ドラマ&映画 カテゴリ
(更新: ORICON NEWS

韓国映画特集『2014年上半期の韓国映画シーンと制作現場のウラ事情!社会学的に切り込む』

今や映画ファン層全体から熱い視線を集める韓国映画。この夏〜秋も多くの話題作が日本公開されるなか、韓国映画界の2014年上半期の動向を掘り下げる。『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督に韓国映画界の裏側と監督業の実態を聞いた。さらに日本映画大学のハン・トンヒョン准教授に、韓国社会と今の韓国映画の傾向、それを生む社会学的な背景を語ってもらった。韓国映画と韓国社会にエンターテインメントの側面から切り込む。

[本文3]◆『新しき世界』で生まれた新たな女性ファン

 『サニー』で韓国映画の新たな男性ファンが生まれたとするならば、『新しき世界』では、新たな女性ファンを生んだと言えるかもしれない。

 『新しき世界』は当初、ノワール好きの男性の観客を見込んでいたという。しかし、女性にも観てほしいという思いから、配給会社・彩プロの向井渚さんは「映画のなかの男性たちのかっこよさを際立たせるために、宣伝会社とのチームと話し合った結果、スーツの男性の色気が伝わるビジュアルに変更した」と語る。そうした打ち出しの結果、暴力シーンなどが多いものの、観客はほぼ半分を女性が占めることになったという。

 現在、『新しき世界』は2月公開にも関わらず異例のロングランを続けていて、夏になった今でも公開中だ。しかも、女性たちの間では、登場人物のチョン・チョンとジャソンの情の物語に心を打たれた人が多く、リピーターも増えている。こうした『新しき世界』のファンたちは、一部で“沼”にハマったと自称する。また、その“沼”にハマった人々のなかには、『新しき世界』だけではなく、出演俳優たちの過去の作品や次回作、また韓国ノワールというジャンルにも興味を持つようになった人が多いようだ。

 韓国の映画のジャンルとして、ノワールは主軸のひとつになりつつある。最近の作品で見ても、イ・ミンギと、『新しき世界』で組織のナンバー3を演じたパク・ソンウンが皇帝を夢見る男を演じる『皇帝のために』や、チャン・ドンゴンと『アジョシ』のイ・ジョンボム監督がタッグを組んだ『泣く男』。チソン、チュ・ジフンら日本で人気の俳優たちが主演の『良い友達』。伝説の青春ノワールの第2弾である『チング 永遠の絆』。日本で人気のジョンフンが自堕落でクズな三流記者を演じた『野良犬たち』。外見的には完璧な男だが、女性になりたい欲望を隠して裏社会を生きる主人公をチャ・スンウォンが演じる『ハイヒール』などなど、数えきれないほどある。

 これらのうち、『チング 永遠の絆』『野良犬たち』はすでに日本公開が決定しているほか、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで行われる韓国ノワール特集『容赦なき韓国映画』でも上映される。ほかの作品も日本で公開される可能性は高いだろう。

◆K-POPアイドルたちはどうなっているのか

 K-POPアイドルたちは、大作映画でベテラン俳優たちと共演することで、その個性を発揮することも多い。例えば、2PMのジュノは『監視者たち』で、監視班のエースでムードメーカーのリス役で華々しく映画デビューを果たしたが、彼の人懐こいキャラクターがそのままに活かされていた。また『怪しい彼女』では、B1A4のジニョンが主人公の孫でバンドマンを目指すパン・ジハを演じている。ZE:Aのシワンは、『弁護人』でソン・ガンホと共演。それぞれの演技力への評価は高く、韓国では“演技アイドル”と呼ばれている。

 かつてだったら、旬のアイドルの主演で映画が作られることもあったが、今のアイドルは、本格的で評価の高い映画で演技経験をスタートし、ベテラン俳優との現場を経験して本物の俳優を目指すという方向性にシフトしているとも考えられる。

 一方では、世界的な監督のプロデュース作品にアイドルたちが主演として参入する例もある。例えば『海霧』は、ポン・ジュノのプロデュース作品だが、同作でJYJのユチョンは主演として映画界に華々しくビューする。これは、彼がドラマ作品において多くの実績を残したこと、また彼がイ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ソル・ギョングという、現在の映画界で重要な地位にある俳優たちが所属する、演技活動に強い事務所に所属することも関係しているだろう(実際にはユチョンのいる事務所に俳優たちが入ってきたのだが)。

 このほか、キム・ギドクがプロデュースする『俳優は俳優だ』にはMBLAQのイ・ジュンが主演している。俳優がトップにのし上がり、またそこから転落する物語のなかで、体当たりのラブシーンなどにも挑戦的して評価されている。
(文:西森路代)

>>次のページへ [監督1]映画制作の現場、監督の立場……韓国と日本の違い

<<目次リンク>>
・特集本文 [1] [2] [3]
・ファン・ドンヒョク監督インタビュー [1] [2] [3]
・ハン・トンヒョン准教授 対談  [1] [2] [3]
・レビュー&予告編 [1]

韓国エンターテインメント 特集&インタビュー 一覧


 
 
 
 
 


関連リンク

<上半期特集 本文>小休止から復活中?
<監督インタビュー>監督の生活は苦しい!?
<社会学者 対談>社会と自意識の問題…
<レビュー&予告編>夏〜初秋公開話題作☆

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索