『孤独のグルメ』シリーズ継続の秘訣は 「松重豊を飽きさせないこと」
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7年間、細かくアップデート 今シーズンは新兵器を投入
写真左から菊池武博プロデューサー、小松幸敏プロデューサー
ドラマの構成は前半が五郎と顧客との商談。後半が空腹を満たすべく近隣の店を探して食事。そして店を立ち去る場面でエンドロール、とシーズン1から一貫している。また、1話の撮影を2日間で完結させるスケジュールも、シーズン1から変わらない。
菊池氏松重さんにはかなりの量を食べていただくため、体力的に無理なく芝居ができるように1日がドラマパート、もう1日がグルメパートに集中できるスケジュールを組んでいます。また、通常、ドラマのモノローグは後日映像を見ながら収録するんですが、本ドラマではグルメパート直後にロケバスやお店を借りて収録。脚本家も現場に同席し、松重さんの感想を盛り込んだ、本当の『心の声』を書いてもらっています。もともと少ない予算で制作するために編み出した方法でしたが、食べた直後の新鮮な感覚が残っているうちに録ることで、よりリアルにできると松重さんもおっしゃっています
もちろん7年の間にはアップデートされた要素も多い。たとえばシーズン1では最小限だったスタッフも、人気と共に徐々に増員。またシーズン5からは4Kに対応。さらに、今シーズンではグルメカットに「新兵器」が投入されるという。
小松氏新兵器とは言っても、回転台に置いた料理を監督が手動で回すというアナログなもの(笑)。あらゆる角度から料理をお見せする、情報番組での定番の手法ですね。実験的に現場でやってみたことなので、使われるかどうか未定ですが、こうした試行錯誤はこれまでも結構やってきてます
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最重要はワクワクさせるお店選び 放送後もいい関係を築く
菊池氏1日に4軒食べて回ることもあります。僕はシーズン1から参加しているのですが、かなり体型が変わりました(笑)
ここぞという店には2度3度と通ったうえで交渉に入るが、対応に慣れていない個人経営店も多く苦戦することもあるという。
小松氏『うちは常連さんの店だから』と断られてしまうケースはありますね。やはり最近は放送後に行列になってしまうことも多いので、そこは包み隠さずお伝えした上でご協力いただいています。また僕らスタッフも撮影が終わっておしまいではなく、なるべく取り上げたお店に通うようにしています。『やっぱり孤独のグルメに出なければよかった』と思われたら申し訳ないし、悲しいですからね。幸い今のところ、お店からのクレームはありません
同ドラマが長く愛される最大の秘訣は、こうした誠実なものづくりの姿勢にあるのだろう。なお、店選びで最も重視しているのは「松重さんにワクワクしてもらったり、驚いてもらったりすること」だという。
菊池氏シリーズを続けるためには、視聴者の方と同じくらい松重さんを飽きさせてはいけない。ここがいつも僕らスタッフの勝負どころです。実は今シリーズでは、松重さんがずいぶん前から食べたいとおっしゃっていたある料理が初登場します。僕らも松重さんをそのお店にお連れするのは本当にドキドキしました。松重さんに納得いただけたかどうか、ぜひオンエアで確かめてみていただきたいですね
文/児玉澄子
プロフィール
小松幸敏プロデューサー
2012年、テレビ東京入社後、ドラマ制作室に配属。以降ドラマ部のAPとしてさまざまな作品に参加し、16年、ドラマ24『勇者ヨシヒコと導かれし七人』からプロデューサーに。これまでに『琥珀』(17年)、『カクホの女』(18年)、『リーガル・ハート』(19年)などを手がけた。『孤独のグルメ』にはシーズン5、シーズン7に参加。
菊池武博プロデューサー
2008年、共同テレビジョン入社後、第3制作部配属。これまでに、『めしばな刑事タチバナ』(13年)、『文豪の食彩』(14年)、『食の軍師』(15年)、『昼のセント酒』(16年)、
『野武士のグルメ』(17年)、『日本ボロ宿紀行』(19年)などを手がけた。『孤独のグルメ』にはシーズン1から参加。シーズン4からプロデューサーを務めている。