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神山健治監督、「スター・ウォーズ」短編アニメから長編実写化に意欲「物語はできている」

 ディズニー公式動画配信サービス Disney+(ディズニープラス)で配信されている『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受けて制作された「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本、その日本が得意とするアニメーションのクリエイターたちとルーカスフィルムがタッグを組み、実現した「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクトだ。

プロダクションI.G『九人目のジェダイ』=『スター・ウォーズ:ビジョンズ』ディズニープラスで独占配信中(C)2021 TM & (C) Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

プロダクションI.G『九人目のジェダイ』=『スター・ウォーズ:ビジョンズ』ディズニープラスで独占配信中(C)2021 TM & (C) Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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 日本を代表する7つのアニメスタジオが参加し、独自の“ビジョン”で9つの新しい物語を作り上げた。今回このプロジェクトから、プロダクションI.Gが制作した『九人目のジェダイ』を手掛けた神山健治監督に話を聞いた。

――最初にこのプロジェクトが発表された時、いち「スター・ウォーズ」ファンとして、「えー!? 大丈夫なの?」という期待と不安と両方あったのですが、オファーを受けた時のことを教えてください。

【神山】僕も参加していなかったらそう思っていたと思います(笑)。今回のお話をいただいた時は、本当は踊り出したいくらいの喜びがあったと同時に、自分も含めて世界中の「スター・ウォーズ」ファンの目の厳しさ、「スター・ウォーズ」愛に応えることへに大きなプレッシャーを感じました。自分がどれくらい「スター・ウォーズ」を好きか、というのを試されるわけですから。プレッシャーはありましたけど、自分の創作意欲に正直に作ろう、誰かに怒られても自分が好きな、自分が観てみたい「スター・ウォーズ」を作ってみようという考えにわりとすんなりシフトできました。

――神山監督はリアルタイムで『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(米国で初公開されたのは1977年5月)をご覧になっていたそうですね。

【神山】日本で公開されたのは1978年だったのですが、公開前からすごく話題になっていて、公開されるとすぐに映画館に観に行きました。それがもう本当に素晴らしくて。一つの映画を観た体験というより、「スター・ウォーズ」の世界に入り込んでしまったという感じでした。それと同時に、なぜか、これを作る人になりたいな、という思いを抱いたんですよね。さらにその翌年、アニメの『機動戦士ガンダム』(79年)が始まって、それを観た時に、アニメで「スター・ウォーズ」が作れる、と思ったことも鮮明に覚えているんですよね。結果的にアニメーションで「スター・ウォーズ」を作ることができたので、13歳の時の夢がかないましたね。

――子どもの頃の夢がかなって、どんな気持ちになられましたか?

【神山】シンプルにうれしいのですが、「オリンピックでメダルとった!」「甲子園で優勝した!」「ヤッター!」みたいな感じでもないんですよね。子どもの頃の夢がかなったんだな、とじんわり感じるというか、まだ途中のような気もして、達成感とはちょっと違う感じですね、いまのところは。

――本作では「スター・ウォーズ」の象徴であるライトセーバーとジェダイ騎士の再生の物語を描いていますが、どのようにしてこのお話が生まれたのですか?

【神山】短編であるという企画主旨は理解しつつ、これまで紡がれてきた「スター・ウォーズ」の正史の一端でありたい、その歴史の中に自分も加わりたいという思いがありました。スカイウォーカー家の物語ではない、他にたくさんあったであろうストーリーの一片みたいなものを作れたら、というのが最初の発想でした。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』より未来の話として、「スター・ウォーズ」を象徴するライトセーバーとジェダイをテーマに描きたいと思いました。そう思ったら、2週間くらいでシナリオは書き上がりましたね。

