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『なつぞら』“愛されヒロイン”の陰で気になる存在の妹・夕見子

 NHK連続テレビ小説第100作目の『なつぞら』が好調を維持している。戦争で両親を亡くした後、きょうだい離れ離れになり、北海道の柴田家に引き取られて明るく健気に生きるなつは、まさに「王道朝ドラヒロイン」だ。しかし、「明るく元気なドジッ子」や「明るく健気でみんなに愛されるヒロイン」の場合、ついつい「愛されヒロイン」の陰になる存在のほうに目がいってしまうこともある。

■子役時代からのバトンタッチで当初与えた違和感

『なつぞら』の場合は、なつが引き取られる柴田家の長女で、なつと同い年の夕見子(福地桃子)がどうにも気になる。夕見子は幼少時から、家業の酪農を嫌い、牛乳を飲まず、やりたくないことはやりたくないとはっきり言う子だった。それでいて、意地悪なわけではなく、周囲の顔色を見て、遠慮してばかりで本音を見せないなつに、どう接して良いかわからず、戸惑ったり苛立ちを見せたりしていた。

 ところが、子役時代の2週間を終えて福地桃子にバトンタッチした途端に、違和感を覚える視聴者も多数いた。それは、酪農を一生懸命手伝うなつと、ともに酪農に打ち込む長男・照男、家事を積極的に手伝う末っ子・明美(平尾菜々花)に対して、夕見子だけが何の手伝いもしない子に育っていたからだ。1人だけ気ままに本を読み、家の手伝いはせず、挙句、母親にお茶を要求したシーンにはTwitterなどで批判が多数あがっていた。

 しかし、そんなとき、夕見子の置かれた立場や、抱えてきた思いを考えずにいられない。自分を育ててくれる柴田家の役に立とうと、率先して仕事を手伝うなつ。「誰かのため」ばかりに動くなつの登場によって、これまで普通に好き嫌いを言って伸び伸び育ってきた夕見子は、わが身を顧みざるを得なかっただろう。

 まして祖父・泰樹(草刈正雄)は、なつが家に来てからというもの、登校時の孫たちに手を振ったり、バターづくりの夢を語ったりと、これまで見せたことのない顔を見せるようになった。真っすぐで真面目な性格の兄と、気が回るしっかり者の末っ子はそのままブレずに育っていく一方で、夕見子は「真ん中っ子」的な空気読みぶりを発揮してしまう。

 一見ワガママで「自由で伸び伸び」「好きなことを言い、好きなことをしている」ように見えるが、実は周りをよく見ていて、いろいろ考え込んでしまうところがあるのだろう。だからこそ、なつや他のきょうだいに比べて、出遅れるところがあり、自分がやるべきことや居場所が見つからず、「家の仕事は手伝わない」「自分は本を読む」という、傍から見れば勝手でしかないスタンスに至った気がするのだ。

■「普通」なのに対比として陰にまわってしまう朝ドラお決まりパターン

 これはきょうだい関係に限らず、友人関係でも見られることだが、活発で明るく気がまわるタイプや、みんなに愛されるタイプと一緒にいると、自分自身は、つい対比として出遅れた感じになり、陰にまわってしまう。すると、他の場所ではもっと明るく輝ける人でも、そこでは「暗いほう」「気がきかないほう」「わがままで勝手なほう」になっていく。ときにはふてくされたり、劣等感が肥大化してしまったりするケースもある。

 明るく元気なヒロインが登場しがちな朝ドラでは、実はこれはよくあるパターン。『あさが来た』では、優しくおとなしく聡明で女性らしい姉・はつが、実はお転婆な妹・あさに対して、「おじいちゃんにかまってもらって」「許婚さんに恋文をもらって」「ええおふとんで寝ていて」焼きもちをやいていたと告白するシーンがあった。

 また、『ふたりっ子』では、美人で優等生の姉・麗子が、ヤンチャで問題児の妹・香子と周囲に内緒で入れ替わってみたところ、実は香子に比べて自分が嫌われていることを知り、怒りと嫉妬から、香子の昼食にチョークを入れてしまうな事件を引き起こしたこともある。

 一方、『ひらり』では、明るく活発なひらりと正反対のウジウジした姉・みのりが、女性視聴者の共感を得たこともあった。また、『ちりとてちん』の場合、血縁関係は全くないが、転校先で同級になった同姓同名の美人で優等生と比べられ続けることによって、ヘタレで後ろ向きな異色のヒロインが形成されていった。

■ヒロインとは異なる生き方に心を打たれる

 話を『なつぞら』に戻そう。優しく明るく元気で、おまけに美しく育ったなつは、家でも愛され、学校でも人気者になっている。しかし、家での自分の居場所が奪われる感覚がまったくないわけではないだろうに、夕見子はなつに対して嫉妬や憎しみの感情をぶつけるわけではなく、張り合おうとするわけでも、ふてくされたり、投げやりになったりするわけでもない。

 だからこそ、祖父のために演劇をやろうとするなつに対して、「あんたのそういうところ、ホントつまんない。やるんだったら、自分のためにやんなよ!」と背中を押し、他者への遠慮や配慮でがんじがらめになって、希薄になりがちななつの内的動機を促すのだ。

 それと同時に、ワガママで自分勝手に見える「自分のやりたいことを貫く」のも、なつに刺激を受けたからであった。5月7日放送分では、北大受験を志す夕見子が「ホントは北大なんて行かなくても良いんだけどね」と呟き、理由について「だって負けたくないし!」「そんなの無理だとか、女のクセに無理だとか、そういう世間の目にさ」と語った。

 そして、よくわからないというなつに対して言う。「私は、なつみたいにわかりやすく戦ってないから。なつはどこに行ったって戦ってるっしょ? 私にはなーんもないから、自分が生きる場所は自分が選べるような人間になりたいのさ」。

 家族もいて、暮らしもそれなりに豊か。恵まれて育った夕見子はなんでも持っているようでいて、それらはすべて与えられただけで自分が手に入れたものではないことをよく知っている。それを実感するのは、なつの存在があるからこそ。なつがいることで、自身が陰になることもあるはずなのに、誰よりもなつを見ていて、なつを深く理解し、「自分の道」を自分の手で切り開いていこうとする夕見子。ヒロインの生き方よりも、そんな夕見子に心打たれてしまう視聴者は、きっと少なからずいるのではないだろうか。
(文/田幸和歌子)

提供元:CONFIDENCE

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