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韓国映画特集『2014年上半期の韓国映画シーンと制作現場のウラ事情!社会学的に切り込む』

今や映画ファン層全体から熱い視線を集める韓国映画。この夏〜秋も多くの話題作が日本公開されるなか、韓国映画界の2014年上半期の動向を掘り下げる。『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督に韓国映画界の裏側と監督業の実態を聞いた。さらに日本映画大学のハン・トンヒョン准教授に、韓国社会と今の韓国映画の傾向、それを生む社会学的な背景を語ってもらった。韓国映画と韓国社会にエンターテインメントの側面から切り込む。

[本文1]◆2014年前半、韓国映画市場は小休止から復活中?

 2013年は、韓国の映画館の来場客が年間で2億人を超え、500〜1000万人クラスのヒット作が何本も生まれた。それほど韓国映画シーンが活況を呈していたのだが、2014年上半期はどうなっているのだろうか。

 実は今年上半期は、ハリウッド作品にシェアを奪われて、昨年ほどの活気はない。しかしそれは、昨年までの勢いがとび抜けてすごかったということだ。今年前半は、ソン・ガンホ主演で2013年12月に公開された『弁護人』が1100万人、同じく2013年12月公開のコン・ユ主演『サスペクト 悲しき容疑者』が400万人、2014年1月公開の『怪しい彼女』の860万人と、昨年からの勢いでヒット作が出ていたものの、春以降はその勢いが弱まっている状況だ。

 この一時的な低迷には、セウォル号沈没事件などの影響で、映画館への足が遠のいたことも理由のひとつとして考えられ、そこからの復活の足がかりとなる作品が公開されることを韓国の観客も待っている状態であった。そんななかにあって、5月にはヒョンビン主演の『逆鱗(原題)』、リュ・スンリョン主演の『標的』などがヒットし、韓国映画のシェア率が上昇。また7月に公開された、チョン・ウソン主演の『神の一手』が、2014年公開作品のなかで最短で100万人の動員を記録したことで、ふたたび活況を取り戻すのではないかと期待されている。

◆日本で公開される韓国映画は黄金期のヒット作

 しかし、日本でこの夏から秋にかけて公開される韓国映画は、韓国映画界が“小休止”する前の作品で、ヒット作が目白押しだ。

 例えば、公開中またはこれから公開の作品でみると、『怪しい彼女』は860万人、『観相師−かんそうし−』は913万人、『シークレット・ミッション 隠密に偉大に』は700万人、『テロ,ライブ』『監視者たち』『サスペクト』などが500万人前後のヒット。実在の事件をもとにした社会派作品『ソウォン/願い』『マルティニークからの祈り』も200〜300万人ほどの動員を記録している。

 こうして観客数を指標にするのは、韓国の映画は、観客動員数と脚本の出来など映画のクォリティが比例することが多いからだ。また、昨今の日本の韓国映画ファンも、そうした韓国映画ならではのプロットの良さを求めている人も多い。実際、『新しき世界』や『観相師−かんそうし−』で今や韓国のトップ俳優の仲間入りをしたイ・ジョンジェも、聯合ニュースのインタビューで、「しっかりしたストーリーのシナリオ作成能力」が韓国映画の強みであると語っている。

 では、それ以外にも、日本の韓国映画ファンは、韓国映画にどのような要素を期待しているのだろうか。

>>次のページへ [本文2]韓流とは違う流れ!?韓国映画ファン層の変化

<<目次リンク>>
・特集本文 [1] [2] [3]
・ファン・ドンヒョク監督インタビュー [1] [2] [3]
・ハン・トンヒョン准教授 対談  [1] [2] [3]
・レビュー&予告編 [1]

[レビュー&予告編]夏〜初秋公開の話題作をCHECK☆

◆『怪しい彼女』(公開中)メイキング特別映像
 
 70歳のおばあちゃんが外見だけ20歳に戻ってしまう、おばあちゃん女子が巻き起こす入れ替わりファンタジーのドタバタコメディ。が、そこから母と息子の深く切ない愛の話に落としこんで涙を誘う感動作。あの若き韓国スター、キム・スヒョンの出オチに爆笑!! ⇒映画詳細はこちら
◆『ソウォン/願い』予告映像(8月9日公開)
 
 8歳の女の子が暴行を受け、心にとてつもなく深い傷を負い、体には一生の障害が残ってしまう、実話をもとにした物語。女の子のあまりの悲しさと苦しさ、両親の心中が痛いほど伝わってきて、心が悲鳴をあげそうなほど観るのがつらくなる映画。でも、心ある周囲の支えが温かく、そっと寄り添うようにやさしく描かれ、涙がこらえきれなくなる。と思うと、好奇の目を向けるマスコミ、裁判における加害者への憤りと悔しさがどっと押し寄せる。激しく感情を揺さぶられる、観るのがとてもしんどい……が、すばらしい作品。全体を通して丁寧にやさしく描かれる脚本が秀逸。『建築学概論』も手がけたキム・ジヘが脚本に参加している。 ⇒映画詳細はこちら
◆『テロ,ライブ』予告映像(8月30日公開)
 
