アメリカ演劇界で最高の栄誉とされるトニー賞の授賞式(第76回)が現地時間11日、米ニューヨークで行われ、自分の性自認を男女のどちらにも位置づけない「ノンバイナリー」を公言している俳優として初めてノミネートされて注目を集めていた俳優2人が、ミュージカル部門の主演男優賞(J・ハリソン・ジー)と助演男優賞(アレックス・ニューウェル)を受賞した。日本では、12日(日本時間)午前に、WOWOWで授賞式の模様を生中継した。
授賞式は、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』の舞台となったニューヨーク市マンハッタン区ワシントンハイツのユナイテッド・パレスで初開催。さらに、今年は全米脚本家組合(WGA)によるストライキが行なわれていることを受け、ショーを支える脚本家への敬意を表する形で、授賞式は台本なしという異例の形式で進行した。
昨年に続き、アリアナ・デボーズが司会を務めたが、オープニングの映像では、台本を開いたアリアナが、その中身が白紙であることに呆然とするという演出で始まり、1930年代に建てられた絢爛豪華なユナイテッド・パレスを存分に使ったオープニング・パフォーマンスは音楽とダンスのみでせりふや歌詞は一切なし。それでもアリアナらが圧巻のパフォーマンスを見せ、会場はスタンディングオベーションで称えた。
ミュージカル部門では、常人の数倍の早さで老いていく16歳になる女子高生を描いた『キンバリー・アキンボ』がミュージカル作品賞、ミュージカル主演女優賞(ヴィクトリア・クラーク)、ミュージカル助演女優賞(ボニー・ミリガン)など最多5冠を獲得。
名作映画をミュージカル化し、最多12部門13ノミネートの『お熱いのがお好き』が、J・ハリソン・ジーの主演男優賞など4冠で続いた。助演男優賞のアレックス・ニューウェルは、ミュージカルコメディー『シャックト』で女性役を演じた。
鮮やかな青いドレスで登壇したJ・ハリソン・ジーはトロフィーを手に「“見られてはいけない”と言われてきたみなさん、これはあなたたちへの贈り物です」とマイノリティのコミュニティに向け呼びかけた。アレックス・ニューウェルも「私は、ノンバイナリーの、太ったマサチューセッツ出身の人間としてここにいます。『無理だ』と思うみなさんに目を見て伝えたいと思います。心を込めれば何でもできます!」と力強く呼びかけ、喝采を浴びた。
演劇部門ではトム・ストッパード作、ユダヤ人一族の四世代にわたる物語を描いた『レオポルトシュタット』が演劇作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞(ブランドン・ウラノヴィッツ)、衣装デザイン賞(ブリジット・ライフェンシュトゥール)の4冠に輝いた。なおストッパードの作品が作品賞に輝くのは5度目となり、85歳にて自らのもつ最多記録を更新し、壇上で喜びのコメントをした。
演劇主演女優賞はドラマ 『キリング・イヴ/Killing Eve』や映画『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーが、ひとり舞台『プライマ・フェイシィ』でブロードウェイデビューにして見事受賞。法律と社会が抱える矛盾に直面する若き弁護士を演じ、オスカー女優のジェシカ・チャステインを退けた。
功労賞は、『ニューヨーク・ニューヨーク』『キャバレー』『シカゴ』など数々の傑作で知られる作曲家ジョン・カンダー、『キャバレー』のMC役で舞台ではトニー賞、映画ではオスカーを受賞した俳優ジョエル・グレイが受賞。96歳と91歳のふたりが健在な姿を見せ、アリアナ・デボーズとジュリアン・ハフが『シカゴ』の「Hot Honey Rag」の華麗なパフォーマンスで祝福した。
台本がないことで今年はノミネート作品以外のパフォーマンスも多く、歌手ニール・ダイアモンドの伝記的ミュージカル『ビューティフル・ノイズ』から大ヒットナンバー「Sweet Caroline」が披露され会場が一丸となり大合唱する場面も。リン=マニュエル・ミランダがノリノリで歌う姿も印象的だった。そして、リア・ミシェルは『ファニー・ガール』から「Don't Rain on My Parade」を熱唱。名古屋市出身の岩井麻純、ハワイ出身のキャンディス・ハタケヤマもパフォーマンスを行った。
