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脚本家・野木亜紀子、18年オリジナルドラマ3作の登場キャラから探る人気の理由

  • 『アンナチュラル』で「東京ドラマアウォード2018」で主演女優賞を受賞した石原さとみ (C)ORICON NewS inc.

    『アンナチュラル』で「東京ドラマアウォード2018」で主演女優賞を受賞した石原さとみ (C)ORICON NewS inc.

 1月期の連ドラ『アンナチュラル』(TBS系)、10月は2話完結の『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』(NHK)、そして10月期の連ドラ『獣になれない私たち』(日テレ系)と、2018年に3作のドラマ脚本を執筆した脚本家・野木亜紀子氏。『アンナチュラル』は、「第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」の作品賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞したほか、『フェイク・ニュース』もギャラクシー賞月間賞を受賞するなど、各方面で評価されている。そんな野木亜紀子作品の特徴を今年の3本から考えてみる。

問題提起もあった、18年3作品それぞれのヒロインの特徴

 まず、どの作品も女優の新しい顔を見つけ出したことがある。なかでも『アンナチュラル』の石原さとみのキャラクターは、明らかにそれまでとは一線を画していた。

 これまでの石原さとみというと、女子力が高く、仕事、恋愛、友情……なにもかもに優れている女性という役が年々多くなっていた。しかし、本作ではテンションは一定、仕事の上で「女だから感情的になる」と性別に結び付けてバカにされたときには、毅然と反論した。今までのニッコリ笑ってやりすごすようなことを一切しなかったのが新鮮だった。

 一方、北川景子は今までの役にもキリっとした部分はあったが、『フェイクニュース』の場合は、女性らしさやビジュアルの美しさを封印した一糸乱れぬ黒髪にパンツスーツ姿で、ともすればまっすぐすぎる情熱で取材対象を追うネットニュースの記者を演じた。

 そして、新垣結衣はこれまでにも野木亜紀子氏の作品に多数出演しているので、新しい顔と言うとまた違うかもしれないが、例えば『逃げるは恥だが役に立つ』のときには、ドラマの内容やキャラクターのファンもいる一方、どこか「ガッキーの可愛さ」が過剰に求められていて、それが演じること以上にフィーチャーされる状況もあったと感じる。

 それを『獣なれ』では逆手にとり、元カレの京谷に、自分に反論をする晶を前に「今の晶可愛くない」と言わせることで、新垣結衣の、そして女性の価値は可愛いくて従順なことだけではない、と問題提起をしていた。

オリジナル野木亜紀子ドラマにある、テーマ性が繋がるフェミニズム視点

 では、主演以外の人々はどうだったか。脇役の一人ひとりまで、どんな背景があり、何を考えて行動しているのかがわかるように描いていたため、主要人物以外のキャラクターの人気も高まった。

『アンナチュラル』で、「クソ」が口グセで常にUDIラボで一人斜に構えている中堂役の井浦新、『フェイクニュース』で青虫混入をネットに書き込んで騒動を起こす光石研演じる猿渡、『獣なれ』で笑顔が張りついた晶に「キモイ」と言い放った松田龍平演じる恒星、同じく晶に「今日の晶、可愛くない」と言い放った田中圭演じる京谷など、キャラクターの嫌な部分も早いうちに(京谷だけは違ったが)大胆に見せるが、ドラマが進み、その人となりを知るうちに、それぞれのキャラクターを悪い人ではないと思わせるどころか、魅力的にすら見せていた。

 それに加え、今年の野木作品はすべてオリジナルのため、テーマ性は少しずつ繋がっているように思える。常にあるのは、フェミニズムの視点だ。『アンナチュラル』では、裁判のシーンで戦っていたのは、犯人と検事のミソジニー(女性蔑視)であったし、『フェイクニュース』では、元官僚のヒロインに対する過去のセクハラに関する記述もあった。『獣なれ』でも、派遣社員の状況や、正社員でも感情労働や気遣いが求められる女性の働き方に対する疑問も描かれていた。

 また、『フェイクニュース』で野木氏に取材して印象に残ったのが、他者への無理解が分断を生むことの無意味さや、一度間違えた人が後々まで執拗に責められることへの疑問を訴えていたことである。このことも、その後に放送となった『獣なれ』でも貫かれていたのではないかと思う。

提供元: コンフィデンス

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