ドラマ&映画 カテゴリ
オリコンニュース

映像と音響への徹底的なこだわり 映画館「109シネマズプレミアム新宿」の半端ない没入感

 2023年4月、東京・新宿歌舞伎町にオープンした東急歌舞伎町タワー9階・10階に「109シネマズプレミアム新宿」がオープンした。最大の特色は、先日、惜しくも他界した音楽家・坂本龍一氏が同館全シアターのサウンドを監修し、曇りのない正確な音を可能にする音響システム「SAION(サイオン)-SR EDITION-」が導入されている点にある。また、シアター内は音響にとどまらず、隅々にまで坂本氏の提案が活かされており、映画鑑賞前後に観客が利用できる専用ラウンジの併設や、そこで流れるBGMも手掛けるなど、細部にまでこだわりぬいたプレミアム感が味わえる映画館となっている。

「109シネマズプレミアム新宿」建築・施工段階から極上の音響を実現する設計に

「109シネマズプレミアム新宿」建築・施工段階から極上の音響を実現する設計に

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全8枚)


■ハイエンド・オーディオ的な音の追及が新しい音響システム「SAION -SR EDITION-」

 「音へのこだわり」を謳い文句とする映画館は全国各地に多数存在している。ただその多くは、どちらかと言えば「大迫力」「大音響」、あるいは「立体音響」といったアミューズメント的な方向性が強い。もちろん、それも映画サウンドの醍醐味の1つであることは間違いないが、音響システム「SAION -SR EDITION-」が他の劇場音響システムと明確に一線を画している点は、音を探求する方向性がハイエンド・オーディオ的であるということ。実際に筆者も数本の映画と音楽ドキュメンタリー作品を「109シネマズプレミアム新宿」で鑑賞したが、オーディオ的に言うと、低音から高音までがフラットに聴こえ、極めて繊細な響きから大音量までクリアに聴けるサウンドが実現されていた。

 全くもって音楽的なサウンド、それは映画音響としても数多くのアドバンテージを生んでいる。例えばささやくような台詞も明瞭に聴こえるうえに、そよ風に草木が揺れる音や、映像に映っていないアングルにいる人物の衣擦れの音までもが実に細やかに聴こえてくる。それゆえ、まるで自分がその場にいるような臨場感と没入感が得られるのだ。当然ながら、大迫力のサウンドも耳に痛さを感じない自然さがある。

「109シネマズプレミアム新宿」ラウンジ。BGMには坂本龍一氏作曲「109 Shinjuku - Lounge」が流れる

「109シネマズプレミアム新宿」ラウンジ。BGMには坂本龍一氏作曲「109 Shinjuku - Lounge」が流れる

写真ページを見る

 同館を運営する東急レクリエーションの音へのこだわりは、まず2021年11月、東京・町田市にある「109シネマズグランベリーパーク」にオリジナルの音響規格「SAION」を導入したところから始まった。

「ご家庭で手軽に映像コンテンツが楽しめるようになってきた今、我々映画館は何ができるかと考えた時に、その映画の音を最適な状態にチューニングして届けたいという考えに至ったのです。一般的な映画館の音響は、平均的なスピーカー性能に合わせて高音部分(高域)が少々弱めに味付けされる傾向にあります。ただ近年、ODS(音楽や舞台など映画以外の映像コンテンツ)やライブ・ビューイングが増えてきたこともあり、しっかりと高音部分を再生できるスピーカーやサウンド・プロセッサーを改めて選び直し、曇りのない音をきちんと出そうということろからSAIONシリーズは出発しました」(東急レクリエーション映像事業部・西野晃弘氏/以下同)

 「109シネマズグランベリーパーク」に導入されたSAIONのサウンドは次第に評価を高め、今年6月には「109シネマズ名古屋」と「109シネマズ大阪エキスポシティ」にも導入されている。こうした展開と並行して、コロナ禍に同社が進めていたのが、「新宿歌舞伎町にどのような映画館を作るべきか」という検討だった。

