映画監督の阪本順治が、「第22回ニューヨーク・アジアン映画祭2023」(略:NYAFF)で、生涯功労賞にあたる「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント賞(NYAFF Star Asia Lifetime Achievement Award)」を受賞。米ニューヨークのリンカーン・センターにて現地時間16日に行われた授賞式などの模様をまとめたレポートと写真が到着した。
同映画祭は、北米でもっとも由緒あるアジア系映画祭で、第22回を迎える今年は7月14日から30日まで開催。「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント賞」は、「スターアジア生涯功績賞」と翻訳され、「長年優れた作品にて、何世代にも渡る映画製作者と観客に影響を与えてきた、特別な才能の人物に与えられる賞」となる。
過去には、ツイ・ハーク(2011年)、ジャッキー・チェン(13年)、レオン・カーフェイ(17年)、ユエン・ウーピン(19年)、アン・ホイ(21年)などそうそうたる映画監督たちが受賞しており、日本からは岩井俊二(16年)、原田眞人(18年)、清水崇監督(22年)に続く、4人目の受賞。
現地で上映される映画『せかいのおきく』を携え、授賞式に出席した阪本監督は、「今までたくさんの海外映画祭から招待されてきましたが、私個人の賞をいただくのは初めて」と喜びもひとしおの様子だった。
「日本の映画界に入って43年」「映画監督をはじめて35年」「最新作『せかいのおきく』がちょうど30本目の監督作品」と、自身のキャリアを振りかえり、「その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います」と謝辞を述べると、会場から大きな拍手が起こった。
また、『せかいのおきく』上映後に行われたQ&Aにも阪本監督が登場。本作の特徴の一つでもある、糞(ふん)尿を売り買いし、循環型経済が成り立っていた江戸時代を物語背景として描いた点について、ニューヨークの観客も興味津々の様子で、たくさんの質問の手が挙がった。
阪本監督は「出演者もこんな“うんち”だらけの映画は初めてです(笑)。作り物ですが廃棄された食材を利用して作っていたので、発酵した匂いがしてきてくさいのは仕方がない。皆さん笑っていましたね。笑うしかない。“うんち”の美術スタッフはいろいろ改良を重ねて、素材を変えたり試行錯誤しました。映画では身体につくシーンもあるので、目や口に入っても害のないものを作るために、廃棄された食材を利用したり。端的にいうと“食べられるうんち”にたどり着いたんです(笑)」と撮影裏話を明かした。さらには日本のハイテクなトイレ事情にも話題がのぼり、阪本監督は、おしり洗浄付きトイレが日本で発達したきっかけなど、知識を披露する場面もあった。
最後に阪本監督は、「“うんち”の話ばっかりでしたね(笑)。ありがとうございました」とあいさつし、会場が大きな拍手と笑いに包まれる中、降壇した。
映画『せかいのおきく』は、江戸時代末期を舞台に、声を失った武家の娘おきくと雨宿りで出会ったふたりの若者がたちが、厳しい現実にくじけそうになりながらも、心を通わせることをあきらめない姿を描いた、恋と青春の物語。
今回の受賞にあたり、阪本組常連俳優の佐藤浩市は「知識と経験だけで創作することを潔しとしない阪本順治監督は常にこれまでの自身の作品を超えることを渇望し、チャレンジしています。今回の受賞はそんな阪本監督のもの造りに対する栄誉かと。おめでとうございます!」と、祝福のコメントを寄せている。
■阪本順治監督・授与式でのコメント
まずはニューヨーク・アジアン映画祭に感謝したいと思います。ありがとうございます。僕は今年で、映画監督をはじめてから35年になります。今まで海外の映画祭からたくさんの招待をしていただきましたが、私個人の賞をいただくのは初めてです。
今から43年前、僕が22歳の時に日本の映画界に入りました。その時の僕のパートは大道具でした。腰にノコギリや金づちをぶら下げて、撮影現場を走り回っていた僕が、将来このような賞をもらえるとは夢にも思っていませんでした。
今から見ていただく『せかいのおきく』はちょうど30本目の作品になります。
その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います。そして、映画ファンの皆様にも、ありがとうございました。
同映画祭は、北米でもっとも由緒あるアジア系映画祭で、第22回を迎える今年は7月14日から30日まで開催。「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント賞」は、「スターアジア生涯功績賞」と翻訳され、「長年優れた作品にて、何世代にも渡る映画製作者と観客に影響を与えてきた、特別な才能の人物に与えられる賞」となる。