さまざまな面から歴史的な回となった今回のトニー賞の模様を中継したWOWOWでは、井上芳雄と宮澤エマがナビゲーターを務め、スタジオゲストとして市村正親、平方元基、三浦宏規、影山雄成(演劇ジャーナリスト)、柏木しょうこ(映像翻訳者)が出演。オープニングでは井上と宮澤がスタジオで「New York, New York」を生で熱唱し、三浦がダンスパフォーマンスを披露した。授賞式終了後のスタジオでは、平方がミュージカル『生きる』より、自身が演じる小説家の楽曲「人生の主人になれ」をスタジオで生歌唱した。
授賞式の模様は、17日(後9:00)に字幕版(※「第76回トニー賞授賞式 プレショー」を含む。WOWOWスタジオパートは編集版として一部を含む)をWOWOWライブで放送、WOWOWオンデマンドで配信も行う。なお、17日午後8時59分まで、WOWOWオンデマンドで同時通訳版を配信中。
■主な部門受賞結果
★演劇作品賞:『レオポルトシュタット』
★ミュージカル作品賞:『キンバリー・アキンボ』
★演劇リバイバル作品賞:『トップドッグ/アンダードッグ』
★ミュージカル・リバイバル作品賞:『パレード』
★演劇演出賞:パトリック・マーバー『レオポルトシュタット』
★ミュージカル演出賞:マイケル・アーデン『パレード』
★演劇主演男優賞:ショーン・ヘイズ 『グッドナイト、オスカー』
★演劇主演女優賞:ジョディ・カマー『プライマ・フェイシィ』
★演劇助演男優賞:ブランドン・ウラノヴィッツ『レオポルトシュタット』
★演劇助演女優賞:ミリアム・シルヴァーマン『ザ・サイン・イン・シドニー・ブルースティーンズ・ウィンドウ』
★ミュージカル主演男優賞:J・ハリソン・ジー『お熱いのがお好き』
★ミュージカル主演女優賞:ヴィクトリア・クラーク 『キンバリー・アキンボ』
★ミュージカル助演男優賞:アレックス・ニューウェル『シャックト』
★ミュージカル助演女優賞:ボニー・ミリガン『キンバリー・アキンボ』
★功労賞:ジョン・カンダー、ジョエル・グレイ
授賞式は、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』の舞台となったニューヨーク市マンハッタン区ワシントンハイツのユナイテッド・パレスで初開催。さらに、今年は全米脚本家組合(WGA)によるストライキが行なわれていることを受け、ショーを支える脚本家への敬意を表する形で、授賞式は台本なしという異例の形式で進行した。
昨年に続き、アリアナ・デボーズが司会を務めたが、オープニングの映像では、台本を開いたアリアナが、その中身が白紙であることに呆然とするという演出で始まり、1930年代に建てられた絢爛豪華なユナイテッド・パレスを存分に使ったオープニング・パフォーマンスは音楽とダンスのみでせりふや歌詞は一切なし。それでもアリアナらが圧巻のパフォーマンスを見せ、会場はスタンディングオベーションで称えた。
ミュージカル部門では、常人の数倍の早さで老いていく16歳になる女子高生を描いた『キンバリー・アキンボ』がミュージカル作品賞、ミュージカル主演女優賞(ヴィクトリア・クラーク)、ミュージカル助演女優賞(ボニー・ミリガン)など最多5冠を獲得。
名作映画をミュージカル化し、最多12部門13ノミネートの『お熱いのがお好き』が、J・ハリソン・ジーの主演男優賞など4冠で続いた。助演男優賞のアレックス・ニューウェルは、ミュージカルコメディー『シャックト』で女性役を演じた。
鮮やかな青いドレスで登壇したJ・ハリソン・ジーはトロフィーを手に「“見られてはいけない”と言われてきたみなさん、これはあなたたちへの贈り物です」とマイノリティのコミュニティに向け呼びかけた。アレックス・ニューウェルも「私は、ノンバイナリーの、太ったマサチューセッツ出身の人間としてここにいます。『無理だ』と思うみなさんに目を見て伝えたいと思います。心を込めれば何でもできます!」と力強く呼びかけ、喝采を浴びた。