座席は全席が座り心地満点のプレミアムシート

座席は全席が座り心地満点のプレミアムシート

写真ページを見る

■シアター音響監修を手掛けた坂本龍一氏のこだわりが息づく映画館に

 新宿駅周辺には、その時点で既に大小9つの映画館が存在した。「その新宿で映画ファンを奪い合うのではなく、映画の楽しみ方を広げられる映画館を作るべきだと考えました」と、当時の状況を西野氏は語ってくれた。

「自宅にはさまざまな雑音があり、映画に浸るのは難しい。そういう一切の雑音を遮断し、映画の世界に没入していただける濃密な時間を作ることが映画館の役割じゃないか、と。それに適したスピーカーを検討する中で、坂本さんとの出会いがありました。『最高の映画館を作りたいのでお力添えをいただけないか』と直々にお話して、ご快諾いただきました」

 坂本氏の協力が得られたことで、新たにオープンする映画館のコンセプトは次第に明確になっていった。まず肝心の音響面では、SAIONの良さはそのままに、「109シネマズグランベリーパーク」では踏み込めなかった「もっとこうしたい」という部分を徹底的に実現していった。具体的には、電源電圧を一般家屋用の100Vではなくレコーディングスタジオと同じ200Vに変え、パワーアンプやスピーカーケーブルは世界中の物を集めて聴き比べを行い、パワーアンプは日本初導入となるリニアリサーチ社製「44C20」を採用。ケーブルに関しては、オリジナルのものが新規開発され、スピーカーも専用にカスタマイズされた。

CLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジ「OVERTURE」

CLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジ「OVERTURE」

写真ページを見る

 全席がプレミアムシートの座席のサイズは、一般的なシネコンの最大約2.3倍になっており、シートは座り心地の良さに加え、姿勢を変えてもガサゴソといった雑音が出にくい素材を使う工夫が為されている。さらに、外部の音がシアター内に侵入しないよう二重扉を備えるなど遮音性能を極力まで高め、客席を取り囲むように配置された多数のスピーカーが互いに影響を及ぼさず音を完全吸収するように、吸音材の材質や形状、取り付け角度が緻密に計算された壁面となっている。つまり、既存のシアターの改修で音質を向上させるという考え方ではなく、建築・施工段階から極上の音響を実現する設計となっているわけだ。そのうえで、上映する映画ごとに、音量感や全体的なバランスを毎回微調整しているという。

「建物の構造から音にこだわった、SAIONをさらに究極まで極めたものとして「SAION -SR EDITION-」と新たにブランド化しました。“SR”には、“スーパー・リアル”や“スーパー・レア”といったいろいろな意味を込めていますし、音響を監修された坂本さんのイニシャルでもあります」

 そのうえで、ドルビーの立体音響システム「Dolby Atmos」対応のシアター3、さらに新宿地区初となる270度の3面ワイドビューシアター「ScreenX」導入のシアター6、坂本氏の提案により映画文化を残すという意味も込めて35mm映写機を設置したシアター8など、全8スクリーンがラインナップされている。そのいずれも、コストパフォーマンス性よりも高画質を優先し、光のむらが出にくい低反射率のスクリーンと発色のよい高出力のクリスティー社製最新RGBレーザープロジェクタを採用するなど、映像面でも“極上”を追求している。

シアター7:側面の吸音材は材質や形状、取り付け角度が緻密に計算されている

シアター7:側面の吸音材は材質や形状、取り付け角度が緻密に計算されている

写真ページを見る

■「どの映画を観るか」から「どのシアターで観るか」へ 映画の新たな鑑賞スタイルを提案

 そして他の映画館にはない専用ラウンジもまた、坂本氏とのディスカッションの中から具現化されたものだと言う。

「映画の鑑賞前後の時間をどう過ごしていただくかもテーマでした。ある時、坂本さんとやり取りする中で『映画を観る前に、日常生活で疲れた耳を休めて、きちんと音に向き合えるブレイクタイムが必要だ』というお話が出たのです。そこで、都会の生活から距離を置いて気持ちをフラットにしていただき、それから映画と向き合っていただくためのラウンジを設置しようと方向性が定まりました」

