• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
オリコンニュース

山里亮太&若林正恭「たりないふたり」はいかに生まれたのか? 安島隆氏が誕生の瞬間を克明に記す【全文公開】

 お笑いコンビ・南海キャンディーズ山里亮太オードリー若林正恭による『たりないふたり』の仕掛け人・安島隆氏が、書籍『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)を刊行した。ORICON NEWSでは、同書の魅力を伝えるべく、第1章から「たりないふたり誕生」のパートを紹介する。

『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)

『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全2枚)


 演出家として誰もが知るほどの大ヒットを飛ばしたわけでもない、会社員として仕事術を語れるほどの成果を上げたわけでもない、キャリアは山あり、谷あり。圧倒的に、谷多めで深め。お笑いとテレビとライブの波間で必死にもがくテレビ局員の姿は、会社や学校、家庭で上手に生きられない「たりない」あなたの胸に突き刺さるものとなる。

 バナナマンおぎやはぎラーメンズなど、ブレイク前の人気お笑い芸人たちとの知られざるエピソードのほか、山里、若林とのスペシャル対談も必読だ。

■第1章「たりないふたり誕生」全文

山ちゃん、若林くんのそれぞれと出会い、二人を引き合わせた。そしてとにかくライブをやろうと決めた。「飲み会が地獄」「テレビの収録が地獄」、加えて「恋愛も同じくらい地獄」「一人暮らしだけは天国」など、中野の出会いの会で異常に盛り上がった話を漫才や企画のネタにする、と自分の中で芯だけ決めて、3人による打ち合わせを始めた。

ある時は幡ヶ谷のカフェ。ある時は中野のカラオケボックス。仕事終わりに声をかけ合って集まる。時間は大体深夜か週末。なぜ地獄なのか、そこから普段どうやって逃げているか。アイスティーを何杯おかわりしたかわからなくなるほど時間を忘れて話し続けた。中野の出会いの会では、二人の会話のノイズになると思って自分の話はしなかったけれど、本当は彼らの言葉に心の中で首が痛くなるほどうなずいていた。

僕自身、ずっとテレビ局とテレビという生き物にうまくハマれていない感覚があった。そこで、この打ち合わせでは「ネタを作るヒントになれば」という大義名分の下、存分にダメな自分をさらけ出した。「会社のフロアで苦手な先輩がこちらに向かって歩いて来るのを発見した時は、いくら距離があろうとも必ずトイレに避難し、先輩が通り過ぎるのを待つ。時々、先輩が途中で寄り道をすることによって、トイレから出る自分と完全にタイミングが合ってしまい地獄の鉢合わせ」「収録前、タレントやプロデューサーらで陽のオーラ溢れるロビーに行かなきゃいけない時は、風邪をひいてないのにマスクをする。口元が見えないので、目じりにしわを作れば簡単に作り笑い完成」(コロナ禍遥か前の技です)

「普段、破天荒な武勇伝を後輩に自慢し鬼才ぶる先輩D(ディレクター)が、さらに上の先輩Dの平凡な指示に完全に言いなりでダサい」(ただの悪口です)。自分のコンプレックスが笑いに変換されていく。いつしか気持ちよくなって関係ない愚痴まで我先に吐き出す始末。結果「安島はテレビマンっぽくない」という「褒め」か「けなし」かわからないコメントを二人からもらう羽目に(テレビマンにどんな印象持ってるんだ)。一旦心を開いたら、陽×陽、陽×陰の組み合わせよりも何倍も急速に親しくなるのが陰×陰の組み合わせじゃないかと思う。僕たちは焦っているみたいに、距離を縮めた。

そして夜な夜な自分たちのダメっぷりを吐き出し合い、笑い合った。そのうちに、二人それぞれとの初対面で聞いた「テレビへの違和感と自分の実力不足」という共通した悩みを、軽くすることができている気がした。少なくとも僕は軽くなっていた。同じ弱さや痛みを持つ仲間と、心でつながり、言葉を交わすこと。自分が強くなったと勘違いできた時間だった。ちなみにこの時、僕は編成部所属の35歳。職務は新しい番組企画を開発することだったので、このライブは本業とは関係なかった。元南キャンのマネージャーで、その頃はライブ会社を立ち上げていた片山さんにサポートしていただいていた。

僕の企画演出料はなし。自分の中では「趣味の一環」だった。将来何かにつながるプランがあったわけでもなく、とにかく、山ちゃんと若林くんと自分が最高に笑った体験をまた味わいたい。お客さんにも味わってほしい。それだけだった。ライブ開催日は2009年8月24日、会場は東京・下北沢の北沢タウンホールに決まった。座席数300ほど。出演者の熱もお客さんに伝わりやすく、お笑いライブには程良いキャパシティの劇場だった。この時は、12年後にまたこの会場でやることになるとは思ってもいなかった。