■『九人目のジェダイ』あらすじ
 ジェダイ騎士団の復活を計画する辺境伯ジューロから古代の武器ライトセーバーを進呈すると呼びかけられ、7 人のジェダイが辺境惑星ヒ・イズランの空中神殿に集まった。同じ頃、セーバースミスのジーマが、ジューロの命を受けライトセーバーを完成させていた。だが、シスの復活を目論むジェダイハンターによりジーマは捕らえられてしまう。ライトセーバーを託されたジーマの娘・カーラは、追手から逃れて空中神殿に向かうのだが…。

■「スター・ウォーズ」はジュブナイルの名作

――約20分と短いのに、内容が濃くて、いつの間にか作品の世界に引き込まれ、続きが観たくなりました。

【神山】そう言っていただけると肩の荷が下りた気がします(笑)。今回の『9人目のジェダイ』に限ったことではないのですが、自分で作品を作る時には可能な限り、作品として描く部分の前後のエピソードやメインキャラクターのバックボーンをある程度作り込んでおくんですね。今回は、新三部作より未来の話で、その頃、銀河の勢力図はどうなっているだろうか。辺境惑星ヒ・イズランはどんな惑星なのか。銀河の大きなうねりとは全く関係ないような片田舎で生まれた女の子カーラはどう育ってきたか。この先、どういう冒険が待っているのか。

作品として描かれない部分まで作っておくことで、一人ひとりのキャラクターが豊かになるんですね。それが、ちょっとしたせりふにつながって、視聴者に「カーラが赤ちゃんの頃から辺境伯とは知り合いだった」ことが伝わり、だとしたらどういう関わりがあったのか? 素人というわりにライトセーバーが使えることと関係があるのか?と、深いエピソードがあるように感じていただけたのではないかな、と思います。

――今のお話を聞くとますます続編とか、長編の実写化とか、期待したくなりますね。

【神山】もしそれがかなうならぜひやってみたいと思うし、長編が作れるくらい物語はできていると思います。

――「スター・ウォーズ」を象徴するライトセーバーとジェダイをテーマにされたというお話でしたが、ジーマとカーラという“親子”が出てくるのも「スター・ウォーズ」らしいですよね。

【神山】最近の日本の父娘の関係は、以前より友達関係に近い部分があり、子どもが独立していくことに対して昔の日本のように保守的ではない。カーラとジーマの関係については、最近はこういう親子関係なのではないかなという僕なりに思う部分を入れています。

――森の中のチェイスシーンなど、映画を彷彿とさせるシーンも出てきますね。

【神山】映画シリーズの中で僕が好きなシーンや「スター・ウォーズ」らしいシーンを二次創作的に作った部分はあります。何より、アニメーターの仕事ぶりが素晴らしい。

――神山監督のように、記念すべき第1作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』をリアルタイムで観ている世代から、『スター・ウォーズ;ビジョンズ』で初めて「スター・ウォーズ」に触れる世代もいると思います。改めて、「スター・ウォーズ」のここが魅力的、と思うところは?

【神山】『新たなる希望』の後、旧三部作の『帝国の逆襲』(1980年)、『ジェダイの帰還』(83年)が公開され、それから15年以上経って『ファントム・メナス』(99年)、『クローンの攻撃』(2002年)、『シスの復讐』(05年)、さらに10年後に『フォースの覚醒』(15年)、『最後のジェダイ』(17年)、『スカイウォーカーの夜明け』(19年)とシリーズが続いて完結しましたけど、仮に『新たなる希望』しかなかったとしても、あの1本で終わっていたとしても「スター・ウォーズ」はジュブナイルの名作だと僕は思います。

 それくらい完成されたものだったと思う一方、いろいろな想像を掻き立ててくれるものでもある。だから、続編やスピンオフがたくさん作られているんだと思うんですね。僕が『九人目のジェダイ』で目指したのは、『新たなる希望』の名もなき青年が銀河に旅立っていく冒険譚でした。ルークは僕なんだ、私のことかもしれない、と感情移入してワクワクできるところが「スター・ウォーズ」の魅力だし、そういう作品を僕自身がずっと作りたいと思っていました。

■公式サイト
https://disneyplus.disney.co.jp/program/star-wars-visions.html

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