ディズニーがめざす「Disney DELUXE」による映像ビジネス活性化
まずはコアファンに届けたい 市場拡大とともにライト層へ
利用料は月額700円(税抜)。定額動画配信サービス(SVOD)では初登場となる『アナと雪の女王』や『トイ・ストーリー』『スター・ウォーズ』シリーズ、マーベルの人気映画など豊富なラインアップが揃うほか、会員限定の特典も充実している。利用にはディズニーアカウントのほか、NTTドコモの会員サービスであるdアカウントの取得が必要だが、キャリアに関係なく利用が可能で、視聴デバイスもスマホやPC、テレビなどマルチに対応している。
そんな同サービスの今年3月26日のローンチから3ヶ月。現状の会員数やコンテンツ再生数は非公表だが、ウォルト・ディズニー・ジャパンのメディア部門代表であるトニー・エリソン氏は「顧客満足度という点でとくに手応えを感じている」と語る。
「日本市場は世界各国と比較して独特です。パッケージビジネスが健全に機能しており、レンタルなどで手軽かつ安価に観たいという方や、限定BOXなどをコレクションとして手元に置いておきたいと言ってくださるファンなど、ディズニーのストーリーとキャラクターをさまざまな形で楽しんでいただいています。そうした多様な楽しみ方の選択肢の1つとして、より利便性の高いSVODをご用意しました。「Disney DELUXE」は、ディズニーのコアファンの方々から始まり、『いつでもどこでも、好きなディズニーのコンテンツに触れられる』『劇場公開映画の予習復習ができる』など、好評をいただいており、その裾野はどんどん広がっています。今後、SVODサービスそのものが日本で市民権を得るにつれて、さらにライト層へも広がり、「Disney DELUXE」がSVODサービスの利用するきっかけになっていくことを期待しています」
日本の消費者に向けて誕生した日本独自サービス
「日本にはスマホが登場するずっと以前から続くモバイル文化があります。それこそNTTドコモさんとディズニーとの関係も、2000年7月にiモードでディズニー公式サイトをオープンしたときから始まっているのですが、当時は世界のどこの国を見渡しても手のひらで映像を観るという発想はありませんでした。また、絵文字やスタンプでコミュニケーションをしたり、壁紙でスクリーンを飾ったりと、日本のユーザーにとってモバイルデバイスは、自己表現のツールであり、アイデンティティの一部にもなっています。そうした独特なモバイル文化のある日本のファンのみなさんに喜んでいただき、より深い関係を築くためには、映像プラスαのエンタテインメントの提供が大切だと考えました。それが「Disney DELUXE」です」
ディズニーのバリューをSVODで提供したい
かたやNetflixやAmazonプライムといった、すでに巨大な市場をつかんでいるプラットフォーマーも独自コンテンツの制作に力を入れている。さらに、Appleもオリジナル映像作品を中心とする「Apple TV+」を19年秋に開始することを発表済みだ。
「アメリカでは、しばらく覇権争いの激戦が続くでしょう。ただ、いつの時代も質の高いコンテンツが選ばれるという原則は変わらない。ディズニーには、すばらしい才能を持った製作者たちが揃っていて、彼らが世界最高クラスのストーリーとキャラクターを創り出しています。そしてこれまでと変わらず、それらの作品を、その時代にあった技術を取り入れながら、ファンにお届けしていくことに尽きます」
ただし、世界と比べてSVODの利用率が未だ低い日本においては「今はシェアを奪い合うよりも、各社が普及に尽力する時期ではないか」とエリソン氏は考える。
「日本のディズニーファンのなかにも、SVOD未体験の方はまだまだ多くいらっしゃるでしょう。「Disney DELUXE」で初めてSVODを利用した方も多いと思います。ディズニーのコンテンツをきっかけに、SVODの魅力を知っていただくことで、日本の映像ビジネス全体の活性化に貢献したいというのがディズニーの考えです。もちろんビジネスなので他社サービスとの差異化も重要です。しかしそれだけでなく、日本でSVODをさらに普及するためには何が必要なのかを分析し、それを補完する付加価値やサービスの開発に各社が努めている。今はそんな時期なのではないでしょうか。弊社もその1社として、『ワールドクラスのストーリーとキャラクターを1人でも多くのお客様にお届けする』というディズニーにいるわれわれ皆が一番大切にしている考え方のもと、お客様を笑顔にし、思いもよらなかった発見を「Disney DELUXE」を通して提供したいと思っています」
(文/児玉澄子)