演劇部門ではトム・ストッパード作、ユダヤ人一族の四世代にわたる物語を描いた『レオポルトシュタット』が演劇作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞(ブランドン・ウラノヴィッツ)、衣装デザイン賞(ブリジット・ライフェンシュトゥール)の4冠に輝いた。なおストッパードの作品が作品賞に輝くのは5度目となり、85歳にて自らのもつ最多記録を更新し、壇上で喜びのコメントをした。
演劇主演女優賞はドラマ 『キリング・イヴ/Killing Eve』や映画『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーが、ひとり舞台『プライマ・フェイシィ』でブロードウェイデビューにして見事受賞。法律と社会が抱える矛盾に直面する若き弁護士を演じ、オスカー女優のジェシカ・チャステインを退けた。
功労賞は、『ニューヨーク・ニューヨーク』『キャバレー』『シカゴ』など数々の傑作で知られる作曲家ジョン・カンダー、『キャバレー』のMC役で舞台ではトニー賞、映画ではオスカーを受賞した俳優ジョエル・グレイが受賞。96歳と91歳のふたりが健在な姿を見せ、アリアナ・デボーズとジュリアン・ハフが『シカゴ』の「Hot Honey Rag」の華麗なパフォーマンスで祝福した。
台本がないことで今年はノミネート作品以外のパフォーマンスも多く、歌手ニール・ダイアモンドの伝記的ミュージカル『ビューティフル・ノイズ』から大ヒットナンバー「Sweet Caroline」が披露され会場が一丸となり大合唱する場面も。リン=マニュエル・ミランダがノリノリで歌う姿も印象的だった。そして、リア・ミシェルは『ファニー・ガール』から「Don't Rain on My Parade」を熱唱。名古屋市出身の岩井麻純、ハワイ出身のキャンディス・ハタケヤマもパフォーマンスを行った。
さまざまな面から歴史的な回となった今回のトニー賞の模様を中継したWOWOWでは、井上芳雄と宮澤エマがナビゲーターを務め、スタジオゲストとして市村正親、平方元基、三浦宏規、影山雄成(演劇ジャーナリスト)、柏木しょうこ(映像翻訳者)が出演。オープニングでは井上と宮澤がスタジオで「New York, New York」を生で熱唱し、三浦がダンスパフォーマンスを披露した。授賞式終了後のスタジオでは、平方がミュージカル『生きる』より、自身が演じる小説家の楽曲「人生の主人になれ」をスタジオで生歌唱した。
授賞式の模様は、17日(後9:00)に字幕版(※「第76回トニー賞授賞式 プレショー」を含む。WOWOWスタジオパートは編集版として一部を含む)をWOWOWライブで放送、WOWOWオンデマンドで配信も行う。なお、17日午後8時59分まで、WOWOWオンデマンドで同時通訳版を配信中。
■主な部門受賞結果
★演劇作品賞:『レオポルトシュタット』
★ミュージカル作品賞:『キンバリー・アキンボ』
★演劇リバイバル作品賞:『トップドッグ/アンダードッグ』
★ミュージカル・リバイバル作品賞:『パレード』
★演劇演出賞:パトリック・マーバー『レオポルトシュタット』
★ミュージカル演出賞:マイケル・アーデン『パレード』
★演劇主演男優賞:ショーン・ヘイズ 『グッドナイト、オスカー』
★演劇主演女優賞:ジョディ・カマー『プライマ・フェイシィ』
★演劇助演男優賞:ブランドン・ウラノヴィッツ『レオポルトシュタット』
★演劇助演女優賞:ミリアム・シルヴァーマン『ザ・サイン・イン・シドニー・ブルースティーンズ・ウィンドウ』
★ミュージカル主演男優賞:J・ハリソン・ジー『お熱いのがお好き』
★ミュージカル主演女優賞:ヴィクトリア・クラーク 『キンバリー・アキンボ』
★ミュージカル助演男優賞:アレックス・ニューウェル『シャックト』
★ミュージカル助演女優賞:ボニー・ミリガン『キンバリー・アキンボ』
★功労賞:ジョン・カンダー、ジョエル・グレイ
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2023/06/13