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もはや人気も主役級、バイプレイヤー特需のワケ

  • 『バイプレイヤーズ』に出演中の遠藤憲一 (C)ORICON NewS inc.

    『バイプレイヤーズ』に出演中の遠藤憲一 (C)ORICON NewS inc.

 現在のドラマ界を代表する6人の名脇役=バイプレイヤー(遠藤憲一、大杉漣、 田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研)が本人役で登場し、シェアハウスで同居するコメディドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら』(テレビ東京系)が、放送直後から「おっさん萌えする」「推しメンは誰だ?」等々、ネットなどで話題になっている。この6人以外にも小日向文世や滝藤賢一など、ここ最近はバイプレイヤーがクローズアップされる機会も多い。かつては主役の脇を支えるという、どちらかと言えば“日陰”的な存在だったバイプレイヤーたちの“日向”化は、そもそもどうして起きているのだろうか?

国民的大スターよりも安定した渋い演技力に支持集まる

 バイプレイヤー特需の単純な理由としては、“高齢化社会”が進行していることがあげられるだろう。団塊世代はすでに70代に差し掛かり、団塊ジュニアも40代半ば。テレビ視聴者層の中心が中高年の今、若いアイドル俳優たちが繰り広げる学園ドラマや、 “ワチャワチャ”した恋愛ドラマよりも、自分たちに近い世代のおじさんたちが渋い演技力を見せる作品のほうが、安心して観ていられるということかもしれない。

 また、視聴者の嗜好が多様化した今、老若男女誰からも愛されるような国民的大スターが生まれにくくなっており、等身大でもキラリと光るバイプレイヤーたちへの需要が集中していると言える。そして遠藤憲一、大杉漣、寺島進、松重豊などもろもろの“コワモテ”バイプレイヤーがみせる、Vシネマなどで演じてきた“悪役イメージ”を覆すようなコミカルな演技も人気の理由だ。例えば遠藤憲一はドラマ『民王』(テレビ朝日系)で、息子の菅田将暉と体が入れ替わるというコミカルな演技もこなしたり、バラエティ番組では恐妻家に怯える一面やとびきりの笑顔を見せたりする。そうした“ギャップ力”もバイプレイヤーの魅力のひとつであり、若い女性からも“カワイイ”と評されるゆえんなのだろう。

日本を代表する監督がこぞって起用する“遊び心”

 映画としても大ヒットした『踊る大捜査線 THE MOVIE』のスピンオフ作品、『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎次』では、『踊る〜』の主人公・織田裕二を支えるバイプレイヤー、ユースケ・サンタマリアや柳葉敏郎が主役となり、その後の“流れ”に寄与していると思われる。

 バイプレイヤーを起用するという制作側による一種の“遊び心”は、井筒和幸、北野武、原田眞人といった日本を代表する映画監督の作品からも伺える。井筒監督は『TO THE FUTURE』で光石研を主役に抜擢し、北野監督も『HANA‐BI』などで当時無名に近かった大杉漣、寺島進を起用することで、いきなりふたりの知名度は上がった。最近の『アウトレイジ』シリーズでも、松重豊、小日向文世、塩見三省といった“悪人顔”をそのままヤクザ役にしており、原田監督にしても『クライマーズ・ハイ』など数作品で、遠藤憲一を重要な役どころに起用しているのだ。

新規顧客もリピーターに 名バイプレイヤーは名バイヤーでもある

 先見の明のある映画監督やプロデューサーに起用されることで、バイプレイヤーたちの“持ち味”が存分に披露されることとなり、多くの観客や視聴者に強い印象を与え、支持を得ることにつながる。そうなれば、そうした作品のシリーズ化の欠かせない存在にもなるし、「こういう役もこなせるんだ」と他の作品においてもますます評価を高めることもできる。名バイプレイヤーは言わば“日本を代表する監督をリピーターとして抱える名バイヤー”といえるのかもしれない。

 バイプレイヤーたちが主役につきはじめた今、“バイプレイヤー”という言葉に込められた意味も変りつつあるのかもしれないし、彼らに続く後進俳優たちにとっても、よい発奮材料になるのではないだろうか。

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