内容が固まってくる中、ライブのタイトルを考える必要があった。打ち合わせで楽しそうにエピソードを重ね合う二人の顔を思い浮かべたら、「たりないふたり」という言葉がすとんと落ちてきた。社交性も社会性も恋愛経験もたりない。だが、そんなコンプレックスも二人一緒なら楽しくさらけ出せるし、それでいい!(ほんとはちょっとうらやましい)と開き直る山ちゃん&若林くんの二人にピッタリ……いや、ちょっと待て。これはライブタイトルではない。ユニット名だ。つまり彼らを仮にも“コンビ”としてとらえることになる。

もちろんお互いには、大切な相方がいる。だけど頭からどうしても「たりないふたり」が離れない。何よりあの二人はどっからどう見ても……同志だし、ライバルだし、将来的にはきっと親友、とひと口で言えないほどの関係になる……かもしれないし。正式なコンビではないけど、「ふたり」と括っていいんじゃないか。何より他の誰とも代わりがきかない、この「ふたり」が揃ってこそ、「たりない」間性を唯一無二の笑いに変えられるのだから。

山ちゃんと若林くん、別々に説明すると同じ答え。意外なほどあっさりと「いいすね」。揺るぎない本業があるからこその、同意だったのだろう。こうして山里亮太と若林正恭は、ここから先12年にわたり、本業とは別にこのユニット名を背負うことになる。しかし僕も含めた3人にとって、「趣味の一環」にしてはあまりに重い、人生を懸けた武器を携えてしまったことを、そしてこれが思わぬ明日を生み出すことを、僕たちは知らなかった。

【安島隆(あじま・たかし)】
1973年東京都生まれ、96年日本テレビ入社。ゴールデン帯から深夜番組、ライブまでお笑いを中心にヒット企画を演出する異色のディレクター。バナナマン・おぎやはぎ・ラーメンズが組んだ「君の席」は伝説的なユニットに。南キャン山里・オードリー若林のユニット「たりないふたり」はライブと番組連動の先駆けとなり、2021年の解散配信ライブはお笑い単独ライブ史上最多の5万5000人が視聴した。その他、企画演出として「得する人損する人」「コレってアリですか 」「落下女」「解決ナイナイアンサー」等多数。若林・山里を描いたドラマ「だが、情熱はある」では、2人をつなげたプロデューサーのモデルにもなった。

>このニュースの流れをチェック

  1. 1. 山里&若林「たりないふたり」の仕掛け人・安島隆氏、著書『でも、たりなくてよかった』発売「25年を全部書きました」
  2. 2. 山里&若林「たりないふたり」の仕掛け人・安島隆氏、25年の“もがき史”書籍化
  3. 3. 山里&若林「たりないふたり」の仕掛け人・安島隆氏、25年の“もがき史”目次大公開 締めは山里との対談
  4. 4. 山里&若林「たりないふたり」の仕掛け人・安島隆氏、25年の“もがき史”年表公開 詳細な軌跡がひと目でわかる
  5. 5. 安島隆氏、25年の“もがき史” 「たりないふたり」山里&若林のコメント解禁
  6. 6. 安島隆氏、25年“もがいて”たどりついた「たりなくてよかった」 “たりないふたり”山里&若林が見守る新画像
  7. 7. 山里亮太、約10年前の若林正恭との「たりないふたり」秘蔵ショットに指摘「ピントが…」
  8. 8. 山里、若林の写真を指で隠す? 「たりないふたり」安島氏の“指摘”に「タマタマデス…」
  9. 9. 山里&若林「たりないふたり」の仕掛け人・安島隆氏“もがき史”発売 スペシャル対談も必読
  10. 10. 山里亮太&若林正恭「たりないふたり」100分超の即興漫才後の秘蔵カット「この後まさかの、秋の波乱が…」
  11. 11. 水卜麻美の魅力とあふれる熱量…「たりないふたり」仕掛け人・安島氏がつづる
  12. 12. 「たりないふたり」仕掛け人・安島隆「コンプレックスこそが、人生の武器になる」 書籍化決めた“若林の言葉”【はじめに公開】
  13. 13. 山里亮太&若林正恭「たりないふたり」はいかに生まれたのか? 安島隆氏が誕生の瞬間を克明に記す【全文公開】
  14. 14. “夢のコント番組”『落下女』なぜ半年で終了? 安島隆氏がつづる苦い思い出【全文掲載】
  15. 15. 水卜麻美が持つ“多面的な魅力” 若林正恭とフィットした「犬も食わない」 安島隆氏が誕生秘話つづる【全文掲載】

▼ その他の流れをもっと見る

関連写真

  • 『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)
  • 『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)目次

求人特集

求人検索

 を検索