『ライオン・キング』北米で記録的スタート 映画界を席巻するディズニーの強さと課題
ディズニー映画が老若男女に愛される理由
これらの作品と善戦を繰り広げている『スパイダー・マン:ファー・フロム・ホーム』(10億3980万ドル)はソニー・ピクチャーズ配給であるものの、製作にはディズニー傘下のマーベル・スタジオが入っている。ディズニーがフォックスを買収完了したいま、『アバター』ブランドもディズニーのものだ。今年後半のラインナップには『マレフィセント2』『アナと雪の女王2』『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』と話題作が並び、11月には独自の配信サービス「Disney+(ディズニー・プラス)」のローンチというビッグイベントがひかえている。
米『バラエティ』紙によれば、今年7月末までの北米における映画チケット販売数のうち、3.5割をディズニー映画が占めており、その比率は今後も増加する見込みだという。北米の人々は、なぜこれほどまでにディズニー映画を選ぶのか?同紙による一般観客や映画アナリストへのインタビューでは、「陰鬱なニュースや政治的敵意からの休息を求める人々が、安心して楽しめる空想の世界だから」「例えば4人家族なら、映画鑑賞とはチケット代とポップコーン&ドリンク代、駐車場代を含めると100ドル近くかかる娯楽。ならば、いい時間が過ごせる保証付きのディズニー・ブランドを選ぶ」「4世代が一緒に楽しめるから」といった声が紹介された。また、ある20代前半の映画ファンは、「『トイ・ストーリー』シリーズの結末を見届けるために、『トイ・ストーリー4』を観ることが“文化的義務”だと感じた」とも語っている。
ブランドの強さは永遠ではない? リメイク苦戦も
ディズニーが擁するブランドの強さは紛れもなく、これからも長年続いていくものだろう。ただし、1本1本の作品を見れば、人気の陰りも不作もある。『スター・ウォーズ』シリーズなら、ジョージ・ルーカスのDNAが薄くなるごとに距離を置き始めるファンもいるかもしれない。すべてのジャンルに浮き沈みがあるように、スーパーヒーロー映画のジャンルにも停滞期はあるだろう。クラシック名作のリメイクについても、『プーと大人になった僕』や『ダンボ』のように苦戦する例もある。
何が起きるかわからないハリウッドで、たとえディズニーほどのブランドでも“永遠無敵”を説くことはできないというのは、アナリストたちの慎重な意見だ。ただ、少なくとも今年の米映画界においては、ボックスオフィス、戦略、話題を含む、さまざまなレベルにおいて、ディズニーの存在感は無敵といえるのではないだろうか。
(文/町田雪)