していた

――1989年にスタートした『東映Vシネマ』ですが、“当事者”である哀川さんから見て、Vシネというムーブメントをどのように捉えていましたか?
哀川 うーん、 “隙間”とうかね。皆が見逃してきた、見落としてきた、忘れていたのが“Vシネ”だと思うんだよ。

――先ほども仰っていた、心をゆさぶるような“衝動”ですね。
哀川 そうそう。「昔はあったじゃん!!」っていう、置き忘れてきたモノをもう一度拾い上げたって感じだよね。

――“忘れ物を取りに行く”というムーブメントだったんですねぇ。
哀川 うん。そういう気持ちというか、気概でしたね。世間的には眼中になかっただろうけど。ただ、段々と注目作がリリースされるごとに業界的な目はこっちに向いてきたよ。モノによっては劇場公開作品より良い成績出したりね。

――逆転現象が生まれていくワケですね。
哀川 だから、お客さんの“観方”が変わった瞬間だったんだよ。劇場に足を運ぶよりもレンタルで借りて家で観るっていうね。

――新しい“需要と供給”の形が生まれた瞬間でもあった。
哀川 そうだね。だから、観方は変わったけど、良い作品を作れば観てくれるんだなって。そこで細かいこと考えてもしょうがないというかさ……自分自身を信じるしかないよね。

――自分が納得いけばパッケージなんて関係ないと。
哀川 そう! 監督とか製作スタッフの作品に対する情熱があれば、俺ら役者も自然と乗っていくし。だから、Vシネがここまで認められたのは制作陣のおかげ。俺ら役者の功績じゃないんだよ。

――でも、役者陣の熱量もVシネが注目される要因になったと思いますよ。
哀川 いやいや。俺らは呼ばれたから演じて、それがたまたま当たっただけで。たださ、「呼ばれたからには……」って気持ちは常に変わってないよ。

――やるべきことを精一杯やるだけと。で、気づいたら主演作100本を超える『Vシネの帝王』になっていたと。
哀川 気がついたらそうなっていただけでさ……まぁ、嬉しいことですよね。今からそこを目指そうにもなかなか難しいと思うし。(Vシネ)立ち上げからいたからこその結果というだけであって……タイミングだよね(笑)。

――哀川さんのお話を伺っていると、「俺がVシネを支えてきた!!」みたいな発言が皆無なんですよね。そう言っても誰も異論を唱える人もいないと思うんですけど(笑)。
哀川 ないない! あくまで結果論ですよ(笑)。俺ら役者にとって撮影が終わった後に「またやろうね!」って言われるのが一番うれしいことであってさ。「コイツとは2度とやりたくねえ!」って思われたら、もう次は無いワケですよ。だから、いかに監督や制作陣に「またやろうね!」って言わせるかが俺らの勝負であって。その積み重ねで、気付いたら(主演作)100本を突破していたというだけ。

自分自身のことなんかどうだっていいんだよ

――哀川さんのツイッターの発言を見ていて印象的だったのが、「頼まれたことだから一生懸命できる。自分のことなんかどうでもいいんだ」という言葉でした。まさに頼まれたことを一生懸命やってきた25年だったんでしょうね。
哀川 そうだね。「やれよ!」って命令されたワケでもなく、頭下げられて頼まれたことだから。それは自分のこと以上に何とかしないと! って気になるよね。自分自身のことなんかどうだっていいんだよ。それが“仕事”なんだよね。

――周囲の期待に応えることが“仕事”だと。
哀川 皆が「良い!」と言ってくれるなら、俺の意見なんてどうでもいい。俺が「良い!」って思うようなことなら、それは“仕事”じゃないんだよ。

――そこに自我は介入しないんですね。
哀川 しないしない。どうでもいいよ(笑)。撮影だって、「オッケー!」っていうのは監督。俺は撮り終わった後にチェックもしない(キッパリ)。

――徹底してますねぇ(笑)。
哀川 その判断は俺じゃないもん。まぁ、とりあえず変な顔して、鼻水たれてなけりゃいいじゃんって(笑)。

――哀川さんほど“需要と供給”を常に念頭に置いている役者も珍しいですよね。
哀川 俳優やってるとさ、自分自身が無くなるんじゃないか? って恐怖もあると思うんですよ。ただ逆に、やり続けることでその恐怖が解消されるんだよ。だから、俺には“充電”は必要ないよって。

――「俺には“充電”は必要ない」翔語録ですね!! それって終わりがないってことですか?
哀川 いや、終わりはあるよ。ただ、その終わりを決めるのは俺じゃなくて皆さんが決めること。必要とされなくなくなったら“終わり”。自分じゃ“終わり”なんて分からないし、決められないよ。自分で分かるのは、せいぜい“腹が減った”と“お腹一杯”ぐらいだよ(笑)。

――今後も需要がある限り突き進むということですね。今回の『25』もあくまで通過点だと。
哀川 報告だよね。毎年『26』、『27』、『28』って連発で行く?(笑)。でも、それでいいと思うんだよ。そこに需要があればね。

――哀川さん的には何時でもOKだと。
哀川 うん。俺なんかは物事を進めるときは、あらかじめ決め打ちで動くのよ。じゃないと間に合わない! 急に思い立って動いたとしても遅いんだよね。それが音楽業界(※一世風靡 時代)だったのよ……それが俺の経験から基づく実感なんだよね。

――様々な経験をしてきた哀川さんならではの言葉ですね。最後に、哀川翔にとって“Vシネ”とは? をお聞かせください!
哀川 ……消えそうで消えないし、消えるはずがない!って思うよ。

――ぶっといロウソクなんでしょうねぇ。
哀川 1回火がついちゃったら、消しようがない!! この火をどうしていくかは我々、もしくは若い世代の俳優やスタッフが考えていかなくちゃいけないけどね。でも、こういう気持ちを持ち続けていれば、いい方向に進んでいくもんだよ。
(撮り下ろし写真:逢坂 聡)

25 NIJYU-GO

東映Vシネマ25周年を記念した本作は、25億円をめぐる沸騰寸前の緊張状態が一発の銃声で破られる。そのとき、悪党25人の壮絶なる現金強奪バトルロワイヤルが始まった!

 主人公、悪徳刑事・桜井を演じるのは、25周年記念を飾るに相応しい“Vシネの帝王”こと、哀川翔。桜井の相棒刑事・日影には寺島進。そして、小沢仁志、小沢和義、本宮泰風、波岡一喜、竹中直人、大杉漣といったVシネで活躍したキャストが数多く出演。

 男たち以上に、したたかに生き抜く女たちを演じるのは、高岡早紀、岩佐真悠子、鈴木砂羽といった魅惑の女優陣。さらに、石橋蓮司、嶋田久作、笹野高史、袴田吉彦、木下隆行、井上正大、波岡一喜といった一癖も二癖もある俳優が、この≪何でもアリ≫の世界に結集! 監督は、Vシネマ・劇場版『今日から俺は!』シリーズや、オリジナルビデオ『静かなるドン』シリーズを数多く手掛けてきた鹿島勤。

【映画公式サイト】(外部サイト) 2014年11月1日(土)公開 (C)2014東映ビデオ

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