 料金プランは「CLASS A」(4500円)と「CLASS S」(6500円)の2タイプ。鑑賞者は誰でも上映1時間前からラウンジを使用できる。料金にはフード代も含まれており、ラウンジ内の「WELCOME CONCESSION」でポップコーンやソフトドリンクを味わうことができるほか、有料でアルコールやフードを注文できる「THE BAR」も設置。また「CLASS S」チケット購入者には、鑑賞後に利用できるプレミアムラウンジ「OVERTURE」も用意されており、映画の余韻を味わいながら、日常生活へと戻っていくことができる。

「映画館の良さ、映画の本質とは何だろうと考えると、暗闇の中で誰かと物語を共有する一体感ではないかと思うんです。静かな一体感もあれば、みんなでお腹を抱えて笑うような一体感もある。そのための、音が担う伸びしろはまだまだあって、映画の楽しみ方やその可能性を「SAION -SR EDITION-」でもっと広げられると考えています。例えば、ここで旧作の『ラストエンペラー』を観たら印象が大きく変わるかもしれない。新作に関しても『この映画は「SAION -SR EDITION-」で観てみたい』と思っていただければとても嬉しいです。今後は、そういったお客様の気持ちをくすぐるようなイベントも企画していきたいと思っています」

シアター6には新宿エリア初導入となる“視界270度・3面ワイドビュー”の「ScreenX」を導入

シアター6には新宿エリア初導入となる“視界270度・3面ワイドビュー”の「ScreenX」を導入

写真ページを見る

 スポーツ分野ではVIPルームの使用や上質な飲食を楽しみながら観戦できるホスピタリティプログラムが、海外では一般的となっており、日本でも少しずつ広がりを見せている。「109シネマズプレミアム新宿」は、まさに映画鑑賞における同コンセプトの先駆け的な存在と言えるだろう。こうした鑑賞スタイルが少しずつ広がれば、音響によって映画への没入感や、音によって作品の見え方が違ってくるという映画鑑賞の新しい楽しみ方が定着していくかもしれない。

 少なくとも今後、音楽ドキュメンタリー映画やライブ・ビューイングなど、音を楽しむ映像作品はますます増えていくことは間違いない。そうした時に、「SAION -SR EDITION/SAION」のような独自性を持つ映画館が増えていくことで、「どの映画を観るか」から一歩進んで、「どのシアターで観るか」という時代が訪れるだろう。

 なお、「109シネマズプレミアム新宿」では現在、好評を博した坂本氏関連作品を上映する開業記念イベント『Ryuichi Sakamoto Premium Collection』を再開催。年末の12月28日まで、『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー 劇場公開版 4K レストア』、『Ryuichi Sakamoto: CODA』などの名作を、再び「SAION -SR EDITION-」で楽しむことができる。

坂本氏関連作品を上映する開業記念イベント『Ryuichi Sakamoto Premium Collection』を開催中(〜23年12月28日)

坂本氏関連作品を上映する開業記念イベント『Ryuichi Sakamoto Premium Collection』を開催中(〜23年12月28日)

写真ページを見る

文・布施雄一郎

関連写真

  • 「109シネマズプレミアム新宿」建築・施工段階から極上の音響を実現する設計に
  • 「109シネマズプレミアム新宿」ラウンジ。BGMには坂本龍一氏作曲「109 Shinjuku - Lounge」が流れる
  • 座席は全席が座り心地満点のプレミアムシート
  • CLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジ「OVERTURE」
  • シアター7:側面の吸音材は材質や形状、取り付け角度が緻密に計算されている
  • シアター6には新宿エリア初導入となる“視界270度・3面ワイドビュー”の「ScreenX」を導入
  • 坂本氏関連作品を上映する開業記念イベント『Ryuichi Sakamoto Premium Collection』を開催中(〜23年12月28日)
  • 「109シネマズプレミアム新宿」ラウンジ

オリコントピックス

求人特集

求人検索

メニューを閉じる

 を検索