過去には、ツイ・ハーク(2011年)、ジャッキー・チェン(13年)、レオン・カーフェイ(17年)、ユエン・ウーピン(19年)、アン・ホイ(21年)などそうそうたる映画監督たちが受賞しており、日本からは岩井俊二(16年)、原田眞人(18年)、清水崇監督(22年)に続く、4人目の受賞。
現地で上映される映画『せかいのおきく』を携え、授賞式に出席した阪本監督は、「今までたくさんの海外映画祭から招待されてきましたが、私個人の賞をいただくのは初めて」と喜びもひとしおの様子だった。
「日本の映画界に入って43年」「映画監督をはじめて35年」「最新作『せかいのおきく』がちょうど30本目の監督作品」と、自身のキャリアを振りかえり、「その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います」と謝辞を述べると、会場から大きな拍手が起こった。
また、『せかいのおきく』上映後に行われたQ&Aにも阪本監督が登場。本作の特徴の一つでもある、糞(ふん)尿を売り買いし、循環型経済が成り立っていた江戸時代を物語背景として描いた点について、ニューヨークの観客も興味津々の様子で、たくさんの質問の手が挙がった。
阪本監督は「出演者もこんな“うんち”だらけの映画は初めてです(笑)。作り物ですが廃棄された食材を利用して作っていたので、発酵した匂いがしてきてくさいのは仕方がない。皆さん笑っていましたね。笑うしかない。“うんち”の美術スタッフはいろいろ改良を重ねて、素材を変えたり試行錯誤しました。映画では身体につくシーンもあるので、目や口に入っても害のないものを作るために、廃棄された食材を利用したり。端的にいうと“食べられるうんち”にたどり着いたんです(笑)」と撮影裏話を明かした。さらには日本のハイテクなトイレ事情にも話題がのぼり、阪本監督は、おしり洗浄付きトイレが日本で発達したきっかけなど、知識を披露する場面もあった。
最後に阪本監督は、「“うんち”の話ばっかりでしたね(笑)。ありがとうございました」とあいさつし、会場が大きな拍手と笑いに包まれる中、降壇した。
映画『せかいのおきく』は、江戸時代末期を舞台に、声を失った武家の娘おきくと雨宿りで出会ったふたりの若者がたちが、厳しい現実にくじけそうになりながらも、心を通わせることをあきらめない姿を描いた、恋と青春の物語。
今回の受賞にあたり、阪本組常連俳優の佐藤浩市は「知識と経験だけで創作することを潔しとしない阪本順治監督は常にこれまでの自身の作品を超えることを渇望し、チャレンジしています。今回の受賞はそんな阪本監督のもの造りに対する栄誉かと。おめでとうございます!」と、祝福のコメントを寄せている。
■阪本順治監督・授与式でのコメント
まずはニューヨーク・アジアン映画祭に感謝したいと思います。ありがとうございます。僕は今年で、映画監督をはじめてから35年になります。今まで海外の映画祭からたくさんの招待をしていただきましたが、私個人の賞をいただくのは初めてです。
今から43年前、僕が22歳の時に日本の映画界に入りました。その時の僕のパートは大道具でした。腰にノコギリや金づちをぶら下げて、撮影現場を走り回っていた僕が、将来このような賞をもらえるとは夢にも思っていませんでした。
今から見ていただく『せかいのおきく』はちょうど30本目の作品になります。
その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います。そして、映画ファンの皆様にも、ありがとうございました。
このニュースの流れをチェック
- 1. 黒木華主演、寛一郎・池松壮亮共演、阪本順治監督の時代劇『せかいのおきく』公開決定
- 2. 黒木華主演、時代劇『せかいのおきく』海外版ティザー予告が解禁
- 3. 黒木華、こうの史代描き下ろしイラストを絶賛「新たな世界観を感じられた」 映画『せかいのおきく』
- 4. 黒木華・寛一郎・池松壮亮、モノクロの中に“青春”が輝く『せかいのおきく』場面写真
- 5. 黒木華・寛一郎・池松壮亮、 “江戸の青春”を謳歌『せかいのおきく』場面写真
- 6. 黒木華、マジ顔で「なぜ“屁”をたれるの?」『せかいのおきく』特別映像
- 7. 黒木華ら『せかいのおきく』スタッフ・キャストが語る、100年後につなげたい思い
- 8. 阪本順治監督「ニューヨーク・アジアン映画祭」で生涯功労賞 日本では4人目
- 9. 阪本順治監督、海外の映画祭で初の個人賞受賞に喜び 常連俳優・佐藤浩市も祝福【コメントあり】
コメントする・見る
2023/07/19