 ヤクザでも北朝鮮諜報員でも猟奇殺人犯でもない、インテリふうなニュースキャスター役のハ・ジョンウが新鮮でカッコいい。ほぼワンシチュエーションで展開される作品ながら、その設定とストーリー展開のアイデアが秀逸で、ググッと物語の世界に引きこまれる。権力や社会システム、マスコミの姿勢を揶揄するメッセージも、クスっと笑わせながら批判するセンスがいい。ラストは韓国映画らしくてしびれました。大きな予算はかけられてなさそうだが、アイデアが光るすばらしい作品。 ⇒映画詳細はこちら
◆『マルティニークからの祈り』予告映像(8月29日公開)
 
 身に覚えのない麻薬密輸容疑で捕まった平凡な主婦が、フランス領のマルティニーク刑務所で拘束され、家族のもとへ帰るまでの765日間を描く。国の対応のディテイルがリアル。そこへのカウンターとして動くマスコミとネットユーザーがポジティブに描かれ、なにもしないダメな国と善意の市民の対決の構図の結末が溜飲を下げる。ラストの空港での母子の再会の描き方が、ありがちな劇的な感じではなく、静かだがリアリティがあり涙を誘う。言葉がまったく通じない場所で孤独と絶望にさらされる2年間……。彼女のつらさがひしひし伝わってきて、こちらも観ているのがつらくなる。 ⇒映画詳細はこちら
◆『サスペクト 哀しき容疑者』予告映像(9月13日公開)
 
 コン・ユ主演のアクション・エンターテインメント大作。脱北した元北朝鮮エリート工作員と韓国軍人との因縁の対決と友情を描く。家が所狭しとならぶ路地での激しいカーチェイス、ド派手ながらシリアスなアクションシーンが圧巻。社会性の強い作品でもあり、韓国社会における脱北者のリアルな諸問題もしっかり描かれている。 ⇒映画詳細はこちら
◆『野良犬たち』予告映像(8月23日公開)
 
 主人公は賭博と不倫で崖っぷちの生活を送るクズ男。そんな主人公が山奥の村に迷い込むと、閉鎖的な社会のなかで生きる村民たちの裏の顔に気づき、男たちの欲望の餌食となっているひとりの女性を救おうとする。実際にあった事件をもとにする物語。狂気の村民との対決を通して主人公は再生していき、女性は峻烈な復習を果たそうとする。そのさまはやはり韓国映画ならではで痛快。観るものによっては不快かもしれないが……。 ⇒映画詳細はこちら
◆『さまよう刃』予告映像(9月6日公開)
 
 作家・東野圭吾氏の大ベストセラー小説が韓国クライム・サスペンスとして映画化。たったひとりの娘を陵辱され殺された父親は、非道な少年たちへの果てしなく壮絶な復習の道を突き進む。“恨の文化”韓国発ノワールの真骨頂。生々しい現実感につつまれる衝撃作。 ⇒映画詳細はこちら
◆『監視者たち』予告映像(9月6日公開)
 
 “犯罪組織を監視する専門家”警察内特殊組織監視班と、彼らの捜査網をかわしながら完全犯罪を次々と成し遂げていく犯罪グループとの対決を描くクライムアクション大作。映画初出演ながら、2PMのジュノの好演が光る。 ⇒映画詳細はこちら
◆『チング 永遠の絆』予告映像(9月6日公開)
 
 2001年に韓国で社会現象を巻き起こした青春ノワールの名作『友へ チング』の続編。前作と同じクァク・キョンテク監督がメガホンをとる。前作から17年後の2010年を舞台に、今作でも複雑な因縁に捕らわれた男たちの熱く切ない生き様を力強く描き出す。やはりハードなバイオレンスシーンが満載。 ⇒映画詳細はこちら
◆『愛の棘』予告映像(9月27日公開)
 
 女子高生の狂気の愛に追いつめられる高校教師を描く、スキャンダラス・サスペンス。純粋で盲目的な女子高生の恋は次第に狂気に変わっていき、ついには周囲に殺傷事件が起こる……。 ⇒映画詳細はこちら
◆『マイ・リトル・ヒーロー』(公開中)
 
 三流音楽監督と優勝確率0%といわれた少年が、ブロードウェイを目指してミュージカル番組のオーディションに挑み、奇跡を起こしていく感動のヒューマンドラマ。ミュージカルが盛んな韓国で、『スリル・ミー』などの人気作を手がけたイ・ジョンソクがミュージカルシーンを演出している。

<<目次リンク>>
・特集本文 [1] [2] [3]
・ファン・ドンヒョク監督インタビュー [1] [2] [3]
・ハン・トンヒョン准教授 対談  [1] [2] [3]
・レビュー&予告編 [1]

(文:編集部・武井保之)
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